tanakan/理学療法士×作家/新作『くらげの空で浮かぶ』無料公開中!

理学療法士。作家。つむぎ書房より『看取りのセラピスト』を出版。理学療法士としては、回復期から亜急性期を経て、ICUを中心に働き内部障害を中心に患者へと関わる。ご連絡はこちらからも→Xアカウント(旧Twitter)@tanakan56954581 他にも多くの小説ストックあります。

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理学療法士。作家。つむぎ書房より『看取りのセラピスト』を出版。理学療法士としては、回復期から亜急性期を経て、ICUを中心に働き内部障害を中心に患者へと関わる。ご連絡はこちらからも→Xアカウント(旧Twitter)@tanakan56954581 他にも多くの小説ストックあります。

マガジン

  • 『くらげの空で浮かぶ』 《連載中》

    【あらすじ】 「クラゲはさ。いったい何を考えながら、水槽の中を浮かんでいるのかな」 閉塞した水族館で高校時代のわずかな時間を共に過ごした相花 海月(あいはな みつき)を今でも思い出す。時が流れて理学療法士となって訪れた半年後には失われるケアハウスで、僕たちは再び出会った。行き場を失い漂い続ける高齢者と、高齢者に寄り添いながらでしか生きられない僕と海月の日々が始まる。 答えをまだ知らないままに。漂い続けた。 現職の理学療法士が記す、臨床とは違う終わりへ向かう物語。 僕たちは漂う。行く場所もまだわからずに。

  • 『星を詠む人』 《連載中》

    【あらすじ】 星詠みという言葉がある。それは占星術とも読む事は出来て、簡単にいうと天体に存在する星々の動きから、人や社会の在り方を経験的に結びつける・・・ことだと私は思う。 これは私が色んな人と出逢いを紡ぎながら前に進む物語。 それはまるで星の繋がりのように。           私は星を詠む。星を詠んで人を想うのだ。 読み手:深文 https://www.323-mifumi.website 脚本・演出;tanakan https://note.com/tanakannaika/n/n180b9baa3a29

  • 『坂道と転び方』 《完結》

    【あらすじ】 「君たちの言う正常で正しい動作は私にとっては呪いの言葉でしかないんだ! 正常から逸脱した私はもう普通じゃない。私はもう普通に生きることはできない! それに・・・歩かないでいるうちにこんなに足は固まってしまった。私はもう・・・ダメなんだ」  小桜こざくら 岬みさきは人生における転倒で彼女は、暗い部屋の中でずっとひとりで生きていた。  正しさとは?正常とは?そして生きることの美しさとは?  現職の理学療法士が記す、僕と彼女が転倒から立ち上がるための本格リハビリテーション小説。   ただ方法はまだ知らない。僕たちは傷跡を隠したまま寄り添うだけであった。

最近の記事

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『くらげの空で浮かぶ』-2- 向かう場所を失うターミナル (2/6章)/小説

←-1- アクアリウムで佇む海月 (1/6章) 「驚いたでしょう?」  廊下を歩きながら海月は笑みをこぼす。本当だよと僕は案内されるままに居室が並んだ壁を眺める。日の光で古ぼけた真珠色をしていた。    観客席によく似たデイルームの隣には開き戸があり、先には廊下と居室が並んでいる。僕はやっとケアハウスらしいと見慣れた光景にホッとした。  しかしそれもつかの間、隣には記憶の奥底にいたはずの海月が歩いている。とても浮き足立って、落ち着かない。  僕たちの再会を冴子は手を叩

    • 『くらげの空で浮かぶ』-1- アクアリウムで佇む海月 (1/6章)/小説

      「クラゲはさ。いったい何を考えながら、水槽の中を浮かんでいるのかな」  相花 海月は暗い照明の中で、天井まで伸びる円柱状の水槽を見上げて言った。水槽にはミズクラゲが照明に照らされながら、薄紫色へと色味を変える。僕の隣で小さなベンチに腰かけながら、彼女は両足を伸ばしたまま足先を組む。紺色のブレザーから見える細く長い指はベンチに置かれて、彼女の華奢で小さな体を支えていた。  わずかに栗色を帯びた髪は短くふわりと浮かび、綺麗に首元で整えられている。  横顔から見える小さくも整

      • 『星を詠む人 ~真夜中と蠍の日~ 10/24-11/22』

        うーむ・・・ こんな時間に起きちゃうなんて。 夜は朝に向けて更に深さを増していて、 辺りにはすっかりと冷えた空気が漂っている 昔から寒さが苦手な私だから、 それはもう鎧のように上着を着込む。 窓から差し込む月の光が静かに陰を創り、 まるで真夜中の砂漠を旅する蠍さんみたいに、 ノロノロと私はキッチンへと向かう。 ふふ・・・なんだか本当に旅をしているみたい。 たまにはこんな夜更かしをしてみようかな。 コーヒーポットをコンロに掛けて、 お湯がゆっくりと沸く音に耳を傾け

        • 『夏空理論と心のアリカ』発売開始!

          コミケで頒布しました作品を電子書籍で発売開始! 未来と過去、そして隠された秘密と心の在り処。 僕と心を探すアンドロイドとの島での夏が始まった。 青春を彩るジュブナイル小説。 あなたは夏を思い出し、心の在り処をきっと見つける。 https://amzn.asia/d/bJchUoB Tanakanの作品は他にもこちらから

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        『くらげの空で浮かぶ』-2- 向かう場所を失うターミナル (2/6章)/小説

        マガジン

        • 『くらげの空で浮かぶ』 《連載中》
          2本
        • 『星を詠む人』 《連載中》
          5本
        • 『坂道と転び方』 《完結》
          7本

        記事

          『星を詠む人 ~朝露と天秤の日~ (天秤座) 9/23-10/23』

          夏の暑さは何処へやら。 朝の空気は、どこか秋の匂いをその身に纏う。 視線の端には少し色味を失った葉っぱが揺れている。 その先端に集まった朝露が、ぽつりと地面に落ちて淡く弾けた。 何事も無理に釣り合いを取ろうとすると、いつかそれは破綻してしまう。 朝露が地面に落ちるように、 それはある日、唐突に訪れるのだ。 なぜならそれは、一見正しく秤の釣り合った天秤みたいに、 その中心はいつだって無理をしているから。 天秤がじっと耐えながら、その秤を揺らさないようにしても、

          『星を詠む人 ~朝露と天秤の日~ (天秤座) 9/23-10/23』

          先日の創作大賞2024の中間発表にてあえなく落選とはなってしまいましたが、本当に多くの方に目を通していただき感無量です。公開はしばらく続けようとは思いますので、この場を借りて応援頂き本当にありがとうございました!

          先日の創作大賞2024の中間発表にてあえなく落選とはなってしまいましたが、本当に多くの方に目を通していただき感無量です。公開はしばらく続けようとは思いますので、この場を借りて応援頂き本当にありがとうございました!

          『星を詠む人 ~乙女な夏祭りの日~ (乙女座)8/23-9/22』

          夏の夜は時に賑やかになる。 ベランダから見える街並みの向こうは、ぼんやりとオレンジ色の光が溢れる。 街行く人は色とりどりな浴衣姿、子供達は楽しそうに親の手を引いている。 私も浴衣姿でりんご飴なんかを買ってみたいな。 ふふ。私にも乙女心らしきものが残っていたなんて、 少し驚きだ。 夢見る乙女なんて言葉はあるけれど、 乙女はただ漠然と夢を見ている訳では無い。 そのどこまでも純粋な心で、 どこまでも繊細に完璧に描かれた夢を抱くのだ。 そして細やかで聡明な乙女は、

          『星を詠む人 ~乙女な夏祭りの日~ (乙女座)8/23-9/22』

          【Re:Habilis ~失われた私とリハビリテーション~ / -1-『私のアナムネーゼ』

          『Re & Habilis』 -1-「私のアナムネーゼ」  28歳を迎えてしばらくが経ち、私の右手足は動きを失い言葉も失われました。  脳梗塞を発症しもともと無口だった私は夫へ想いを伝える術を失ったのです。  本格的なリハビリテーションを行う病院で、窓辺のベッドがあてがわれました。  横たわる私の隣で夫が私の代わりに私のことを伝えています。  正面に座るのは可愛らしい顔立ちの療法士です。  彼女は書類とバインダーを胸に抱いていました。  アナムネーゼと彼女は言

          【Re:Habilis ~失われた私とリハビリテーション~ / -1-『私のアナムネーゼ』

          『星を詠む人 〜大人なライオンの日〜 (獅子座) 7/23-8/22』

          雨の名残を残したままに、空は高くて日の光は私に降り注ぐ。 休みの日にはこうやって、空を眺めるのも良いなぁ。 私は空を仰いで、大きく胸を張る。 それはそれは立派なライオンみたいに。 「がおー!!・・・」 でも私は叫んだりはしない。 大人だから。 もし・・・人の目を気にしないままで生きていけたら。 そんな事をたまには思う。 まるでライオン君みたいに、 誰にも負けない強い気持ちで、 理想の自分の姿のままに胸を張る。 そんな姿にみんな頼ってしまう。 だってそ

          『星を詠む人 〜大人なライオンの日〜 (獅子座) 7/23-8/22』

          『星を詠む人 ~梅雨の蟹の日~ (蟹座)6/22-7/22)』

          こんな季節はなんだか憂鬱になる。 通勤中なんかは特にそう思うのだ。 シトシト雨降り、じとじとジメジメ・・・・ こうも簡単に人は環境で心が揺れ動くから不思議だ。 きっと今日が、空の果てまで見えるほどの青空だったのなら、 きっと私はそうは思うまい。 まったく梅雨ってやつは、なんて野郎だ。 だからと言って私はそんな事を口には出さない。 もし平気で口に出せるのなら、随分と生きるのが楽になるのは分かっているのだけど・・・ 赤く分厚い蟹の甲羅のようなそれは、感情までも包み

          『星を詠む人 ~梅雨の蟹の日~ (蟹座)6/22-7/22)』

          【『坂道と転び方』ティザーPV 第二報】

          —note創作大賞応募作品。表題左下のハートマークをぜひチェック!現在無料公開中!- 大好評をいただいておりますこの作品! 障がいとリハビリテーションを現職の理学療法士が記す、今まであったようでなかった作品。是非ともその世界を共に広げていきましょう!応援をよろしくお願いします。 本編はこちらから→

          【『坂道と転び方』ティザーPV】

          —note創作大賞応募作品。表題左下のハートマークをぜひチェック!現在無料公開中!- 「君たちの言う正常で正しい動作は私にとっては呪いの言葉でしかないんだ!」 僕と彼女は、人生における転倒から立ち上がれず暗く正常からは逸脱した場所で再び出会った。 本編はこちらから→

          『坂道と転び方』 《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」 (0/4章) /小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」  朝焼けが終わったというのに遮光カーテンで締め切られた、私の部屋は暗いままだ。  カーテンの外には急勾配の坂道があり、中腹に私の家があるものだから油断すると朝日が部屋に差し込んでしまう。車椅子で下るには勾配が急すぎて難しく、今の私が歩いて下るなんてもってのほかだ。  家の前にあるただの坂道は、私にとっては忌々しい、暗がりへと閉じ込める呪いの坂道である。  部屋の明かりはパソコンのディスプレイだけで、映し出されるフィ

          『坂道と転び方』 《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」 (0/4章) /小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -4- 私を呪った坂道と私を救った転び方 (4/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -4-「私を呪った坂道と私を救った転び方」  不思議と眠れない夜はいつだって唐突に訪れる。あんな夢を見たからだと僕は自室のベッドから天井を眺めた。時計を見ても深夜を超えたばかりで、朝まで程遠い。  岬のリハビリを終えて自宅へ戻り、他愛もない両親との会話を終えて眠りに就く。いつもと変わらない夜だった。  僕と岬はなぜか海辺にいた。暗い砂浜で打ち寄せるさざ波が、白い泡を浮かべては消えるのを眺めている。  赤く重たい月が夜空に浮かび、ぬらりとした黒い海はどこまでも広がってい

          『坂道と転び方』 -4- 私を呪った坂道と私を救った転び方 (4/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -3- 些細で深刻な生涯を縛る傷跡 (3/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -3-「些細で深刻な生涯を縛る傷跡」  四月に入るとなぜか気持ちが浮き足立つものだ。年度末の終わりは働いていても、学校にいても環境が大きく変化を見せる時期でもある。浮き足立つのも仕方がない。  働いていない僕も同じで、階段を降りると朝だというのに揚げ物の匂いがキッチンから流れてくる。 「おはよー。もうすぐで今日のお弁当出来るから。岬ちゃんのリハビリは順調?」  母がエプロン姿の前で菜箸を右手に持ったまま言った。最初は夕飯の残りだった岬への差し入れは日増しに増え、今では

          『坂道と転び方』 -3- 些細で深刻な生涯を縛る傷跡 (3/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -2- 正しくも正常ですらない生きる美しさ (2/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -2-「正しくも正常ですらない生きる美しさ」  僕が岬の家に通う日々が始まってしばらく経った。母に事情を説明すると、どこか安心した表情で目尻を和らげた。 「よかったね」  母は僕に一言だけ言うと、軽い足取りでキッチンへと消えていった。  礼子が受傷した腰椎の圧迫骨折の多くは尻餅をついて脊椎を構成する円形の椎骨、骨が潰れてしまう。  潰れ方の程度によっては保存療法で治療は進む。胸から腹部へと伸びる硬いコルセットを装着して、痛みに合わせて車椅子へと起きる練習から始まる。

          『坂道と転び方』 -2- 正しくも正常ですらない生きる美しさ (2/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》