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(3)通勤時間が爆長くなったので毎日本を一冊ずつ読むことにした

 通勤時間を利用した読書の記録です。読書は精神衛生を保つのに役立つが、家にこもりきりで読書をしているとだんだんいかれてくる。しかし読書をせず仕事をしていても「このままだと頭がいかれてしまう」と感じることは多々あり、結局なにをしても頭がいかれつつあるのかもしれない。とか思った週。いい本をたくさん手にできた。漫画は帰りの道すがらに読んだ。帰りは真面目な本はあんまり読めないので、数独をやるか漫画を読むかしている。

9.世に棲む患者

 安心のちくま学芸文庫。
 朝、非常に調子が悪い日に読んだ。

 七日目、三〇日から四〇日目、九〇日から百日目、それから三ヶ月ごと、一年目。このあたりは疲労しやすく、仕事をやめたくなる。しかし、それは自然なことで、一時的であり、調子を少しおとすか、いっそ休むと、また力が出てくる。だから「もうダメだ」と思う必要はない。一年もてば三年もつだろう。あとは仕事とのあい性である。(p.68)

 これは統合失調症の患者に向けて書かれているものだが、駅のホームで「ここで飛び込んだらすべて『終わり』になるのになぁ」と思いながら読んだその日のわたしには重たく刺さった。折しも着任して七日目だった。だから疲れて何もかもやめたくなるのは当たり前のことなのだと自分をごまかしつつ、職場の最寄駅に着き、働き始めたらなんのことはなく一日が終わった。そんなものである。
 最後もよかった。「医療から遠ざかる権利」。
 わたしの母は双極性障害を患っていたが、あれはもしかすると「医療から遠ざかる権利」を行使していたのかもしれないと思う。病気に理解のない家族しかおらず、劣悪な環境に置かれ続けている人間(母)にとって、医療に継続的に関わることはその環境から離れなさいと言われ続けることであっただろう。実家に帰るという選択肢もない母にとって、そして夫に逆らえない母にとって、それは死刑宣告のようなものであったに違いない。まあ、全てわたしの考えすぎや妄想である可能性もあるが。

10.毒と薬の世界史

 これはとても面白かった! 「薬と毒」ではなく「毒と薬」であるところが粋だ。毒を避け、効能のみを享受しようとしてきた人間の歴史。薬学部の教養の授業ではこういうのを勉強するのだろうか? 薬剤師という職業ができる際に、医薬分業論争なるものが起きたという話、面白かった。抗生物質というものがとにかく素晴らしい発見だったということもわかった。後者に関しては同じことを最近他の本で読んだが、こうもたくさん読んでいるとどれに書いてあったか忘れる。

11.世界の神話

 本を読むときには背表紙側から読むようにしている。筆者の経歴・書かれた年・参考文献などを読むと理解が進むように思うので。この本を見たときに、はじめに目に飛び込んできたのが、筆者紹介のこちら。

 好きな女神はインドの女神ドゥルガー.独立した女神であることに惹かれている.

 うわぁ!「好き」でしかない! 「独立した女神であることに惹かれている」の部分だけを反芻し、きっとこれは最高ですね…… と静かに興奮しながら読んだ。
 期待に違わず、本文もとても面白かった。当たり前かもしれないけど、神のやつらはセックスしすぎじゃない? あと、中国の神話は少ないそうなのだけど、より現実世界に重きを置く文化だからだとか……。また忘れた頃に読み返したい。
 どうでもいいことだが、大学1年次に教養の授業で大変お世話になった先生の本が参考文献として挙げられており、嬉しかった。

12.教えるということ

 こちらも安心のちくま学芸文庫。
 一年ぐらい前に買って積読していたのを掘り起こしてきて読了。なぜもっと早く読まなかった(読めなかった)のか!面白かった! 帯に「育児書としても注目を集めています」とあるので、てっきり子に何かを教えるときのハウツー本か?と思ったら、技術者として、専門職として、職業人としてどう生きるかという話。『世に棲む患者』の時も思ったが、自分の仕事に対してここまで熱心に長期に取り組み、思慮を深めていけることがとても羨ましい。わたしもそういう仕事がしたい。
 国語の先生の話だから作文の話がいくつも出てくるが、そういえばわたしは小さい頃から作文が得意で好きだった。小学校3年生くらいのときの作文の授業で、いくらでも無限に文章が思いつくような気がして、そのあとの給食の時間まで使わせてもらって書きまくった記憶がある。あの時に書かせてくれた先生も、わたしに行動で「教えるということ」をなさっていたのだなあと、名前も顔もおぼろげにしか覚えていない先生に対して、十数年ぶりに感謝の念を感じた。

13.ひきだしにテラリウム

 職場の新卒に「この場にいる誰も知らないというかもしれないが、自分の中ではとても好き!と言える漫画って何かあるか?」と訊いたら、「九井諒子さんの短編集」と言っていたので、その日の帰りに買って読んだ。九井諒子 で調べようとすると、「天才」とサジェストされる。確かに天才である。
 一読して、読んだことのある漫画がいくつかあることに驚いた。多分Twitterで流れていたんだろうな……。
 どうでもいいことをまた一つ。女性が「不思議ちゃん」とラベリングされることがあるが、それは本人が「お前になぞわたしの人格を把握されてたまるか」あるいは「お前はわたしの人格を理解はできない」と思っており、説明の少ない行動をしているだけということが結構あると思う。「不思議ちゃん」とラベリングしてくる人間は、「自分はこの人の行動が理解できません」と言えないから相手に責任転嫁してくるのである。「エロい女」とかも同様の言葉だ。南無〜。

14.裸一貫! つづ井さん2

 発売日の夜に買って読んだ。これを女性の連帯ものと読む向きには賛同できないが(そもそもわたしは真に人と人とが連帯できるとは思っていない気がする)、好きなんだ……。 単純にやっていることが面白いから。わたしも友達がほしい。

 やはり休日は日記を書いたり読書記録をつけたりする過ごし方が一番楽しい。新型コロナウイルス以降、飲み屋に行くという選択肢がほとんどなくなって、かえって精神的には健康になっているかもしれない。居酒屋でテキトーな下ネタで盛り上がるのも楽しいけどね……。
 来週は「女性にまつわる本」をいくつか読みたいな。これから本屋に行くので、まだまだわからないが。本はエンカウントが大事。

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