ディップの新卒PdMが、社内でUXリサーチを学んでいる過程を共有します
はじめまして。2022年4月からディップ株式会社商品開発本部dip Robotics PdM課に新卒入社した田中です。
「ディップ」と聞いてピンと来ない方もいらっしゃると思います。 ディップは、アルバイト求人メディアの「バイトル」を運営したりしている会社です。
企画職に興味があったので、新卒から職種別採用で企画職かつPdMとして採用してくれる貴重な会社に入社することになりました。
前置きが長くなりました。僕が誰とかはどうでもいいです。
このnoteでは、新卒視点でディップの製品開発の裏側、UXリサーチについてお届けしたいんです。
■ 新卒視点で見た、業務内容・学び・会社の方向性
世の中には魅力的な会社がたくさんあります。
そこでサービス企画をしている人、さらには新卒で入社して勉強している人がいるはずですが、あまり踏み込んだ話が共有されることは稀です。
そこでまずは自分から、僕が見ているものをそのまま共有してみようと思いこの記事を書きました。
■ メインテーマは「ユーザーインタビュー」
UXリサーチと書いていますが、今回学んだのは主にユーザーインタビューです。
サービスやプロダクトをつくろうとすると、ユーザーに「欲しいものってこれで合ってる?」と聞きたくなることがありますね。
そうやってユーザーが体験している流れを知って製品開発に活用することをUXリサーチと呼びますが、その手段はいくつもあります。
今回は、ディップで僕が学ばせて頂いたUXリサーチ手段としてのユーザーインタビューを中心につらつら書くつもりです。
▶︎ 事前学習に「ユーザーインタビューをはじめよう」を読んだよ
先輩が実施するインタビューを見る前に、
『ユーザーインタビューをはじめよう ―UXリサーチのための、「聞くこと」入門』 – スティーブ・ポーチガル (著), 安藤貴子 (翻訳)
を読んでおきました。
この本は、UXリサーチャーとして働く様子を見せてもらうような感覚で著者の業務内容とそのとき考えていることを紹介してくれます。
内容を簡単に次に残しておきますね。
▶︎ 「ユーザーインタビューをはじめよう」のあらすじ
序盤でユーザーインタビューそのものについて解説し、中盤で著者のインタビュー経験を解説したケーススタディがあり、終盤で具体的なインタビューの実施方法をマニュアル的に教えてくれます。
ユーザーインタビューの特徴を、筆者は以下のように説明しています。
筆者はリサーチ専門会社を経営するリサーチャーで、リサーチ以降のフェーズとなる企画・開発・マーケティングについては触れられていません。
内容には筆者の経験が強く反映されていて、なぜ筆者がそのように思っているかについては読み取れないので、そういうものなんだな~と思うしかない部分がたくさんあります。
そこで、会社での実際のインタビュー現場を見て理解を深められるのは、絶好の勉強機会となりました。
■ dip Robotics PdM課は「人間中心設計」
なぜインタビューでユーザーを理解しようとするのかと言うと、「ユーザー視点で考え、ユーザーが使いやすいものを作る」という人間中心設計の企画法に繋がる考え方だからだと思われます。
ユーザーインタビューは定性的なUXリサーチ手法です。1人のユーザーを深く理解することで、アンケートなど定量的な手法では見えてこない高解像度の最適解が見えることがあるんです。
僕の所属するPdM課では、お昼休みのデスクで聞き耳を立てているとしばしば「人間中心設計」という言葉が聞こえてきます。
人間中心設計では、サービスを使うユーザーについて、どんな人か・なぜ使うのか・どんな状況で使うのか を理解することで、よりユーザーが直感的に使いやすいプロダクトを作れると考えます。
ユーザーが使いたくなるようなプロダクトをつくるためには、ユーザーの行動や心理を深く理解してそれに寄り添ったものを作る必要があり、そのためのユーザーインタビューなんですね。
▶︎ dip Robotics PdM課での新製品開発マインド
dip Roboticsは、社内の業務改善プロダクトを手がけている組織です。営業支援ツールの「レコリン」はプレスリリースも行っているのでここで紹介します。
今回インタビューを行っているのも社内業務改善プロダクトなので、社内満足度の高いツールにするため、以下のような順序で企画開発されています。
ユーザーを理解する(インタビューなど)
ユーザーにとって使いやすいものを作る
ユーザーに使ってもらえる製品になる
改善効果が発生してくる
「どんなプロダクトであっても、ユーザーに使ってもらえないと意味がない」ことは当然と言えるでしょう。
言い換えると、ユーザーに浸透するプロダクトには意味付け可能である、というように僕は理解しています。
■ インタビュー実施方法
先行リリース対象となったディップ湘南オフィスに営業所訪問させて頂きました。
インタビューのセッティングは以下の通りです。
湘南オフィスの会議室を借りた
1対1で行った(デプスインタビュー)
1人30分のアポを頂いた
合計3人に行った
インタビューの対象者には、先行利用中に現状の不足点を挙げてくれたり元々のペルソナに近かったりなど、先輩が総合的に判断してアポイントを取って下さりました。
インタビューの実施時期は、フィジビリ開始から約1週間後でした。
▶︎ ユーザーインタビューの目的
先述のとおり、今回は社内向け業務効率化ツールについてインタビューです。
社内2つの課を対象に先行リリースをフィジビリ(実用可能性の検証)という形で実施しました。
インタビューを行う目的はおおまかに以下のようになっていたと思います。
全社展開が可能かを判断する
今後充実させていく機能の優先順位付け
全社展開後の運用方法の確立
▶︎ 半構造化インタビュー
今回のインタビューは「半構造化インタビュー」と呼ばれる進行方法でした。
半構造化インタビューは、構造化インタビュー(定型的なインタビュー)ではなく、ユーザーの回答に沿って質問を変え、より深く理解する形式です。
上記を引用したUXTIMESさんの記事は、半構造化インタビューについてわかりやすくまとまっていて非常に参考になりました。興味があれば読んでみてください!
▶︎ 質問リストを作る
インタビューをする前に質問リストを用意します。
半構造化インタビューを行った今回では、以下のように質問リストを作っていました。
仮説(インタビューで検証したい仮説)
確認したいポイント(エピソードの中からどんな部分を引き出したいか)
質問リスト(エピソードを引き出すための問いかけ)
実際に質問するのは 3. 質問リスト の中からですが、 2.確認したいポイント が聞き出せていなければ追加で質問を投げかけフォローアップします。
いざ質問リストを作ってみたら、僕はなかなか上手く作れませんでした。
半構造化インタビューの概念を知らないと、質問リスト=確認したいポイント になってしまいがちだと思います。
仮説があって、その仮説の裏付けには確認したいポイントを知ることが必要で、知りたいことを引き出すために用意しておく質問リストがある、というイメージです。
▶︎ インタビュー中の流れ
ここから先は、実際のユーザーインタビューを見学しながらメモを取っていました。
質問リストを参考に聞きたいことを相手の発言に応じて投げかけていきます。
聞きたいことを引き出せなかったら方向性を修正したり、相手の回答を「そうなんですね、〇〇なんですね」とオウム返しすることで続きを引き出したり、ここには様々なテクニックがあるようです。
他にも、プロダクトのヘビーユーザーとライトユーザーで投げかける質問を使い分けるということも行われていました。
「Aの機能はあまり使っていない」と言ったユーザーには、Aの機能について話を聞くより、使わない理由を探る質問をするといった具合です。
当たり前のように行われていましたが、アドリブでこれはなかなか難しいことをしている…!と思いました。職人技です。
■ インタビューで得たエピソードから考えを再構築する
ユーザーインタビューを行ったら、その内容から新しく企画を練ったり、既存の企画をパワーアップさせたり、実現可能性の検証に活用する段階に入ります。
定性的な手法で手間もかかるためユーザー全員の意見を聞くことはできませんが、プロダクトのペルソナに合致する人物がどのように感じるかを知ることで、現状の良い点・悪い点を把握し整理しましょう。
インタビューを通して引き出したエピソードから、ユーザーの本音を鑑みる機会を得られます。
ここまでが社内のユーザーインタビューを見学して知った流れになります。
■ ユーザーインタビューを上手に行うには
インタビューを見学する前後の学習で得た、ユーザーインタビューを効果的に行うための方法を共有します。
業務のために教えてもらった内容と被る部分も多くありました。
▶︎ クローズドクエスチョンをなるべく使わないようにする
UXリサーチの一環としてインタビューをする場合、YES/NOで答えられるクローズドクエスチョンを使うことには弊害があるようです。
例えば、「この小説は面白かったですか?」と聞いたとします。相手はただYESと答えるかもしれませんが、その背景には色々な考えが巡っているはずですね。
本音では面白いと思っておらず、忖度して「YES」と答えてしまったら、その後忖度したことを伝えて訂正するのは大きな労力が必要になってしまいます。
相手は最後までYESのスタンスを続け、インタビュー中に本音を引き出すのは非常に難しくなってしまうかもしれません。
▶︎ オープンクエスチョンで判断材料を増やす
小説を面白いと思っているか知りたいなら、「この小説の率直な感想を教えてください」と聞いた方がいいということになります。
感想全てを建前に変えるのはとても大変ですし、相手は良いところ悪いところなど踏まえながら本音を話しやすくなるでしょう。
もしかすると本音では話してくれないかもしれませんが、話す様子からどこに建前を使っているのか判断する材料を手に入れられるかもしれません。
▶︎ インタビューは相手を誘導しないことが大切
インタビューに関しての先輩たちの話を聞いていて、質問で答えを誘導しないことが大切であることを感じました。
「これって〇〇なんですか?」と自分の考えを率直に言ってしまうと、相手は普段感じていることではなく質問内容の正誤から回答を考え始めてしまいます。
誘導しないように事前に用意したオープンクエスチョンを投げかけることで、ユーザーから普段通りの行動と思考状態(メンタルモデル)を引き出すことができます。
メンタルモデルを踏まえたUXデザインの重要性としては、検索フィールドとURLバーの事例が参考になりました。
質問はこんなふうにする方法があるよ、とアドバイスを貰いました。感謝。
〇〇について考えを教えてください
いつも〇〇する手順を実演してほしいです!
私をあなたの部下だと思って〇〇の業務を教えてくれませんか?
ユーザーが普段考えていることを理解することがより良い企画に繋がるため、できれば細部を損なわず理解したい、ということなんですね。
■ユーザーインタビューで雰囲気を良くする大切さ
最後に、インタビューで雰囲気作りが大切になる理由についてまとめます。
インタビューする相手が初対面であることは多く、なかなか打ち解けるのは難しいと感じました。
ただ、ユーザーインタビューをする以上、たくさんのエピソードを1から10まで引き出したいのです。
ユーザーと直接関われる貴重な機会ですし、少しでも話しやすい雰囲気を作ることがインタビューの収穫の大きさに直結することになります。
短時間で誰とでもこれができるリサーチャーの人、本当にすごい…。
■ あとがき
はじめて「インタビューをするよ」と聞いたとき、僕はユーザーインタビューの意図も価値も全く理解できていませんでした。
これまでの僕が持っていたインタビューのイメージは、有名人にマイクを向けて、ファンが喜びそうだったり世間の注目を浴びるキャッチーな独白だったりを記事にするようなものでした。
あくまでコンテンツであって、明確なゴールや生産性を意識したインタビューとはどんな形式なのか全く想像がつかない状態です。
そんな僕が、今回のインタビューでUXリサーチから企画に至る流れをまだまだ荒削りながらイメージできるようになりました。少しは成長できているのではないでしょうか。
今後も身につけるべきことは沢山ありますが、一歩ずつ前進していけたらと思います。
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▶︎ 上司からの反応
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