里中李生「男はお金が9割」読書感想文
受刑者になって、たまにはマンガを読みたいな・・・と思うときもある。
が、手元にはない。
置けるスペースがない。
物品を所持できるスペースは、40センチ各ほどのボックスのみ。
日用品や着替えや読書用の本も含めてのボックスだから、どうしてもマンガ本は後回しになって持たないものだった。
マンガは官本にもあった。
が、昭和から平成前期のマンガがほとんど。
以前は官本にマンガはよかったけど、どういうわけか現在は不許可なので、現状あるマンガのみを補修を重ねてボロボロになっているのが置いてある。
で、ほとんどが全巻そろってない。
そろっているのが、「あしたのジョー」の全12巻と「ヤンキー烈風隊」の全28巻だけだった。
ええ!
読みましたよ!
40年ほど前のヤンキーマンガを!
むさぼるようにして!
とにもかくにも、受刑生活3年目に読んだ本になる。
きっかけ
官本室の自己啓発コーナーに、里中李生の本が3冊ある。
記憶ちがいかなと思ったが、確かにこの名前だった。
ずいぶんとまえに、受刑者となるまえに、里中李生の本を読んだ記憶がある。
馬券についての本だった。
単勝と複勝を重ねて買う「単複買い」を勧める内容の本。
それなりに実践的で使える馬券術だった。
それなので、里中李生とは馬券師だと思っていた。
雀士の桜井章一みたいな、勝負の世界に軸足を置いた、勝負事に一家言あるような人。
それがなぜ?
なぜ馬券師が自己啓発?
「男はお金が9割」などという本の題名からすると、馬券でひと山当てたとしか思えない。
不思議さもあって借りてみた。
ちなみに競馬は、自分にとっては、それほどおもしろくはなかった。
悪事のアリバイ作りでやってみただけ。
歌舞伎町で違法営業の店をやっていたときだったので、万が一に逮捕となったら「得たカネはすべて競馬で使いました」と供述できるように競馬を覚えただけだった。
読感
読み終えた直後の感想
なにがいいたいのか、よく分からない本だった。
具体的な話が、なにひとつない。
よく読んでみても、なにもない。
「行動をおこすべし」みたいなことは連呼してるが、なにがどうという続きがない。
言ってるだけ感しかなくて、首をかしげるばかりだった。
なにひとつ心に引っかかりがないまま、平常心のまま2時間ほどで読み終えた。
ちなみに、競馬のけの字も出てこない。
なにが彼をこうさせたのだろう、と不思議だ。
ちょっとグチっぽいかもしれない。
グチっぽいから、なるほど一理ある、といわせるパワーを乏しくさせている。
やきとり屋で一杯飲みながらの話として聞く分にはいいけど、本として読むのはキツイ。
キツイ読書だった。
貧乏人とバカが大嫌いというのはわかった
貧乏人やバカを徹底的にコキ下ろしているのだけど、そんなの放っておけばいいのに、と冷めた目にもなる。
金持ちケンカせずというのだから、わざわざ火をつけることもないのに、と他人事ながら心配。
題名通りカネカネと連発してるが、これについては読んだタイミングもわるかった。
漫画「あしたのジョー」全12巻を読破した直後だったので、ほのかに感動もした直後だったので、カネカネばかり連呼する著者がゲスに感じてしまったと思われる。
言ってることが、しょっぱい
プロフィールには「時代の趨勢に流されることなく・・・」とあるが、バンバンと流されてる感は否めない。
中国の食品が・・・とか、激安回転寿司が・・・など、著者はしっかりと時代の趨勢には流されてはいる。
だいたい、いってることが犯罪者と紙一重。
激安回転寿司、けっこうじゃないか!
100円だか200円の皿で満足してる人は犯罪などしない。
「俺はカウンターの寿司でなければ」なんて言ってる人ほど悪事をする、と言ってみる。
カバーにあるプロフィールには、累計230万部を超えるベストセラー作家とある。
キツイ読書と言い切るのは拙速かもしれないが、どこがどうなってベストセラーなのか不思議でもある。
どうでもいい自慢が続く
車はBMでなんじゃらかんじゃら。
ホテルはスイートルームでどうのこうの。
女に生活費1万を渡してどうのこうの。
どうでもいい・・・というのが正直なところだった。
どっかその辺のキャバクラに駆け込んでからウイウイやってくれ、と言いたい。
「ダメ男とつき合うバカ女は社会の癌だ」ともなると、ダメ男の筆頭である自分は「ほっとけや!」といいたくなる。
いかん。
ベストセラーに文句をつけてはいけない。
そうは思うが、この本のグチっぽさが、うつってきたようでもある。
好感が持てるところが1点ある
本文に書かれているが、著者はブログやツイッターでかなりの批判にさらされているようだ。
それがどうも、本文で紹介されるコメントを読んだ限りでは、批判という響きではない。
からかい交じりのイジリといえる。
著者は、こういったイジリに我慢ができない、ちょっとばかりプライドが高いタイプなのが知れた。
そして、それらのイジリに、わざわざページを割いて全力で応えている。
この全力さが必死すぎておもしろい。
おもしろすぎる。
人間、里中李生が感じられて、わずかに好感が持てほど。
この本に、好感があるとすれば、この1点のみが挙げられる。
3分で理解できる内容の解説
読んだとしても、なにがいいたいのがわからない可能性が高い本だけど、以下の3ステップで内容の7割は把握できる。
里中李生攻略法ともいうのだろうか。
紹介したい。
本文に散りばめられているキーワードを把握する
男の器、大金持ち、女、フェラーリ、貧乏からの脱出、成功、南の島、ストレスのない生活、愛人、夢、高級、頂点、満足感、品格、一流、金持ちになる方法、ベンツ、信頼、謙虚、金持ちの法則、宝くじ、運、世界旅行、感謝、意識、相手に与える、リスク、必ず、一生お金に困らない、自動的、本を読む、変わる、行動、伸びる、魅力的な男、美女、セッ○ス、投資、億万長者、人生、愛、年収数千万、才能、環境、無意識、今すぐ、気ずき、価値、目標、信念、金持ちの哲学、ロト6、向上心、絶対、時間をつくる、永遠。本文中の著者の主張と自慢話を把握する
私は、低価格の牛丼の吉野家になど、今まで1回しかはいったことがない。
私は、コンビニで無駄にお茶を買う貧乏人とは違い、家でつくって飲んでいる。
私は、貧乏人がいく回転寿司には10分といられない。
私は、友人の付き合いで、人生初のイメクラにいった。
私は、ソープランドなどいかない。
私は、CoCo壱番屋のカレーは一皿800円と高いと思うので家で180円のレトルトカレーを食べている。
私は、6000円食事付の格安ゴルフ場で何度も危険な目に遭った。
私は、交際している女性に生活費として1万円を渡した。
私は、バカが乗るミニバンや軽自動車には乗らない。
私は、ホテルの宿泊はスイートルームである。組み合わせて強引に文章をつくってみる
【 1.】の本文中のキーワード群と、【 2.】の著者の主張と自慢話を、想像を働かせて組み合わせてみる。
いや、想像ではない。
思い込みか。
すでに自分は年収数千万だ、と思い込む。
一生お金に困らない富裕層だ、と思い込む。
そして貧乏人を煽っている、と思い込む。
そう、あなたはアジテーター。
多少は飛躍しても、脈絡がなくても、意味がわからなくなってもかまわない。
断言口調で言い切るのがポイント。
だって、アジテーターなんだから。
たとえば。
私は低価格の牛丼の吉野家になど入らない。男の器を小さくするからだ。そんなことでは成功してベンツに乗れない。ましてや年収数千万など到底むりだ。なぜなら品格がないからだ。魅力的な男というのは信念があるのだ。だから宝くじも当たる。そうすれば愛人を持つことも可能だ・・・とか。
たとえば。
私は、コンビニで無駄にお茶を買う貧乏人とは違い、家でつくって飲んでいる。なぜなら、大金持ちはお茶は買わないからだ。貧乏からの脱出はそこからだ。人生の価値というのは行動にある。今すぐ無意識を変えることだ。その延長に南の島があるといえる。一流の男とはそういうことだ。まずは向上心をもつことだ・・・とか
たとえば。
私は、貧乏人がいく回転寿司には10分といられない。そういう品格が一生お金に困らない成功者となる。そうではないのか。高級とは価値を知ることだ。フェラーリで回転寿司にいく成功者はいない。美女も手に入れることはできない。まずは感謝をして相手に与えることだ。そうすれば世界旅行も夢ではない。すべては投資なのだ。金持ちの哲学である。そこに頂点があるのだ・・・とか。
たとえば。
私は、友人の付き合いで、人生初のイメクラにいった。それが謙虚というものだ。伸びる男とは学ぶのだ。行動なくて美女は手に入らない。一流の男はセッ○スが上手なのだ。愛とはそうではないのか。今すぐ頂点を目指すべきだ。だから私はソープランドなど行かない。それが男の器だ。そういう男は運もあるからロト6も当たる。一流の意識さえあれば年収数千万どころか一生お金に困らない。女だって寄ってくる。そこに気づかない貧乏人はだめだ。人生には投資は必要なのだ。南の島で美女と暮したいのなら、まずは行動することだ。時間がないなど言い訳にすぎない。だから私は、CoCo壱番屋のカレーは一皿800円と高いと思うので家で180円のレトルトカレーを食べている。6000円食事付の格安ゴルフ場で何度も危険な目に遭ってもいるのだ!
わけがわからなくてもいい。
なんとなく文脈が通じればいいのだ。
おそらく8割ほどは本文と合致してる。
要は、今すぐに「男はお金が9割」を実際に購入して読んでみることだ。
そうして、この解説の間違い探しをしてみるのも一興だ。
それが男の器だ。
一流の男だ。
ちなみに、私は、バカが乗るミニバンや軽自動車には乗らない。
だからこそ、男はお金が9割といえよう。
・・・さっそく、里中李生に影響を受けたようです。
まあ、そんな内容が、ほんとに感心するほど素晴らしくグデグデと続く珍本なのです。