ラムと蝦蛄とカワハギ肝付

北海道での生活は1ヶ月が経った。あいかわらず料理は好きでやっている。だが、ここに来たからといって毎日の食事情は変わらないだろう。そう思っていたが、その通りだった。

奮発すれば北海道らしいものは食べられる。けれども、毎日ウニ・カニ・イクラを食べられるわけではないのだ。カレー・からあげ・ハンバーグ。焼き魚・煮魚・ときおり刺身。現実はこんなものである。

だからといって何も変わっていない訳ではない。例えばラム肉だ。近所のスーパーのせいかもしれないが、僕のレギュラー食材となっている。いつも大量に売られていて、しかも安い。売り場面積も豚肉に迫る勢いだ。完全に第四の動物性タンパク質の座に着いている。

故に仕事場に持っていくのは、もっぱらジンギスカン弁当だ。ラム肉をフライパンで炒める。脂が出るので、味付け前にキッチンペーパーに吸わして取り除く。味付けは『ソラチ・特撰成吉思汗』で間違いない。お弁当用なので水分は飛ばしている。付け合わせはピーマンが多い。細切りにして塩炒めにするだけだ。加えて卵焼きを添える。立派なジンギスカン弁当の完成だ。

もちろん家ではジンギスカンもやる。専用の鍋も購入した。ホームセンターに行けば大量に売られている。本当に地元食として定着しているのであろう。ここでの野菜は『もやし』だ。圧倒的に旨い。いくらでも食べられてしまう。ラム肉は太らないと言われているが本当なのだろうか。歳のせいもあると思う。僕の体重は絶賛増加中だ。

漁港の朝市にも行ってみた。到着したのは11時。朝市は閉店寸前。売り切れが多い。だが蝦蛄は大量に売られていた。店員さん曰く、蝦蛄は海老と蟹のいいとこ取りらしい。安かったので大量に買ってみた。

家に帰って蝦蛄と格闘した。殻剥きが大変なのである。教えられた通りに挟みで切っていく。すると回転すし屋で見たことのあるフォルムになった。食べてみると回転すし屋のそれとは別物だった。美味しい。たしかに海老と蟹のいいところ取り。これは癖になる。大量にあった蝦蛄も、その日で無くなってしまった。やはり北海道は美味しい。

すこし遠くのスーパーへも行ってみた。そこは魚介に力を入れている。以前もその方向性のスーパーへ通ったことはあったが、どこも良い店だった。そこもそう。そして北海道らしさも持ち合わせていた。

ウニ・カニ・イクラはもちろんある。北海しま海老、たこあし、八角も。聞いたことのない魚もたくさんだ。『肝付カワハギ』なんてものも置いてある。もちろん生食用。350円。いろいろとバグっている。もちろん購入した。家で食べてみたが、絶品であった。すべてが美味しい方の鮮魚である。

やはり北海道。探せば日常でも道外民を驚かしてくれる。札幌の市場へ行く必要も無いのだ。引越してよかった。あの日、本社会議で『行きます!』と言った僕を白い目で見ていた同僚に言いたい。「僕はしあわせだ」。周りと違う人生を歩むということは、こういうことなんだと思う。



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