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「読書日記#2」〜沢木耕太郎の沢木耕太郎による沢木耕太郎のための大人の童話〜春に散る・沢木耕太郎

運動神経が悪くスポーツは苦手なのになぜかスポーツノンフィクションが好きで昔から良く手に取っていた。山際淳司の「スローカーブをもう一球」と前後して手に取ったのが、「破れざる者たち」。衝撃的でした。それから彼のノンフィクションを次々と手に取った。だから僕にとっての沢木耕太郎はバックパッカーのバイブルからではなく、ノンフィクションの作家。

沢木耕太郎がロンドンまで1年に及ぶ旅に出たことは彼のエッセイで知っていたし
20代の僕の旅に少なからず与えたことは否定しない。ただ、深夜特急はまだ第3便が出ていない頃で、しかも単行本だけだったので学生の僕には手が出なかった(ちなみに社会人になって初めて単行本を買う機会に恵まれた時に買ったのが深夜特急のはず)。むしろ「路上の視野」の中のエッセイが旅の友だった。

そんな思い入れの深い沢木耕太郎は今でももっとも好きな作家の一人。この「春に散る」のことも知っていたけれど、以前彼が書いた小説も少し違和感が残ったこともあり手に取ることはなかった。

で、今回手に取るきっかけになったのは機内で見た映画。見にいこうか迷っているうちに上映が終わってしまったので、ちょうどいい機会だった。映画自体は良作だったし、ボクシングシーンは迫力があった。ただ、予定調和的な部分と説明不足の部分が気になって原作を読んでみることにした。

映画と原作は別物だった。映画は原作の後半部分のボクシングシーンを描きたかったに違いないと思った。

原作はというとこれは大人のさらに言えば人生の最後半に差し掛かった男の童話でした。前半はそうでもないけれど、後半はその感じが強い。人生に困っている時に手を差し伸べる人物が出てくる。昔の仲間たちとの思いがけない再会と共同生活。都合よく現れる若いボクサーに自分の「必殺技」を次々に授ける仲間たち。世界戦。網膜剥離。特殊な能力のある女の子などなど。

読ませる力もあるし、つまらないわけではないんだけど、詰め込まれている材料と淡々と乾いた沢木耕太郎の文体が僕にはミスマッチで、合わなかった。偉そうで申し訳ないけど。ただAmazonでの評価も高いので気になる人は手に取ってみるのも良いと思います。

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