籠城戦の戦略ミス/前編

芸能界の営業

営業というと、芸能界では、本人による宣伝活動を指します。

具体的には、デパート催事場での公演、イベント会場でのMCやトーク、学園祭の出演、打ち上げや宴会の余興etc.

さっそく余談ですが、かれこれ25年前、某イベントのキャスティングで、石原プロへ打診したとき、

「ウチは、営業しておりません」

と断られたことがあります。営業しなくても、仕事が来る証ですね。


石原軍団ほど有名になれば、黙っていても仕事が来るのは、どこの世界も一緒。

一方、まだまだ知られていない歌手や、芸人は、全国各地を営業して廻ります。

彼らのギャラは安く、デビューしたての演歌歌手や、下積みの芸人ですと、一並び(111,111万円)で依頼できます(今はプロがありませんが)

あるマネージャーさんから聞いた話によると、取り分は、五分五分なら御の字。

芸人1 対 事務所9も少なくないそうです。

そうなると、月一本しか仕事が入らなければ月収一万円ですので、アルバイト
せざるを得ません。

それくらい、稼げない人には厳しい世界。


厳しいというよりも、これが、一般企業なら、ブラック扱いされかねないメチャクチャな世界です。

イベントの仕事で会った芸能人の話は、まだまだ、おもしろい話がありますが、主題が逸れるので置いといて、本題へ戻りますと、

芸能界の営業と、企業間取引の営業には、通じるものがあります。それは、

『マメな挨拶』

です。名前と顔を覚えてもらわなければ、仕事がきませんからね。

マネージャーが付かないタレントの場合、覚えてもらうために、忘れられないように、マメに接触して、

オーディションやキャスティング等、何かあった時、声をかけてもらえるようコツコツ努力しています。

野外戦と攻城戦

芸能界の営業は、お客さんの集まる場所へ赴いて、芸を披露する、野外戦です。

芸能界以外で、今の季節なら、アイスクリームの移動販売がピッタリですね。

他方、芸能界の営業と似て非なる企業間取引は、客先の企業へ赴いて営業する攻城戦です。

まかり間違っても、

「営業されに、来社(来所、来店)して下さい」

なんて有り得ませんし(笑)、あり得るとしたら、悪質商法のアポイント商法です。


と、ここまで書いて、ちょっと思い出したので、また余談ですが(かれこれ20年くらい前の話になりますが)

「クレバーだなあ」

と感心したのは、外資のコンサルティング会社。日本支社を作るので、

「専属の広告代理店、SP会社、PR会社、マーケティング会社を探しています。
つきましては、説明会に来ませんか?」

というDMが届いたため、指定の日時に行ってみると、同じオファーを受けて
来たらしい競合他社が、50人くらいいるじゃありませんか。

みんな、仕事が欲しいわけです。


で、説明会が始まってみると、会社案内や、商品説明が延々と続き、要するに、

「当社を売って下さい。売ってくれた広告代理店へ、広告やPRを発注します」

とのこと。「ウチの商品を売る業者へ、仕事を任せる」というわけです。そして、

「では、これから、10分間、休憩の後、個別に面談します」

となった時、みんな(誰も口には出しませんが)

「これじゃ、アポイント商法じゃねーか!ふざけんじゃねー!」

とばかりに、席を立って、帰るわ帰るわ(笑)、ゾロゾロ出て行きました。


筆者も、もちろん席を立ち、出口へ向かう列に並びましたが、数人くらい、席に座ったまま、残っている人たちもいました。

2~3人くらい、残っていたでしょうかねえ。

それくらいの人数を、最初から狙っていたのかもしれません、外資のコンサルティング会社は。

営業されに来させるなんて、日本の商慣習では、考えられません ┐(´~`)┌

店舗の営業

さて、本題。店舗の営業というと、時間を指します。営業時間ですね。

営業活動は、仕入れ、陳列、レジ、POP等の販促、送迎の挨拶、清掃等、主に店内活動です(←ここ重要なヒント)

名刺やパンフレットを持って、飛び込み営業することは、ありません。

自分の店舗や、事務所に籠もって、来客を待ち受けますから、籠城戦です。

このように、営業戦略を、戦場で分けると、

1)店舗や、事務所に籠もって、来客を待ち受ける籠城戦

2)お客さんが集まる場所へ出向く野外戦

3)客先の企業へ赴いて営業する攻城戦

の三戦場に分かれます。籠城戦、野外戦、攻城戦です。

1)籠城戦の戦略は、立地。

一に立地。二に立地、三四が無くて、五に立地。

わかりやすくいえば、無人島に店舗を構えたって、誰も来ないということです。


2)野外戦の戦略は、エリア。

駅待ちタクシーのように、常に乗客が待っているエリアへ食い込むか、流しののように、ムダなく乗客を拾えるエリアの選定が重要。

わかりやすくいえば、千客万来を狙えるエリア次第で売上が決まるということです。

3)攻城戦の戦略は、百花斉放。

です。

店舗の十種三分類

店舗の営業戦略を、物理的に分けると、

1)耐久財(長持ちする)…家電、家具、自動車etc.

2)非耐久財(1~数回でなくなる)…食品、家庭日用品、化粧品etc.

3)サービス(無形)…理容美容、旅行、娯楽、コンサルタントetc.

の三つに分類されます。たとえば、

1)家具店は、耐久財を売っている店舗。

2)スーパーは、非耐久財を売っている店舗。

3)弁護士や司法書士は、法務という無形サービスを売っている事務所

です。


次に、商品分類で分けると、

1)最寄品(コンビニエンス・グッズ)

弁当、雑誌、トイレットペーパーのように、深く考えずに、よく買う品。

2)買回り品(ショッピング・グッズ)

衣類、家電、パソコンのように、買う時は、他店と比較・検討してから買う品。

3)専門品(スペシャル・グッズ)

ブランド品、スポーツカーのように、専門的な知識が必要で、趣味性の高い品。

4)不規則品(イレギュラー・グッズ)

買回り品のような必需品でもなく、専門品のような贅沢品でもない、生命保険、不動産、弁護士のように、いつ売れるか予測できない品。

以上の四分類になります。


ちなみに、不規則品(イレギュラー・グッズ)は、筆者独自の分類で、学問上では、

【非探索品】
消費者が、普段は、興味がなく、買わない消費財。生命保険、仏壇、墓石etc.

が四番目に挙げられています。がッ!価値はTPOによって異なりますから、

・普段は、興味がない商品

・普段は、買おうと思わない商品

なんてザラにあるわけで(ビニール傘にしたって、雨が降らなきゃ、買おうと思いませんし、興味も全然わきません)

それを、取り立てて、生保、仏壇、墓石に例を求め、非探索品なる意味不明な名を付け、
(缶ジュースだって、葬儀社だって、探してまで、買いません)


まるで、不要な商品分類として扱うのは、

必死になって営業している、生保や、石材店に対して、無礼千万な机上の空論ですので、

筆者は、非探索品を採用していません。それらは、不規則品の中に含まれます。

さて、ここまで、店舗の戦い方を、

◇戦場分類

1)籠城戦
2)野外戦
3)攻城戦

◇物理分類

1)耐久財
2)非耐久財
3)サービス

◇商品分類

1)最寄品(コンビニエンス・グッズ)
2)買回り品(ショッピング・グッズ)
3)専門品(スペシャル・グッズ)
4)不規則品(イレギュラー・グッズ)

三分類十種に分析しました。こうして見てみますと、たとえば、薬局は、

籠城戦 + 非耐久財 + 最寄品

ですね?戦い方としては、コンビニやスーパーと一緒ですから、それらと競合しつつも、医薬品で差別化できます。


コンビニやスーパーは、薬品を販売できません(一部の薬品を除く)

ならば、薬局で、コンビニやスーパーの売れ筋商品も売ったらどうですか?ということです。

敵は、同業他店の薬局とは限りません、異業種他店だって、競合になり得ます。

では、あなたの店舗は、どう分類できますか?

特に、司法書士や弁護士等、事務所を構える職業の皆様(←ここ重要なヒント)よぉく考えて下さいね。

籠城戦の戦略ミス』後編へ続く


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