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破壊と癒しのブルドーザー
ブルドーザーが、ダンプトラックが運んでくる土を、平にならしていくYouTube動画を、ついだらだらと見てしまう。
それは東南アジアのどこかの国で撮影された映像で、現地の人がドローンを何台も飛ばして空中から撮影し、YouTubeやFacebookなどに投稿している。それをオレのような人間が三〇分、一時間とついつい見てしまう。
そんなものを見るヤツがいるのか? と思われるかもしれないけれど、その映像に対して世界規模で需要があるのが、ビデオの本数と再生数でわかる。
埋め立てられているのは、大概が湿地帯や大きな沼地のような場所で、一〇トン以上のダンプトラックが、列をなして土砂を運んできては、荷台を傾け、黄色い土や赤い土、灰いろの土とともに一メートルはあるような岩も一緒に流れ落とす。
水草が生い茂る湿地帯は、圧倒的なパワーになすすべもなく、その様子を更地へと変えていく。
オレは、その破壊と暴力に心を痛めながらも、同時にその単調な作業風景に心癒されている。ただひたすらに、近くの自然豊かな山から削り取られたであろう土砂を、自然豊かな湿地帯に運び、土砂をブルドーザーが押し広げていく。
たぶん、世界中で似たようなことが日々、一瞬も止まることなく、猛スピードで行われているのは、容易に想像できる。
とてつもない破壊である。
だけど、破壊された自然の上に、建物が建ち、人々が住んでしまえば、その風景に痛みを感じることはない。
現に今、オレたちが住んでいる場所の全ては、元々、大自然であった。地球にはそれしかなかったから。
むかしに破壊され、多くの生き物が殺された場所に住んでいるオレが、いま破壊されている東南アジアのどこかの埋め立て地を見て、なんてコイツらは酷いことをしているのだ、と考えるのはお門違いに思える。
もちろん、もうこれ以上、地球を壊したくはないし、壊してほしくはないが、オレたちに、いま地球を破壊している人を非難する権利はない。
オレは、ただ、全てにたいして心痛めながら、傍観することを選ぶ。