『モモ』を読んで、“無駄”をもっと大切にしたいと思った
ドイツの作家ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んだ。
1973年に初版が発行された児童向けの小説で、年末年始に再読。
円形劇場の廃墟に住みついた、もじゃもじゃ頭で粗末な身なりをした不思議な少女モモ。黙って話を聞くだけで、人の心を溶かし悩みを解消させる能力を持った彼女のまわりには、いつもたくさんの大人や子どもたちが集まっていた。しかし「時間」を人間に倹約させることにより、世界中の余分な「時間」を独占しようとする「灰色の男たち」の出現により、町じゅうの人々はとりとめのないお喋りや、ゆとりのある生活を次第に失っていく。
引用:モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語
時間どろぼうである「灰色の男たち」と、少女・モモの戦いを描いた作品で、児童向けと言いつつも、大人でも楽しめる物語である。
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大人になるとつい「時短しなきゃ」「効率化しなきゃ」と焦ってしまう。たわいものない会話や、のんびりと景色を眺めることが無駄だと感じて省いてしまう。
でも『モモ』を読んで、「灰色の男たち」に時間が盗まれてしまった後の世界は、怖くて思わずゾッとしてしまった。
相手とゆっくり話す時間がない、いつもバタバタしていて心に落ち着きがない。体がしんどい、楽しいことがない…。
時間を大切しようと、時短にならないものや無駄を省いた世界が、とてもギスギスしていて息苦しそうだったのだ。
時短や効率化が美徳に思えるけれど、人間の暮らしを豊かにするには、何よりもたわいもない会話や、のんびりと景色を眺めるなど、無駄に思えるようなことが一番大切なのだと思った。
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「ちょっと寄り道して帰ろう」
「誰かと話してみよう」
「手作りしてみよう」
「景色を見に行こう」
仕事に直結しない、自分の成果につながらないと思って、つい避けてしまうことが多い現代。
だけど、時間の過ごし方があなたの人生を作っていくので、余裕のある豊かな人間になるには、いい意味での“無駄”をもっと大切にしたい。
ちょっとした余白が人生をより彩ってくれるのだ。
フリーランスで働いているとついバタバタとしてしまう。これからもっと仕事を頑張るぞ…!と思っていた私だったけれど、このタイミングで『モモ』を読めて、仕事を頑張るのもいいけれど、私という人間をもっと大きくするために余白を忘れないようにしたいなと思った。
1970年代に発行されたとは思えない、現代人にヒリヒリと刺さる一冊。
最近忙しいな…と感じる人に、ぜひ読んでほしい。