糞クローン

人間が嫌いだ。でも友が欲しい。ベルサイユ条約の制定から悩んでいた俺は一つの回答を思いついた。クローンを培養すること。
しかし人間が嫌いな俺は人のクローンでは友と呼べない。己と共に暮らしたいともボルヘシアンではないので思わない。それならば好物を培養しよう。糞しかない

それからのことを説明する義理はない。
糞の伝手で文字通り糞以下の奴隷が産まれた。
愛のない部屋に夕陽が差した。
俺たちは人目を嫌い二人で部屋で過ごした。
何不自由ない生活を送れると思っていた。その時は

用事を思い出し糞と街を歩いた。世間からの好奇の目があった。糞から産まれたことなど誰か気づくか。多様性とは差別を乗り越えることではないのか。しかしあらゆる事はまさしくまさしく今起こる。
移動のため糞と電車に乗った。
街中で感じていた視線がより強くなる。天然パーマで165センチはありそうで気の強そうな中年女性が体調を気遣い話しかけてくる。物腰は意外と柔らかかった

糞は俺の許可なしでは話せないためこちらを向いて話していいか合図を求めている。

俺は小さく頷いた。

糞は周りに迷惑にならないように小声で平気だと答えた

その瞬間天パ女が叫んだ

「きゃ、やめてください、ちょっと」

虫を払うように手を振り回している

なるほど、こいつは臭いのか。
俺は糞好きで臭いも好きなため、他人が嫌がることを忘れていた。愛のできた部屋に戻ろう

自宅に帰り俺は糞を強く抱きしめた。俺だけが愛し理解している糞を。あまりの強さに糞から糞がホイップクリームのように出た。衣服を着ていたが身体が凹んでいく感覚といつもより強い臭いで分かった。

糞は恥ずかしそうにしているが俺は目を逸らさない。
「人間も糞をするんだ。お前は糞だろう。糞をして当然だ」

糞から出る糞は何よりも硬く見えた。

夕陽はいつか朝陽に変わり、その目元からは一筋の糞が流れていた。


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