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記録_10_1_sat_2022_2001_2123

2001 /// 私の部屋にも近寄っている秋の空気を、運動会の号砲に似た発砲音がこだまします。 / それは缶ビールを開ける音なのですが、そんな号砲と共にこの記録のような徒競走が始まります。 / こうして夜に独りで酒を呑める事実を噛みしめます。 / 本当に、よく味わおうと思います。 / ぶち抜けて晴れた空がそよりそより暮れなずむ様子を横目に酒のつまみを作りながら酒を呑み、たばこを吸い、そしてこうして書いているという事実を、よく味わうのです。 / 昨日はちょっと良くなかった。 / 次の日の朝に響く呑み方はやはり良くないものです。 / 次の日の朝を清々しく迎えられるからこそ良い晩酌なのですから。 / 呑みたくなるからお酒を呑んでいるに過ぎないものの、いつの間にかお酒に呑まれることもあるのだから人のこころというものは豆腐のようにもろいものなのでした。 / 木綿とは言いません。多分たいてい絹豆腐。 / 部屋をうろつきながらいっぷくする私の足元に酩酊の昨日の私が座椅子を枕にふて寝しています。 / 無様以外の言葉が見当たらないむなしさを感じながら見下します。 / まるで水戻しされたのに忘れられて水分を失ったわかめのような今朝の私は。 / この記録という生活の中心の巡りに気づいたのだからもう酔い過ぎずとも良いのだと自分自身に言われるといくらか安心するものです。 / どうか忘れないで。 / 休みの晩酌。酔って忘れてはもったいないことの方が私には多いのです。 / そこを忘れずに記録出来るか否か、という二分法は私の中で基準になりつつある。 / この記録の本質が少しずつ見えてくるというものです。 / 筆舌し尽くせないそれとの記録であると同時に。 / 私においてはこうして記録を片時も忘れることがない状態とはすなわち今をいつも慈しめているということなのだろうと感じます。 / こうして酒に酔いながらも記録を続ける様子は、かつての私であれば禁欲的に見えていたけれどそれは間違いでした。 / これは禁欲ではない。 / こうしてちょっと炙ったさつま揚げを食べつつワンカップの日本酒を呑みながらも記録を続けているのは、それは、この記録が私自身であるからで。 / 私自身の背骨を言語化したものであるからで。 /// 2123

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