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天沢夏月「そして、君のいない九月がくる」読書感想文

コンクリート造りの建物は、夏は暑くて、冬は寒い。
独居にはエアコンなんてないし、風通し良く造られてない。

出役日は気がまぎれるからまだいいが、免業日などは、それが猛暑日と重なりでもしたら、ただただ暑い中でじっとしてるしかない。

温度計は、24時間を通して33度を切ることがない。

エアコンなしの生活にも慣れるのだけど、これも刑罰のうちと思い込みもするけど、税金をムダにしていけないとか、ああ涼しいとか、ああサウナだとか、いろいろやってみてみるけど暑い。

規則を第一とする刑務所の体質として、物事に前もって前向きに対処するとか、何かを予見して対処するとかはない。

何か問題が起きてから対処する。
だから、この暑さも誰かが死ぬまで続くのだろうな・・・という想像はつくし、誰かも口にしていた。

そうすると不思議なことに、その最初の1人にはなりたくないという切羽詰まった気合が働くようで、結局は暑さでどうこうなる者は1人もいなかった。

気合でないとしたら、受刑者となる人の生命力はゴキブリ並みかのどちらかであるといえる。

そんな夏に読んだ本。


この本を選んだ理由

明日からの免業日には、つまらない本が読みたい。
これが難しい。

興味がなかったり、難しすぎたり、理解できなくて、だからつまらないとなる本だと具合がわるい。

しっかりと読んでから、しっかりと上から目線で、やっぱりつまらなかったとなる読書をしたい。

おそらくその1冊は、青春小説のジャンルにある気がする。

官本室で手にとってみたこの本は「青春小説に定評がある気鋭の作家」とカバー裏に紹介文がある。

このテイストの紹介文は、自分にとっては真逆となるパターンの匂いがする。

青春ミステリーともある。
青春小説はもう何冊も読んでいるが、青春ミステリーなるジャンルははじめてだ。

官本を選ぶ時間は5分しかない。
これでいってみるか・・・と借りてみた。

文庫本|290ページ|2015年発刊|KADOKAWA

読み終えた直後の感想

ひとつ、うれしい発見があった読書だった。
本を選ぶときには、タイトルと今の季節を重ねなければならない。

「そして、君のいない九月がくる」というタイトルのこの本を、偶然ではあったが8月に読んだのは正解だった。
冬の2月に寒さに震えて読んだなら、目も当てられなかった。

うれしいことは、もうひとつあった。
選本に間違いなかった。
期待を裏切らない、意図した通りのつまらない1冊だった。

我慢して読むというものでもない。
ただ無心で終わりまで読めた。

こういう本に感動できないなんてヤバイのではないのか、どうして自分は人と同じように感動できないのか、だから受刑者になったのではないか、という懲役病の一種である自己嫌悪もこない。

ある意味、健全な読書だった。

本書の特徴

ドッペンゲルガーが大活躍する。
作中ではドッペンゲルガーとなってはいるが、平たくいえば、いや、平たくいわなくても、ただの “ オバケ ” である。

実は、その人はオバケでした、オバケが学校生活を送っていたんです、こっちの人もオバケだったんです、これもオバケのおかげなんです・・・という内容。

いくら青春だからって、ミステリーだからって、なんでもありになっちゃっている。

深刻なことが浅く薄く描かれていて、物足りなさもあった。
が、物足りなさなど、人それぞれかもしれない。

登場人物

結城啓太

双町高校陸上部エース、スプリンター。
笑顔が絶えない彼だったが、家庭環境は複雑。

内心では、自殺を考えたりもしていた。
7月15日の夜に家出して行方不明となる。

19日に鳥蝶山で死体で発見。
家出に同行していた花野美浦が、崖の上から転落したのを助けようと事故死したのだった。

花野美浦

双町高校2年生。
結城啓太の幼なじみで好意を抱いている。

7月15日の夜、ランニングをしている途中、家出をしようとしている結城啓太を見つける。
放っておくわけにもいかずに、行動を共にする。

そのとき、幽体離脱したというか、生霊(本書ではドッペンゲルガーとしている)というか、とにかくもう1人の花野美浦が自宅に戻る。

一方の本尊である花野美浦は、崖から転げ落ちて重傷を負い、動けないまま日が過ぎる。

その間、もう1人の花野美浦は高校に通学をして、1週間ほど普通に生活をして、結城啓太の葬式にも出席するという異次元の動きをする。

ケイ

死亡した結城啓太のオバケ。
本書ではドッペンゲルガーとなっているが、いわゆるオバケである。

ともかくケイは、崖の途中で重傷を負って動けないままでいる花野美浦を助けようとして、双町まで来る。

自宅で過ごしていた、もう1人の花野美浦を、結城啓太のオバケであるケイが説得するという事態となる。

目的も話さずに「とにかく見つけてほしいものがあるから鳥蝶山まで来てほしい」とまどろこしい頼み方をして一同をイラつかせる。

榎本瞬

双町高校2年生。
結城啓太とは同じ陸上部でライバル視している。

「オマエさえいなければ」という不用意な一言が、彼を傷つけたのではと負い目を抱いている。

横山大輝

花野美浦に好意を抱いている。
結城啓太には負い目を抱いている。

西園莉乃

双町高校2年生。
クールビューティーな女の子。

調査報告書風あらすじ

結城啓太、花野美浦、榎本瞬、横山大輝、西園莉乃、以上の5名は双町高校の2年生となる。
いわゆる “ 仲良し5人組 ” である。

5名は、夏休み中にキャンプをする計画を立てている。
場所は鳥蝶山となる。

しかし、直前になって、5名のうち1名が事故で亡くなる。
結城啓太である。
鳥蝶山の崖から転落死をしている。

数日前から家出をしていのだが、転落に至るまでの詳細は未確認である。
キャンプは中止となっている。

結城啓太の葬式の2日後のことである。
花野美浦の言によると、その日、空中をプカプカと浮いている物体が目の前に現れたという。
空中をプカプカと浮いている、という表現で間違いない。

その空中を浮遊する物体は、さらに言葉を発したという。
ケイと名乗り、頼みごとをしてきたともいう。

「とにかく見つけてほしいものがあるから、鳥蝶山まで来てほしい」という内容である。

花野美浦は、なぜ恐怖感もなく、不審感も抱かずに承諾したのか、真意は不明である。

それから花野美浦は、ケイと共に仲良しグループの4名を説得して回っているが、これについても真意は不明である。
中止になったキャンプの代わりといった側面は認められる。

ケイを含めた5名は、徒歩にて鳥蝶山に向かう。
それぞれが途中で語り合う。

恋愛、悩み、葛藤、悔い、といったものではあるが、それほど深刻ではないようである。

現地に到着した一同は、ケイの指示により、崖の途中に引っかかるようにして重傷を負ったまま動けないでいる花野美浦を発見するに至る。

先の結城啓太は、動けないままの花野美浦を助けようとして転落死したと後に判明している。

そして、結城啓太の転落死体が発見されたときに、なぜ、彼女が未発見のままだったのか、詳細は不明である。

特記すべきは、この時点では花野美浦が2名存在しており、発見と同時に1名に収束することである。

これについては、自宅に所在していた花野美浦のほうが、ドッペンゲルガーだったと他の4名は説明する。

生霊でもなく、オバケでもなく、なぜドッペンゲルガーなのかも詳細は不明である。

そして、これほどの緊急を要することなに、なぜ、ケイは119番通報しなかったのか?

すでに死亡者1名と重傷者1名を出している危険な崖にもかかわらず、軽装の5名は徒歩でのんびりと現地に向かっているのである。

意図不明のまま、ケイは直後に消息不明となっている。

これについても、他の4名は、結城啓太のドッペルゲンガーで間違いないと説明するが、実際のところは科学的考察を得るしかない、という現状である。

※筆者註 ・・・ 細かいところは不明としてるあらすじですが、おおよそは本文に沿ってます。独居の中でダクダクになっていて、シャーペンは湿り気で使えないわ、ボールペンは暑さでインクが出てこないわ、ドッペンゲルガーだわ、つまらないわで、力尽きそうな感想文なのです。

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