ライブ会場が罠___殺人鬼の父親は愛する娘に正体を隠し通し脱出できるのか?!【トラップ】
映画情報
【原題】
TRAP
【製作年】
2024年
【製作国】
アメリカ
【監督】
M・ナイト・シャマラン
【脚本】
M・ナイト・シャマラン
【上映時間】
1時間45分
【ジャンル】
サスペンス、ミステリー、スリラー
起承転結ストーリー
※転結にてネタバレ含
起
溺愛する娘ライリーと共に世界的歌姫レディ・レイブンのライブに訪れたクーパー。
最高の席でライブを楽しんでいるライリーをよそに、クーパーはライブ会場のある異変に気づく。
それは異常な数の防犯カメラ、警官、特殊部隊、そしてFBIの姿だった。
承
ライブの合間に2人はライブTシャツを買うために物販へ向かう。
物販スタッフとひょんなことから仲良くなったクーパーは「警備がなぜ厳重なんだ?」と問う。
「殺人鬼ブッチャーがライブ会場に来ているらしい。この会場全てが『罠』だ」
それはクーパーにとって思いもよらない答えだった。
なぜならそのブッチャーがクーパーだったからだ。
転
クーパーはスタッフキーや警察無線を盗んだり、売店で騒ぎを起こしたりとあの手この手で会場から脱出しようとするが、ことごとく失敗。
そんな時、客席にいる少女1人をステージに上げる&楽屋に招待するコーナーがあることを知ったクーパー。
クーパーは審査員に嘘をつき見事にライリーが選ばれた。
ライブ終了後、クーパーは警察無線から男性客が全員尋問されることを聞きつける。
同時にレディ・レイブンの関係者なら尋問されずに会場から出られることも知る。
レディ・レイブンの楽屋に訪れ、クーパーは2人きりで話そうと持ちかける。
そして、クーパーは携帯片手に不敵な笑みを浮かべながらレディ・レイブンにこう話した。
「俺がブッチャーだ。ボタンを押したら画面に映っている男は死ぬ。一緒に出口まで行って男を生かすか、このまま俺を警察に突き出して男が死ぬか、どちらがいい?」
結
脅されたレディ・レイブンは2人と共にライブ会場を後にし、リムジンに乗り込む。
クーパーは車がある所まで送って欲しいと言うが、レディ・レイブンはライリーの家に行くことを提案する。
父親が殺人鬼など全く知らないライリーは勿論了承し、クーパーは断りきれず自宅に送ってもらうこととなった。
自宅にはクーパーの妻と息子がおり、レディ・レイブンを歓迎し食事を振る舞う。
食後、家にあったピアノを指差しレディ・レイブンは「お礼に1曲歌うわ」と言い、隣にライリーを座らせる。
その時ライリーの携帯を懐に隠し、歌唱後自撮りをしないかとライリーに提案する。
ライリーは了承するが、携帯はレディ・レイブンが隠したため無い。
そこでレディ・レイブンはクーパーの携帯を強引に奪い取った。
クーパーは「何をしてる」と激昂するが、レディ・レイブンはそのままトイレに逃げ込む。
携帯から拉致された男と会話をし、監禁場所を特定、付き人に通報を依頼。男は無事に救出された。
その間クーパーは家族を2階に閉じ込め、2人は対峙する。
クーパーはレディ・レイブンを車に押し込め、殺人道具が詰まった鞄を持ち、拉致しようとする。
が、車の前には閉じ込めたはずの家族がいた。
家族の恐怖と困惑、妻の「何をするつもり?」という言葉。
クーパーが動揺している間にレディ・レイブンは車から脱出。
警察が到着し、自宅に突入。
しかしクーパーは警官を襲って衣服を奪い、レディ・レイブンのリムジンに乗り込む。
そのまま拉致されると思われたが、レディ・レイブンはギリギリの所で車から脱出。
クーパーは群衆に紛れこみ再び逃走する。
その後妻が自宅でお湯を沸かしている時、包丁を手にしたクーパーがいた。
妻は殺される恐怖に苛まれながらある提案をする。
「ライリーのお祝いで食べようとしてたケーキを食べない?」
クーパーは殺すまでの時間稼ぎだと愚痴をこぼしながら渋々了解する。
妻は泣きながら先に一口食べ、クーパーは何食わぬ顔で食べ進めていた。
クーパーがここに来た理由は答え合わせをするためだった。
クーパーは怪しんでいた。
なぜライブに行くことがバレていたのか?
なぜ背格好も筒抜けだったのか?
答えは一つだった。
全て、妻がやったことなのだ。
妻はクーパーが夜遅くまで帰ってこないことから浮気を疑い、尾行した。
その時にクーパーの裏の顔を知ってしまい、ライブのチケットをわざと現場に残し、通報をした。
クーパーはこれらの妻の行動に気づき、今までに無い、生まれて初めて本当の「怒り」の感情を抱く。
自分を裏切った妻の行動が何よりも許せない、捕まったら子供の成長を見届けられない、家族の幸せを壊したとクーパーは吐露する。
そして、自分の中に怪物がいることも。
妻は震えながらクーパーの話を聞く。
そして全て自分がやったことだと認める。
クーパーはそれを聞き、妻を殺そうとする。
その瞬間、意識が朦朧とし始める。
「鞄を見たのか?」
クーパーの殺人道具が入っている鞄には睡眠薬があった。
妻はそれを見つけ、ケーキの中に紛れ込ませてクーパーを眠らせようと画策した。
どんどん意識が薄れていく中、クーパーの目には老婆が映る。
最後の力を振り絞り包丁を再び振りかざした瞬間、外に待機していた警察が一斉にテーザー銃を発砲。
そして殺人鬼ブッチャーは逮捕された。
自宅から移送される時、庭に倒れていた子供用の自転車を見つけたクーパー。
自転車をきちんと立て直し踵を返すとライリーがいた。
「お父さん!」
ライリーとクーパーは深いハグを交わし、移送車に乗り込む。
移送中、クーパーは自転車の部品である細長い棒の金属を取り出し、いとも簡単に手錠を外した。
自由の身になったクーパーは高らかに笑った。
感想
シックス・センスで名を馳せ、どんでん返し映画の鬼才と謳われる、M・ナイト・シャマランの最新作。
結論から言うと、最高です。
今は丁度ヴェノムやジョーカーの最新作が公開していてそっちに人気が偏ってしまうが、私は何よりもこの映画を推したい。
①展開の嵐
昨今の映画では珍しいスピード感で展開が移り変わる。
例えば、物販でスタッフキーを盗み、裏に忍び込んだと思えば警察無線を盗み、階段で見つけた体調の悪そうな女性をわざと落としたり、売店のポテトの熱い油にガラス瓶を放り投げて爆発させたり、混乱の中でスタッフに紛れ込んで警察と話したり…
上記の例はクーパーが起こした展開だが、後半のレディ・レイブンの視点に変わった時も展開を巻き起こしている。
2転、3転、いや10転する物語の展開は映像的にも飽きないし、次はどうなる?とどんどん興味を掻き立てられる。
しかもこれを1時間45分の中で完結させている。
どんでん返しの鬼才はやはり伊達ではなかった。
②クーパーの苦難
この映画では殺人鬼が主人公である。
個人的に殺人鬼が主軸の映画には2パターンあると思っている。
1つは作中に殺人鬼になった経緯を描写するパターン、もう1つは伏線を張りつつ視聴者に想像させるパターンである。
この映画は後者で、殺人鬼になったクーパーの心情についてセリフはあるのもののかなり抽象的であった。
クーパーは何故殺人鬼になったのか?
怪物とは一体何なのか?
そして幻覚の老婆はクーパーにとってどんな存在なのか?
平気で子供のいる他人は殺すのに、家族のことを深く愛しているのは何故か?
これらについての回答は作中では語られない。
監督がこの映画で伝えたい部分はこれらの点にあるのだろう。
③俳優の魅力
殺人鬼クーパー役をジュジュ・ハートネット、レディ・レイブン役をサレカ・シャマランが演じている。
洋画なので演技の上手い下手は特別分からないが、クーパーの心情の移り変わりの演技に引き込まれた。
クーパーは平坦な感情ではなく、起伏がある普通の人と変わらない感情を持っていることが演技から読み取れたし、そこから外れている何かがクーパーを狂わせている、普通にさせないのだなと想像できた。
そこでもがいて、普通の人になろうと努力しているクーパーもいて、完全にクーパーが悪だとは言い切れないと感じた。
そして、サレカ・シャマラン。
彼女が監督M・ナイト・シャマランの娘さんだった。
正直、演技もプロポーションも全てにおいてかなり良かった。
作中で歌われる楽曲のほとんどを彼女が手かげており、良い曲だなーと聞いていてスタッフロールを見た時に度肝を抜いた記憶がある。
そして、本作の重要な役目を担うレディ・レイブンを見事に演じ切った。
印象的なのはクーパーの携帯を奪ってトイレに逃げ隠れ、配信をしてみんなに監禁場所を特定する場面だ。
切羽詰まっていても自分に芯を持ち、行動を起こすレディ・レイブンの性格を自然と落とし込んで演じていた。
彼女の他の作品があれば是非見てみたくなった。
【トラップ】は劇場公開中の洋画の中でも今年1かもしれない。
それくらい最高な映画だ。