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ぱーっぱーっぱっぱっぱ。

東京/くるり が頭の中で3日程鳴っている。

心理学科のギターの先輩からベスト盤渡され、
バンドでコピーしようと誘ってくれて
東京の街知らないけどなあと思いながらも
何故か持ち歌のように共感していた。
くるりは過小評価されているロックバンドだ。
コピーしたバンドキッズは皆
空気感を出すことの難しさと尊さを知る。

その先輩はもの凄く優しくて女たらしで
何よりも聞き上手で何一つディスらない。
人懐っこくて後輩に弄られても笑顔だ。
お世辞にも美しい顔とは思えないけれど
さらっとブランド物を着こなすオシャレで
クリエイターみたいな雰囲気を纏っていた。

そう言えば今思い出したけど
先輩は短小だったようで他の先輩達から
小籠包と弄られ本人もネタにしていたけど
普通に彼女を青姦したりハメ撮りしたり
ファンシーで凶暴なちんちんだったらしい。
それでいて学校の成績はぶち抜いていて
学科違いの僕のレポートもよくみてくれた。

先輩の音楽の知識とは裏腹に
ギターの腕前は中々に厳しかった。
ギターボーカルの僕が不安になるくらいに。
僕の前で他のメンバーに叱られたりしても
先輩は何故かケロっとしていて
次の日もまた音楽談義をするのだった。


・イケメンじゃないけど女子にモテる
・ちんちん小籠包だけど彼女が虜になる
・ネタ※はよくスベるけど成績優秀
・ギター下手くそだけど音楽に造詣が深い


僕が所属していた関西の軽音楽部では
新歓コンパで入部の儀式として
漫才や一発芸のネタ見せが必須だった。
合宿のバスの中でも大喜利大会で白熱したりと
お笑いを軽んじる奴は人間にあらずな環境。
東京でスカして世界の中心と思ってる学生は
本当にカスだと当時思っていた。いや今もか。

頭良過ぎて、わざとやってるのかな?
と思うくらい僕は先輩のギャップに萌えた。

嫌われようが笑われようが
何事もなかったように一瞬で間合いを詰めては
ヘラヘラと先輩はいつも誰かの話を聞いていた。

「先輩、先輩のこと好きでもない奴の話聞いて
 何が面白いんですか?」

と尋ねてみようかなと思ったけど、
あまりに愉快にはしゃいでいるから
そんなことはどうでもよくなって
気付いたら僕も輪の中にいた。
眉間に皺寄せながら話していた奴も
いつのまにかケラケラ笑っていた。

そんな先輩は東京のどこかにいる。
圧倒的なコミュニケーション能力を引っさげ
もの凄い数の女友達がいるのだろう。

オスとしての嫉妬とか、羨ましいとかはない。
一緒にいるだけで楽しい気分になるから
いつの間にか満たされてしまう。

まるで、

そんなことはどうでもいいんですよね!

って、憂いを蹴飛ばした勢いで
ズッコケてスベッて笑うように。





そんなことを思いながら回遊していると
その歌をすうっと口ずさむ方がいた。
一瞬、心理学科の先輩かと思った。
お顔も分からないのに二度見した。
お顔も分からないのに二度読みした。
お顔は分からないけど見間違えだろう。

アウトロの先輩のコーラスが響く。
半音ぐらいズレている。

東京/くるり が頭の中で4日程鳴っている。






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