「遅いよ鷹斗!」 神社の階段を登った先から俺を見下ろして言い放つ葵は、弱っていることを感じさせないほど屈託のない笑顔を浮かべている。 「はあっ……はあっ……」 「ちょっと! 体力なさすぎない?」 「お前が……元気すぎんだよ……」 三年程前から前例の無い病にかかった葵は、ずっと病院のベッドで寝て生活していた。しかし、二週間前に残り余命一ヶ月だと医者に言われてからというもの、周りの制止を振り切っては俺の家のインターホンを鳴らし遊びに誘ってくる。 「残り少ない人生、
『戦闘の記憶、そして自宅訪問』 「……」 時間がしばらく経った今も、頭にモヤがかかっている。 ――鋭いブレーキ音とは逆に、鈍い音を立てながら勢いよく吹き飛ぶひよっち。 「キャーーーッ!!」 そう叫ぶ女性と、かなり焦った様子で彼女を車内に連れ戻し走り出す男を俺は呆然と見つめることしかできなかった。 「あ゙……ああ……痛え……くそお……」 理由はわからないが、体が勝手に走り出した。 「おい! 大丈夫か!?」 「大丈夫に見
『おい、このゲーム知ってるか?』「――なあ司《つかさ》、このゲーム知ってるか?」 「なんだこれ……『AIバトラー』? 俺は知らないな」 「やっぱ知らねえよな?」 「そもそも俺はゲームをあんましないって知ってるだろ? んで、何で急にそんな話になったんだ?」 「昨日、PINEで急に『AIバトラー公式』ってアカウントに友だち追加されてさ。このゲームのURLが送られてきたんだよ」 「はあ……それで?」 好奇心が幼稚園児より強いこいつ、山田榊《やまださかき》なら絶対にこう言