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港区立みなと科学館で風水害のお勉強

 桜が満開の頃、港区立みなと科学館に行ってきました。地下鉄を乗り継ぎ、虎ノ門ヒルズ駅から徒歩約5分。地下鉄に乗ったのは、思い返せばコロナ禍になってから初めて。虎ノ門ヒルズの駅も初めて。さらには同科学館も初来館。事前予約制だったので前々から予定はしていたものの、久しぶりのドキドキ感がありました。

 ここを訪れた目的は、防災気象講座を受講するため。「みんなで学ぼう!大雨・台風・気象災害から身を守る」という講義が、1時間半の内容で開催されました。気象予報士の先生が講座を担当されていて、しかも参加費無料!港区民ではありませんが、このようなお話が聞けるなら是非と思い、お花見には目もくれず一人電車を乗り継ぎ春の都心へ向かいました。

 科学館には迷わず到着できました。アルコール消毒と検温を済ませ、講義会場の実験室へ(※実験はなく座学です)。部屋の中は学校の理科室そのもの。大きな黒いテーブルと丸椅子が並んでいて、学生時代の記憶が蘇る懐かしい空間でした。参加者は男性の方が多く、中学生以上が対象でしたが比較的年齢層は高めの印象でした。


 講義の内容は、雨を降らせる積乱雲の解説に始まり、台風、集中豪雨、ゲリラ豪雨、線状降水帯発生のしくみ、竜巻や雷のこと、過去の災害事例の紹介、災害から身を守るための心得や活用できるツールの紹介、ハザードマップの見方など。個人的には、防災士の資格を取るときに学んだことと重なる部分も多かったので復習にもなりました。しかし防災士で勉強したことを忘れていて、この講義の中でクイズ形式で出された問題を間違えたのはナイショです(苦笑)

 講義の中で特に印象に残ったことをいくつか挙げようと思います。まずは積乱雲について。積乱雲というのは、1つ5〜10kmほどの長さで1時間程度の雨を降らせるのだそうです。発達した積乱雲が壁のようにいくつも渦の周りを取り巻いた状態が台風、また50〜100kmほどの長さにたくさんの発達した積乱雲が連なると線状降水帯となって大雨をもたらします。

 積乱雲1つの長さを考えると、雷が光ってから10秒くらいでゴロゴロと音が聞こえてくる状況でも、実は安全とはいえないこともお話の中に出てきました。音速=340m/秒なので、10秒だと3.4km。5km〜10kmの長さがある積乱雲の中にもういるか、かなり近いところに迫ってきていることがわかります。雷が鳴ったらそろそろ雨が降るかもしれないと経験的に知っていますが、科学的な裏付けを知ることができました。

 既にご存知の方も多いと思いますが、雷で注意なのは高い木に近寄らないことです。雷が高い木に落ちると、木よりも人体の方が電気を通しやすいため、電気が木から人に飛び移って、側にいる人間も雷に打たれます。これを側撃雷というそうです。

 また大雨が上流で降ると、水位が短時間で急上昇するため中州に取り残されたり、流されてしまったりする危険もあります。川から水が溢れて浸水が始まると、用水路と道路の境目がわからなくなり用水路に誤って転落して流されてしまう事故も起きます。そのため、事前に天候変化の情報や兆候をつかみ、早めの避難をすることが必要になってきます。

 そこで紹介されていたのが、避難の判断にも活用できるツール「キキクル」という気象庁のシステムでした。キキクルは「大雨・洪水警報の危険度分布」の新しい愛称で、2021年3月17日に発表されて運用も始まっています。名称は公募で決定し、”危機が来る” に由来しているそうですよ。パソコンからでもスマホからでも全国の土砂災害、浸水害、洪水の危険状況がリアルタイムで確認できるので、活用していきたいなと思いました。

キキクルのサイトはこちら。知りたい地域を選択できます。

 具体的にいつまでに避難ができるといいかというと、先生がおっしゃるには、キキクル上で赤色(警戒レベル3相当)、遅くともキキクル上で薄紫(警戒レベル4相当)では避難を完了させていたいということでした。キキクル上で濃い紫になると、既に災害が起こっていてもおかしくない状況で避難するのは困難なので外に出るとかえって危険です。

 警戒レベルについての詳細は気象庁のホームページでも解説が載っていますので参考にしてみてください。

 また、警戒レベル4というのは自治体から避難勧告・避難指示が出る状況ですが、2021年3月5日に災害対策基本法の改正案が閣議決定されたことを受け、今後は避難勧告が廃止されて避難指示に一本化されることが決まっています。梅雨ごろまでの施行を目指しているようなので、今後の情報にも注意したいところです。


 一通りの講義を終えたあと、防災を考える、伝える上での課題も感じました。結局参加しているのは防災に興味のある人ばかりではないか?本当に伝えなければいけない人は他にもたくさんいるのではないか?その証拠に参加者の中で若年層の姿は少なかったですし、関係者のような方もいらっしゃいました。わざわざ足を運んで話を聞く形式では、防災にそこまで関心のない方を巻き込むことに限界があるような気がしました。

 それから、災害発生の科学的しくみや知識は持っていると役に立ちますが、災害の話ばかりだと防災の性質上どうしてもプラス思考にはならないのです。このnoteでも「〇〇が起こることが予想されるので〇〇をしておくと良いでしょう」みたいに対策を書きますけど、何か不測の事態が起こることを想定して話が進むので、恐怖の情報提供ばかりになりがちです。私がこうして書くことを続けるにあたっても、恐怖ばかりではなく実用的な面も交えながら、できれば楽しく防災を伝えていきたいと思いました。

 とはいっても、講義に参加して良かったですし、自分のためにもなってしっかりと勉強して帰ってこれたので満足しています。防災士としても、一個人としても情報のアップデートを続けていけたらと思う次第です。

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