バカなの?

医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は11ヶ所目。赴任してから1ヶ月が経った。住まいはアパートの3階。となりにはコンビニがある。ついつい利用してしまう。料理は好きだが、疲れているときはありがたい存在だ。だが若者の溜まり場にもなっていた。ボンタン、短ラン、エナメルベルト。様々な場所で暮らしてきたが、ここも個性が溢れる土地の様だ。

仕事場までは車で20分の距離。ほとんどが渋滞の待ち時間。ここは住宅地だが、今までのところと比べれば、一番の都会と思えた。スーパーや公園の駐車場も有料である。すこし窮屈とも思える場所だった。

当初、僕は1人で仕事をしていた。別会社から委託業務を引き継ぐためだ。風当たりが強いと思われたが、そんなことはなく、淡々と業務を引き継いだ。その間にオーナーとも仲良くなれた。

うちの会社の担当営業は部長ではなかった。だが知っている顔である。僕が3ヶ所目の『陸の孤島』と呼ばれる事業所を後にするときの後釜だった英語の特異な英語兄さん、その人である。その後、営業職に移ったそうだ。

彼は変わりなくバカだった。オーナーは女好きだ。口も達者。冗談で言った『若い女を揃えろ』の言葉を、英語兄さんは鵜呑みにした。案の定、配属リストをオーナーに提出すると、普通にクレーム案件となった。

『あいつバカなの?』。オーナーの言葉である。僕は代わりに謝っておいたが、配属リストを見せてもらうと、僕も同じ気持ちになった。新卒女子6人と僕。仕事が上手く回るわけがない。偏りすぎだ。速攻で僕からもクレームを入れておいた。

結局、僕と中堅男子、新卒男子1名+新卒女子2名、そこにおじいさん1名を加える座組となった。これはこれで大変だった。はじまってみれば作業が全然終わらない。新卒組が多いからだ。業務というよりは研修に近い。これには僕の残業で対応する。けれども2週間で戦力となり、僕の残業も減ったのである。

けれども、まだまだ戦力が足りない。どうやら見積もりを間違えていたようだ。戦犯は取締役。英語兄さんの上司だ。どう考えても人が足りないのである。

前の業者は15人で作業にあたっていたそうだ。それを作業の効率化で6人まで圧縮する予定だったそう。うすうす気づいてはいたが、やはり無理だったのである。

対応は直ぐに行われた。僕の試算だとプラス3人。欠員対応を含めての人数だ。パートの募集をかけると直ぐに集まった。新卒女子よりも更に若い3人。結局、50代1人、30代の僕、20代6人、10代1人。男3人、女5人の座組となった。

2週間もまわせば軌道に乗る。残業はおろか3時の休憩時間も取れるようになった。僕がスーパーサブの位置にいるので、有給取得も容易だ。普段の業務は個別に手伝いながら雑談するスタイル。北海道のときと同じシステムだ。それがなんだか心地よかった。

だが、配属リストの一件で、オーナーの英語兄さんに対する評価は下がったままだ。他にもいろいろとやらかしている。その度に謝る僕。おかげで僕の株は上がりっぱなしだ。

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