台湾ひとり研究室:映像編「李幼喬監督《導演你有病》に見る台湾のユーモアセンスの背景にあるもの」
2024年9月6日から台湾で公開予定の李幼喬監督《導演你有病》の試写会に参加してきました。会場になったのは、台北101に近い松仁威秀MUVIE CINEMAS。日頃あんまり行かないエリアなので遠回りしてしまい、ギリギリに入ると大きな会場は8割近く埋まっていて関心の高さが伺えた。
「うまくいけば次は本格的に映画を撮らせる」という出資者の下、製作費10万元(50万円)という超低予算で始まった映像撮影は、夜間にライブ配信しながら廃墟で行われることになった。ところが撮影が終盤を迎えた頃、監督が消えていた。なぜ監督はいなくなったのか?——
タイトルは直訳すると「監督は病持ち」とか「病持ち監督」なのだが、途中で実は語呂だと知らされる。日本語にするなら、
……という感じ。伝わるかしら。ちょっとツラい語呂ですが💦
得体の知れない不可思議かつユニークな登場人物が次々と登場し、前半はストーリーをつかむまでに結構時間がかかった。が、何度も笑い、ちょっぴりほろりときてしまう。そのあたりのコメディ展開の作品を、なんだか久しぶりに観たように思う。台湾の、こういうコミカルタッチの作品、くだらないけどそこがいい。
台湾の映画製作の裏側も垣間見せる本作は、2年かけて制作されたという。試写会の舞台挨拶では、監督と出演者、そして配給まで加わって行われた上映後のトークで、出演者から「こういう話だったんだ、とやっとわかりました」「ようやく監督の撮りたかったものがわかりました」という声が相次いだ。出演者が作品の世界観を知らずに演じ、試写上映でやっと全容が把握できた、ということらしい。
オヤジギャグ?みたいな、軽快なやりとりには、私も、隣に座っていた人も笑っていた。会場全体で「ドッ!」みたいなのはないけれど、ずっとクスクス笑う感じ。
台湾ではよく「臺灣最好的是人情味」(台湾のいちばんの善さは人情味がある点だ)なんて言い方をする。ここでいう「人情味」というのは日本語でいうところの優しさというだけではなくて、実はユーモアセンスも含まれる、というのが個人的な見立てだ。先日紹介した近藤弥生子著『EQリーダーシップ』とも関連する。
人生の喜怒哀楽は誰しもが毎日のように味わうものだ。日本では怒とか怒といったネガティブ面に焦点があたりやすいのに対し、台湾ではもちろんそれもあるけど、喜楽を見ようとする人が多い気がするのはなぜなんだろう。そういえば、この四字熟語も「喜→怒→哀→楽」という順で、決して「怒喜楽哀」とか「怒喜哀楽」ではない。つまりは、喜ぶ一方で怒りや悲しみもあるけれど、それらを通り越して楽しもう、という精神の表れではないか、と思うのはわたしだけだろうか。
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