戦略核-前編
uniqueness(ユニークネス)
戦略核(coa strategy:コア・ストラテジー)には4つの核ある。
第一核は、唯一独自性(uniqueness:ユニークネス)
優位性・差異性・利便性の連鎖である。あなたから買う理由といっていい。
優位性とは、優れた性質のこと。あなた(の会社や商品)が持つ、優れた特性である。類語として、長所 ・特長・ 強み ・ セールスポイントと言い換えてもいい。
強みというと、よくSWOT分析が引き合いに出されるが、SWOT分析のS(strength)を見つけられずに苦労せずとも、強みをカンタンに見つける方法が一つある。
この、優位性(長所 ・特長・ 強み ・ セールスポイント)を明確にすることから全てが始まる。
次に「その優位性は、誰(何)と比べた優位性か?」というのが差異性。
成長社会における優位性は、有ること(具有)であった。モノが無いのだから、有ること自体が優位性であった。たとえば、筆記具に乏しかった時代は、
「そこに鉛筆がある。鉛筆を売っている」
だけで飛ぶように売れ、
「鉛筆を作っている」
だけで、文具卸の営業車がメーカーに列を成し、作るそばから売れていった。
しかし、成熟社会にさしかかり、鉛筆を作るメーカーや小売店が増え、競合の増加により、鉛筆があるという具有は優位性ではなくなった。
成熟社会の現在、競合のない無敵市場は特許のみといっていい。すでに競合がいるか、必ず競合が現れる。
「それら競合は誰(何)か?それらとの差は何か?」が差異性であり、差異性は「その差は、どんな優位性に基づくか?」という優位性と連鎖している。
その優位性と差異性は「買う側にとって、どんなメリットがあるか?」という利便性と連鎖する。
つまり、「当社には、このような優位性があり、それは競合とこのように違うため、当社から買うことによって、あなたは、このようなメリットを得られる」との三段論法になる。
優位性と差異性と利便性の3つが連鎖した時、他にはない唯一独自性が生まれる。
逆にいえば、あなたに以上の3つが無いとしたら「あなたから買わなくてもいい=競合から買っても構わない=売れない」という恐ろしい(笑)ことになる。
customer correspondence
第二核が、顧客対応(correspondence:コレスポンデンス)
顧客対応というと「こう尋ねられたら、どう対応するか?」といった顧客対応マニュアルを思い浮かべるかも知れないが、それはインターナルの範疇である。
社内に蓄積された顧客対応体験を抽出してマニュアル化する作業は大切であるが、マーケティングが顧客へ対する分野である限り、
お客さんへ対し、このように対応します
との態度を宣言しなければ。真の顧客対応にならない。顧客へ対しての約束である。その約束を知ることによって、顧客(とくに顧客になる前の擬似客)は安心する。
ほとんどの企業(特に中小零細企業)の場合、顧客対応は明文化されておらず、企業文化や企業風土から醸し出されるケースが多い。体育系の企業なら、体育系らしい顧客対応になる。
わかりやすく、私事で恐縮ながら、フィットネスクラブの例を挙げよう。
今では信じられないが、20年前に某フィットネスクラブへ入会しようとすると、預金通帳を見せなければならなかった。実印も要った。
筆者、預金通帳と印鑑を持って、入会手続きに訪れた。が、実印ではない印鑑であったことに気づき、その旨を伝えると、
「では、実印をお持ち下さい。でなければ、入会できません」
の一点張りで、取り付く島も、笑顔もない。まさしく「ダメなものはダメ」を貫く体育系らしい(苦笑)対応だった。ジャージ姿の若い女性スタッフだった。
体育系は珍しい例にしても、入った飲食店の対応が悪く、気分を害した経験が誰にでも一度はあることだろう。宣言すべき態度がないため、スタッフが共有できていないのであろう。
行動指針や行動規範を作る目的は、最終的に、顧客対応態度を宣言するためにある。
「お客さんへ対し、当社は、このように対応します」と宣言し、約束することで、警戒心を解き、怪しまれず、安心して近寄ってもらえる。これが第二の核である。
続く