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瀬戸際だ【ショートショート#67】

 瀬戸際だ。今日もどうでもいいことの瀬戸際にいる。妻はお酒を飲んで寝ると鼻の通りが悪くなるのか、閉まりの悪い弁から空気がプシュプシュと漏れるような音を立てた。聞いているだけでこちらが苦しくなる。

 やめればいいのにやめてしまうと私には怠惰だけが残ってしまう。誇れるものが何もなくなってしまう。それを受け入れることができそうにない私は、やめずに今日もこうして書いている。

 今日は電動刈り払い機で伸び放題の草を刈った。しかし生産的なことはしていない。ネットで映画を見て、図書館で借りた本を少しだけ読んだ。買ったばかりの一袋のかりんとうをその日のうちに食べ終わってしまった。前腕の筋トレをした。時間は流れずに細切れで過ぎていく。記憶にない時間はないも同然のように感じた。ゴロゴロしていると時間は収縮した。

 私はどうしてこんなにも怠惰でいられるのだろうか?怠惰が人間本来の生き方なのではないかとさえ思えてしまう。純粋に怠惰でいられるのなら、時間の概念はなくなるだろう。歳はとるけど時間はなくなる。それも人生なのに洗脳された脳はそれを受け入れはしない。

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