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11月3日

88歳の母はもう料理らしい料理をしない。忘れっぽくはあるが、認知症というわけではない。できなくなってしまったのだ。

それは70歳台後半、まだ父が生きていたころ、週二回お弁当を取り始めた。年を取り、体が思うようにいかない、買って作るよりお弁当のほうが安い。味はそこそこであるものの、栄養バランスだって考えてくれている。当然といえば当然なのかもしれない。その時は母は自分が料理ができなくなるなんて思いもしなかったろう。

父が亡くなり、毎日お弁当となった。そして5年。

なくしてしまったのは料理の技術だけではない。なにより大きな生きる自信のようなものを失ってしまった。女の人にとって、いえ、今の時代男も女もないのだけれど、料理をしなくてすむのは楽ちんとばかりに、コンビニ飯や外食、お弁当に頼っている私たちも本当に危ない。自分を失うよ。

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