ラーメンの商品開発軸/守破離の余話の弐の壱
世界初のインスタントラーメンが、チキンラーメンだった理由
やみつきになるラーメンの第一条件は、旨味(だし味)であることを前編にてひも解きました。
チキンラーメンは、チキン味の合わせダシ。日清カップヌードルは、エビ味の合わせダシだったんですね。
(あくまで筆者の分析です。日清食品による公式発表ではありません)
そこへ、日本人に好まれる醤油で、風味づけ。
もちろん、旨味のコトなんざ(笑)とっくに知っているラーメン屋さんは多いようで、
魚介系ブームを巻き起こした麺屋武蔵に代表される魚類(カツオ節、サンマ節、サバ節、アゴ節、アジ節、マグロ節、鮭節、煮干、魚粉)を使ったラーメンや、
魚類と同じく、イノシン酸の牛骨を使ったラーメンや(BSE問題で下火に)、
エビ・カニ(アミノ酸系グリシン)を使ったラーメンや、
貝類(有機酸系コハク酸。しじみ、あさり、ムール貝、牡蠣)のラーメンや、
だし素材の中で、最も旨味(アミノ酸系グルタミン酸)が出る昆布を使ったラーメンが登場し、
各店各社、工夫を凝らしている模様。詳しいレシピは知る由もありませんが、
・アミノ酸系(グルタミン酸、アスパラギン酸)と、
・核酸系(イノシン酸、グアニル酸、アデニル酸)と、
・有機酸系(酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸)
を合体させ、相乗効果(100倍)で、旨味を引き出しています。http://www.nissui.co.jp/academy/taste/05/02.html
とりわけ、鶏ガラのようなアミノ酸系のダシは必須で、
(中華麺の製麺に用いられる)かん水の独特の臭みに対抗するには、
うどんやそばに使われる魚類系(の核酸系イノシン酸)のみならず、
アミノ酸系の、強い旨味が必要ですので、ラーメンのダシといえば、鶏ガラが主流でした。
鶏ガラの骨からはグルタミン酸が出ますし、
肉からはイノシン酸とグアニル酸が出ますし、
骨を生成するカルシウム自体に「第六の味がある」という説すらありますから、
鶏ガラを使うだけで、あわせ旨味になります。
なので、骨つき鶏肉の鍋料理(水炊き)が成り立ちますし、
道理で、世界初のインスタントラーメンが「チキン」ラーメンだったワケです。
チキン味を選んだ安藤百福翁の着想に脱帽。
あぶらは、やみつきになる
やみつきになるラーメンの開発は、
・アミノ酸系(昆布、トマト、チーズ、エビ、カニ、ホタテ、イカ、タコetc.)と
・核酸系(かつお節、煮干し等の魚介類。肉類、しいたけ等のきのこ類や野菜)の
合わせダシの開発が第一歩になります(筆者が商品開発するとしたら……の話)
特に、ホタテには、アミノ酸系グリシンと、有機酸系コハクの両方が含まれていますから、
歴代カップヌードル総選挙で、ブタホタテドリが、なるほど、事実上の1位になったわけです。ホタテとポークとチキンの合わせダシは、最強の証。
しかし、ほたて味のインスタントラーメンや、外食の帆立ラーメンは、競合が多数ありますので、
ほたて以外にダシ素材を求めるほうが良い(新しい市場が見つかる)でしょう。
または、別な組み合わせ(ポークとチキン以外)で開発することです。
あわせだしの開発の次は、
・有機酸系(酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸)と相性の良い油の開発が、第二歩になります。
酢(有機酸系)と油の相性の良さは、ドレッシングやマヨネーズを例に挙げるまでもなく、世界中に受け入れられています。
なぜなら、人は、油(脂)を食べた時、あまい(美味しい)と感じるからです。
バターが代表格で、
バターがなければ作れないもの(スイーツ等)がありますし、
バターを加えるだけで美味しくなるもの(トースト)もあります。
肉汁にしたって、結局は脂ですし、魚のトロも脂ですし、市販のカレールウも油脂のかたまり。
マーガリンのような、食べてはいけない(自然界には存在しない)油脂さえも根強い人気があります。
ぶっちゃけ、あぶらは、やみつきになります。
なので、インスタントラーメンには、油脂が混ぜ込んであるか、または、別添で、フレーバーオイル(調味油)が付いています。
フレーバーオイルは、サラダ油、大豆油、ラード、パームオイル等の食用油脂に、
ポーク、ビーフ、チキン、ハーブ、柑橘類、オニオン、ガーリック等、色々な食材から抽出した香りを付けてあり、
このフレーバーオイルが、ラーメンの美味しさを左右します。
それを、いち早く見つけたのが、これまた日清食品の、出前一丁。
ゴマ油を数滴たらすだけでスープの味が激変します(ライバルに先駆ける日清食品の先駆的な発想には頭が下がります)
試しに、ゴマ油を入れずに「出前一丁」を食べてみて下さい。どこにでもある(差別化できない)何の変哲もないインスタントラーメンになりますから。
このように、あぶらが入ってこそ、やみつきになるラーメンになります。
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