マーケティング・マイオピア[3-1]
Marketing Myopia(近視眼マーケティング)
マイオピア(myopia)とは、近視眼的なこと。目先のことばかり考えること。
わかりやすい慣用語は、
「木を見て 森を見ず」
になるのかな~と思って、調べてみたところ、
「木を見て 森を見ず」
のほうが、英語のことわざ
「You cannot see the wood for the trees.」
の和訳だそうで、意味は「小事にとらわれると 大局を見失う」
このマイオピアを、ハーバード大学大学院のレビット教授は、
「映画界の人たちは、映画を撮るのが仕事だと思っていた」
「しかし、お客さんは、映画が見たいんじゃなくて、娯楽が欲しかった」
「それに気づかなかった映画は、テレビに主役を奪われて、衰退した」
はたまた、
「鉄道会社の人たちは、鉄道の運営が、自分たちの仕事だと思っていた」
「乗客の快適性や、物資の輸送が、鉄道の仕事とは思わなかった」
「それに気づかなかった鉄道は、航空や自動車に市場を奪われて、衰退した」
と論じました。
これが、マーケティング・マイオピア(近視眼マーケティング)という論文です。
この論文が発表されたのは、カラーテレビの放送が、日本で始まった1960年の米国。
この論文は、レビット教授の著書に載っていますので、ご興味がありましたらご覧ください。
『マーケティングの革新』
http://tinyurl.com/p5s3aga
『T.レビットのマーケティング論』
http://tinyurl.com/njbhmne
ただし、マーケティング論の本というよりも、経営論の本であることを、予めご了承のほどを。
レビット教授 三つの功績
マーケティング・マイオピアの発表に続いて8年後、レビット教授は、著書、
『マーケティング発想法』
http://tinyurl.com/naw4phz
で、
「ドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではなく、穴が欲しくてドリルを買う」
という名言を紹介しました。ご存知、
『ドリルを売るには穴を売れ』
http://tinyurl.com/nfpvtqc
です。
レビット教授の本が難しい、あるいは、マーケティングの入門書として、わかりやすい本を探しているようでしたら、この本をオススメします。
「商品を売るな。価値を売れ」
の意味を、小説仕立てで楽しく読めますよ。
奇しくも『ドリルを売るには穴を売れ』が出版された2006年、レビット教授は鬼籍に入りました。
レビット教授が遺した論文「売り手に欠かせぬ買い手との関係強化」では、
顧客を獲得するのみならず、つなぎとめ、有益な長期的関係を築き上げることの必要性を説いています。かいつまむと、
「販売とマーケティングは違うよね」
「販売は、製品を現金に換えること。マーケティングは、
・顧客の望む“価値”を
・顧客の望む“場所”で
・顧客の望む“タイミング”で
・顧客の望む“形態”で
・顧客の望む“価格”で
用意することだよね」
「売ったらお終いじゃないよね。初取引は、マーケティングプロセスの第一歩だよね」
「新規客も大切だけど、長期的なリピーターのほうが企業には大切だよね」
ということです(一部 筆者 意訳)
以上、
1)マーケティング・マイオピア
2)ドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではなく、穴が欲しくて買う
3)顧客を繋ぎとめ、長期的な関係を築き上げることがマーケティング
三点がレビット教授の功績だったと筆者は考えます。
要するに、経営者が(社員も)、自分の会社を、どう定義するか?ということです。