【転載】 Vol.2 おいしい椎茸の食べ方を考える
実家で暮らしている母は『自作』が得意な人。生まれと育ちは大阪府。父の転勤に伴い、神奈川県へ移住。そこで僕を生んでくれました。職業は主婦。仕事は家事全般。外食が苦手だった父のこともあり、家でのごはん率は、ほぼ100%。家族で外食した数も、僕の記憶の中では片手で収まる範囲。たまに食卓へのぼる手の込んだ料理も母の自作。加えて、僕の着ていた服も、母のハンドメイドのものが多く。母曰く、苦にならないからと。それらのエピソードが、母のことをそう思う由縁です。
聞けば、母方の祖父も自作の人でした。生業はオーダーメイドの仕立て屋さん。そういえば、母方の親戚にはクリエイター気質な方も多いです。そのためか、僕も写真が好きで、椎茸の栽培も好き。もちろん、料理も好き。おそらく、僕も自作に幸せを感じる人。椎茸料理の試行錯誤も、仕事ではなく趣味の範疇でした。そこで覚えた美味しい椎茸の食べ方を、皆さんにもご紹介したいと思います。
まずはシンプルに『網焼きしいたけ』。
椎茸の足を切り、笠の内側を上にして、中火か弱火でじっくり焼いていきます。家では魚焼きグリルか、オーブントースターの使用がお勧め。椎茸はひっくり返さず、笠の内側に水が出てきたら食べ頃。味付けは、ちょっぴりの塩。当農園の椎茸は、旨味成分であるグルタミン酸が豊富に含まれていることが特徴です。それを楽しむためには、バターや醤油ではなく、薄めの塩をお勧めします。
次にご紹介するのは、『椎茸のオリーブオイル炒め』。
フライパンにオリーブオイルをひきます。薄くスライスしたにんにくを投入。焦がさないように弱火で火を入れていきます。にんにくの良い香りがしてきたら、1cmほどの厚さにカットした椎茸を加え、じっくりと中火で火を入れていきます。椎茸にすこし焦げ目が付いたら味付け。塩と胡椒、乾燥タイムもしくは乾燥ローズマリー。軽く火を通して完成です。
これだけでも美味しいのですが、これをベースに他の具材を追加すると、椎茸の旨味で他の食材も美味しく食べられる料理となります。お勧めする食材は、じゃがいも、パプリカ、ニンジン、長ネギ、etc。ベーコンやソーセージなどの加工肉とも高相性。裏方に回ったときの椎茸を楽しめる一品です。
ここで一つ、椎茸の足について。
軸とも呼ばれている部分ですが、基本的には食べられます。ただ、先っぽの石突と呼ばれる部分は、固くて食べられません。足の部分も笠に比べれば固いので切り方に工夫が必要な場合もあります。お勧めは、笠と足の長さが等しくなる切り方。笠と足は切り分けるよりも、一緒にしておく方が見た目も良くなります。是非一度、お試しください。
さて、話を戻して次に紹介する椎茸料理は『椎茸のクリーム煮』です。
まずは、大きくカットした椎茸をフライパンで焼いていきます。 油は、サラダ油でもオリーブオイルでも可。 焼きあがったら一旦皿へ。 次に、フライパンでバターを溶かし、薄くスライスしたタマネギを炒めます。 タマネギがしんなりしたら、薄くスライスした椎茸を追加。焦げないように炒めます。 椎茸もしんなりしましたら、薄力粉をバターと同じ量だけ追加して、よく炒め馴染ませます。 牛乳を追加し、とろみがつくまで火を入れていきます。 ここで、さきほど火を入れた大きめカットの椎茸を戻します。 味付けは、塩と胡椒、すこしの白ワインと乾燥タイム。1~2分くらい煮込めば完成です。
椎茸の美味しい食べ方を考えたとき、煮るという調理方法は省いていました。けれども、当農園の旨味が豊富な椎茸は、煮てもその力を発揮してくれます。通常、煮込み料理では旨味の元となる出汁が重要になってきますが、そこを椎茸が賄ってくれるというわけです。バターやミルクの強い味にも負けない生椎茸由来の旨味を楽しめる一品となってます。
最後は、すこし行儀の悪い食べ方もご紹介。
まずはピザ生地を作ります。強力粉600g、水360g、塩12g、イースト6g。材料を混ぜて、捏ねて、一次発酵は45分を2回で、間に1回のパンチ。4等分して、丸めて、休ませておきます。トマトソースは、細かく刻んだにんにくを、オリーブオイルで香り出ししてから、ホールトマトを追加。赤ワイン、バルサミコ酢、塩、乾燥バジル、乾燥オレガノ、乾燥ローリエを加えて煮詰めていきます。ピザ生地を丸く伸ばし、そこにトマトソースを塗る。石附を取った足つき椎茸を、縦に厚さ3mm程度に切って、トマトソースの上に並べる。ラクレットチーズをトッピングし、250℃に予熱したオーブンで12分焼けば、椎茸ピザの完成です。お好みで生バジルのトッピングをどうぞ。
このピザは、椎茸が大きすぎるので食べずらいです。2口目ぐらいで、生地はそのままに、上の椎茸だけずるっと食べてしまいます。ちょっと、お行儀は悪いです。けれども、これがおいしい。トマトソースとチーズの油と旨味を吸った椎茸だけを、ずるっと。あまり大きな声では言えませんが、とても美味しい食べ方なので、是非、試してみてほしいです。
おいしい椎茸の食べ方は以上です。
他にも椎茸料理はたくさんありますが、当農園の椎茸を大いに楽しむことができる料理は、この4つだと思います。あくまでも『椎茸をおいしく食べる方法』ではなく、『おいしい椎茸を食べる方法』です。そして、食べることはもちろん、作る楽しさも運んできてくれるのが椎茸。この楽しさを皆さんに届けられたら、農家としても嬉しく思います。