社会はキモい①(迫り来る就活編)
『私が御社を志望する理由は!!!』
と小学生の時やらされた行進のような作り元気な口調で、人事の目だけを気にしながら喋り出す自分を、
想像していた。気付いたら何故か。
すると気持ちが悪くなってしまった。
まるで胸がつっかえるような感覚になった。でも空咳をしても痰は出ない。
就活という単語を聞くと否応無むず痒くなってしまう、
大学受験の時とは違う寒気がする、悪寒がする。
実際、夏が終わり、秋?もどきが来て、就活が近づいたことで少し風邪を引いたのも皮肉めいているようで。
風邪なんて引いてても、現実は診断書を出してくれないし、知らん顔で僕らの元に変わりなくやって来る。
どうやら僕等大学後半生の人間の殆どは近い未来、この想像を実際に具現しなくてはいけないらしい。
朝起きて、目を擦りながら携帯を眺めるいつものルーティン。
次々に流れてくる就活情報、
Twitterを開く。友達が就活情報をRTしていて、メールを開いてもマイナビインターンから、リクナビから、キャリアなんちゃらから、ああもううるせえ。
何も俺の事を知らない奴等からのお知らせ達が無数に届く、ゴミ箱に捨てる間もないほど飽和した水蒸気みたいで、朝からイライラしてしまう。LINEなんてほとんど公式からのつまらぬクーポン情報くらいしか来ないのに。コーヒーを淹れる余裕も無い。こんなんで社会人がやっていけるのだろうかと思うと同時に親が僕目掛けて叱った時の顔を思い出す朝。思わず、ハァとため息が出る。まだ白くはない。白ければちょっとカッコいいのにね。
そして秋になりかけの今、僕の彼女や友達、同級生達は、足早にスーツに衣を替え、ESを書き、インターンや早期選考に備えて走り出している。少し息を切らしながら。
それを見て、純粋にすごいと感心している僕と、
社会に染まりゆく姿を見て哀しく寂しく思う僕と、
そんなに焦らなくいいだろと余裕を見せたがる僕と、
大企業達にその頭とプライドを下げる姿をどこかナナメから見下している僕、
どの僕が正しくて、どの僕を信じるべきなんだろうか。
振り返れば、あんだけ一緒にバカをしていたあいつも、つまんないことで一生語ってたあいつも、家賃が払えなくなって俺の家に居候してたバカも、殆ど知らねえよっ友の奴らも、バンドで共に夢見たあいつも、隣で寝ている彼女も、遠い場所で頑張っている親友も、何かを続けていたあいつも、捻くれた俺も。
何故か当たり前の様に、まるで好きな人の話をするみたいに。いや、もっと軽いノリで就活どう?ES書けた?あそこのインターンクソだったわ、インターン落ちた、早期先行落ちた、私は受かった。TOEICスコア800超えた有利〜、SPI対策めんどいわ〜、面接対策通ってんねん。
あああああと叫びそうになる。頭が時々カチ割れそうになる。考えすぎだよって言われたらお終い。あんなバカでくだらなかった会話達がこんな簡単にすり替わる。
あの教授ゴミだわ〜、この授業マジ楽単だからおすすめ〜、とかの会話が懐かしくて堪らなくなる。あの子といい感じでさ、今度デート行くんだ!無邪気な笑顔を思い出す。あそこのラーメン食い行かね??二郎行こうぜ食い倒れようや!最高に楽しそうだ。
正直就活の話をしていても笑顔になれないし、ならないんじゃ無いか。現実で現実を現実のまま語りあって、なんか苦しくなってしまう。僕だけかもしれないけど。
大学後半戦のみんなにとっては当たり前のことなのかもしれない、むしろ変わっていかねばならないタイミングなのかもしれない。
でもなんとなく、あの無邪気な笑顔達がみんなから段々薄れて言っている気がする。
僕も前に比べたらそうなのかもしれない。
社会の中に一歩ずつ足を踏み入れている。
社会という絵の具に少しだけ薄汚れた白色が段々と塗り潰されていく。
朝と夜の満員電車の警笛音、アナウンス、朝のアラームの憂鬱、サザエさんシンドローム、ニュースzeroが始まれば寝ないと、スッキリはもう終わってしまった、煩わしいめざましじゃんけん、山手線に揺られる毎朝夜の満員列車、 想像してみる。
大企業に受かり安泰だと自惚れている自分、上司に媚びへつらい、気付いたら社会の歯車として息をする自分、朝夜以外会社にいる自分、ランチを社員食堂で食べる自分、会社終わり飲みに行き愚痴をつまみにする自分、夢を語るのが恥ずかしいと思ってしまうようになった自分、ギターなんて埃をかぶって押し入れの中にある自分、歌なんて2次会でしか歌わなくなってしまった自分、バカみたいに笑うことが減った自分、大人だし恥ずかしいと会いたい人に会いたいなんてことも言えなくなってしまった自分、
毎日のように会ってた奴等とも年に1回くらいしか会わなくなるらしい、
ステージが変わったら、会う人間も変わるらしい、
時間はなくなって酒に使う金だけ増えていくらしい、
昇進するには、大事な人との時間を削って接待をしなければいけないらしい、
結婚して、子供を作り暮らすことが幸せの定義になるらしい、
毎日が過ぎるのを車窓から眺めるしか無いらしい、
はあとため息をついたら、シケモクの香りがするらしい、
時々風邪を引くけど、我慢して会社に出勤することが正義らしい、
親は気付いたら白髪が増えて歩くスピードも遅くなっていくらしい、
親はいつでもあなたの元気な顔が見たいだけらしい
考えれば考えるほど、僕にはわからない。
わからないことばかり。生きる事とは何なのか。
愛とは、人生とは、就職とは、社会人とは、家族とは、友達とは、成功とは、失敗とは、夢とは、勝ち組負け組とは、美味しいとは、不味いとは、死ぬとは、生きるとは。
誰か教えてくれよ。
訳も分からず行こう。1年目に作った曲の歌詞。
その曲はまだDEMOだから、今日作り直そうかな。そんなことはいいんだけど。
何となくそこにヒントがある気がする、いや勘違いか。
訳も分からず行こう。それが僕な気がする。僕なんてそんなもんな気がする。
社会はいつでもキモい、そう僕は思う。生まれたくて生まれたわけじゃない僕等に暗黙で順位を付け、資本主義という名の下で競争させている。
僕等にも気付いたら社会という波が襲ってきている。
そんな波に侵食されたくはない、だから社会に対する反骨心だけは忘れない。
大人になれと言わないでくれ、無駄だから。
そんなんで丸まるほど、俺は熱し易くないし、曲がりやすくないから。
ついでに、ほんとついでだけどさ、なあ
みんなもそうであってくれ、そんな簡単に変わっていかないでくれ、
一緒に笑い合ったあの日々をどうか忘れないでいてくれ、時には思い出し笑いでもしてやってくれ。寂しいからさ、何もかも変わってしまったお前を見るのはさ。
だから頼むよ何でも奢るからさ美味い飯でも食い行こう。
そして、バカみたいな話をバカみたいな大声でして、他の客からクレームが来るくらいバカみたいに笑って、その店破壊するくらいバカ騒ぎしてやろうぜ。
それでラーメンでも食ったら、締めにカラオケでも行って、リンダリンダ歌ってライジング・サン歌ってそのままそこで雑魚寝して、会社なんか休んじゃおうぜ。それで、昼過ぎに目が覚めて2日酔いでバカだなあってほくそ笑もうぜ。
それだけ。
俺はこの先自分がどうなるかなんて知らないし、知りたくもない。
けどとりあえず、就活さんよ、かかってこい。
お前なんかに泣き寝入りするほど俺は弱い、だが弱いを通り越して強いからな。
就活に弱くて何が悪い。俺は俺に好きに自分を変容させる。お前等社会如き、大企業か中小企業とか知らねえけど、お前等企業が全社員俺の家に凸って来ても、
冷蔵庫もテレビも金も俺の家にはないし、ギターと黒くなったバナナくらいしかないぞボケが!
そうお前等如きに俺の軸は、俺の軸だけは絶対曲げられないから。そこんとこ覚えといてくれよ、よろしく。
(自分が一番怖いんだけどね、自分の思い込みで自分なんて簡単に変わっちゃうのを俺知ってるからさ、自分がいつでも一番手強いんだよね。そうじゃない?)
就活を連れてきそうな秋風がそよぎ始めたぞ、だけどみんな
訳も分からず行こう。同志達よ。うそお前等は全員落ちろ!!!!
社会はキモい①(迫り来る就活編)これにて終
田村シュンス(Whatever)
訳も分からず行こう。て曲。↓