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バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。

「バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。
心豊かであろうから。私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。
それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。」

ダンバイン完走してしまった。
めちゃくちゃ面白かった。
キャラクター、メカニック、ストーリーの3つに焦点を絞って語っていこうと思う。

キャラクター

ダンバインは魅力的なキャラクターがたくさん出てくる。個人的には男性キャラだとバーン・バニングス、女性キャラだとエレ・ハンムが好き。

バーン・バニングス


バーン・バニングスは主人公ショウ・ザマのライバルキャラ的な立ち位置なのだが、やられてばかりで組織での地位も失墜し、遂には黒騎士と名乗り仮面を被るようになる。(仮面被っているのに明らかに周りに正体がバレバレなのが面白い。)
ハッキリ言って作戦も失敗続きだし、ショウとの対決もやられてばかりでめちゃくちゃカッコ悪い。そして、プライド激高人間なので、ショウとの対決で負けると泣くし、逆恨みするし、溺れかけていた時に助けてもらった船の人達に感謝の一つも言わず、更にはその船が沈んだときには安堵の表情を浮かべていた。
これだけ書くとめちゃくちゃクズにしか見えないが、そんなバーンが自分は嫌いになれない。自分と近しいものを感じたから。自分も高専時代に留年した時に新たなクラスに始めて来たときにお前らなんかに助けてもらわなくても上手くやるわと思っていた時期があった。さらに、留年した事実が恥ずかしぎて学校で仲良くしていた友達にも会うのも恥ずかしい時期があった。だから、バーンが仮面を被ったのも分からなくもない。人間失敗続きで恥ずかしいときは例え周りに正体がバレバレでも仮面を被りたくなってしまうのだ。
人間は失敗続きで適切なケアをしてくれる人間がいないと拗らせに拗らせて変になってしまうので、バーンは周りの人間に恵まれなかった悲しい人だなと感じる。バーンのプライドを傷つけない程度にケアしてくれる恋人なり、友達なりいたらバーンの予後も違っていたんじゃないかと思う。
どこまでも利己的な人間だったのには変わりないが、自分の境遇と似ているのでなんだか嫌いになれなかった。

エレ・ハンム

エレ・ハンムは自分の爺さんが死んでしまったので、仕方なく女王になってしまって、なり立ての頃は地位に対して覚悟が足りていなかったので、周りから色々励まされることも多かった。しかし、回を追うごとに女王としてのプライドを身につけていくようになる。地上人トルストールと恋したりしていた普通の少女だった彼女が女王となり、そして、最後には己の命を賭してバーンのハイパー化を止めるようになるその彼女の成長物語がとても好き。初めて見た時はなんつー髪型してんだと思ったけれど、女王として成長していく彼女が好きになっていった。普通の少女として過ごしていた時期もあるからなのか、女王としてのプライドが身についてからもどこか柔らかな雰囲気を漂わていて、最初から女王然としているシーラ・ラパーナよりも親しみやすい感じがするのも好き。

少し話が変わるが、キャラクターデザインを手掛けた湖川友謙さんの描く絵は本当にいいなと今回ダンバインを観て改めて思った。
ダンバインの出てくるキャラクター達が生き生きとしてみえるのは湖川さんの力が非常に大きいのではないかと思った。
マーベル・フローズンのようなアメコミ調の頬骨がカッチと出ている西洋の女性を描けるのは湖川さんしかいないのではないかともダンバインを観て思った。

メカニック

ダンバインは登場するメカニック全てがカッコいい。
ダンバインは異世界が舞台の作品なので、現実にあるようなデザインだと逆に違和感が出てしまう。しかし、ダンバインにはそういう現実的なデザインのメカが一つも出てこなかった。
ダンバインでは、地上世界でオーラバトラーと現実の兵器が戦うシーンが数多くあるが、実際に地上世界の兵器のデザインと比べてみると本当にこのマシーンは異世界から来たと観ている人に納得させるデザインになっている。
特に戦艦グラン・ガランを初めて観たときに「ああこれは地上人では絶対に思いつかないデザインだな」と思った。
ちなみに自分はビルバインがオーラバトラーの中で一番好き。
ダンバインファンの中でも賛否両論あるデザインらしいけど、異世界の異形のオーラバトラーの中で、赤と白のヒロイックなデザインがいい意味で浮いていて、いかにも主人公機という感じが自分はいいなと感じた。
最終回目前で突然色が塗り替えられていて地味な色になっていて、せめて一言観ている人に説明が欲しかったし、なんなら自分は最後まであの赤と白ままで戦って欲しかった。

ストーリー

ストーリーは結構複雑で見てて「?」となるところが何箇所かあった。
大筋は地上人ショウ・ザマがバイストン・ウェルに来て、聖戦士になるというものでそれだけなら簡単だが、その周りのバイストン・ウェルの様々な人達の様々な思惑が交差するので、自分は一周しかしてないので、そこら辺を把握できていない。
富野作品あるあるだが、日常会話の中でサラッと重要なことを話すことがあるので、気を抜いているといつの間にか事態が進展しているということがある。複数の勢力の様々な思惑が入り交じり、また、組織も一枚岩ではないというところはZガンダムっぽいなと感じた。
政治的な話だけでなく、強大なオーラ力は制御できなかればいずれ己を身を滅ぼすという哲学的な話も含まれている。
物語後半の強大なオーラ力をどうやって制御していくか奮闘するショウ・ザマも私は結構好き。

まとめ

ダンバインはめちゃくちゃ面白かった。
作画も丁寧だし、お話も面白いので是非色んな人に見て欲しい。
まだ異世界という概念があまり浸透してない頃の日本でこの題材のロボットアニメをやろうと思った富野由悠季監督には頭が上がらない。


余談

オーラバトラーのハイパー化はZガンダムみたいだなと感じた。
順を追って富野由悠季監督作品を観ているが、ファーストガンダムとZガンダムの間の作品の色んなところに後のZガンダムのエッセンスが散りばめらられているということに気づいてきた。
いきなりファーストガンダムのあとにZガンダムを観るから混乱するのであって、その間の作品を見ればZガンダムを観てもファーストからの変わりように驚かないのではないかと思った。

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