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書くつもりなかったけど書き留めておきたいと思った、私の観た「ゴースト&レディ」初演の話

はじめに。


初めて観たときから、がっちり心を掴まれてしまった。
でも、観劇記録みたいなものを書くつもりは全く無かった。

劇団四季2024年の新作オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』。
7月に初見、そして9月にもう1度。
1回目は相方と、2回目は姪っ子と。(そもそも、こんな短期間に同じ舞台を2度も観ようとしたのは初めてだ。)

初観劇の後、片道約2時間の帰途中、相方とずーっと感想や解釈を語り合い、それでも飽き足らず、夜こどもを寝かしつけ後さらに2時間以上も延々と余韻を分かち合っていた。

私は一体この舞台の、何にそんなにも惹かれたんだろう??・・・

自分でも不思議なまま、答えを探そうとするかのように、原作者のファンだという姪っ子を誘って観に行ったり(別バージョンキャストもぜひ見てみたかったので狙ってチケット取った)、他の方々のnoteやブログなどで観劇レビューを拝読しつつ、自分の観た記憶とあわせて脳内再生してみたり。
サントラCDを何度も聴いて家や車で熱唱しまくっていたら、小1の息子も歌を覚えてしまった。
(「ゆーこーお一ボリビアへゆこ~♪」と歌っていた。南米か!笑)

でも、それについて書こうという気はなかった。
年が明けるまでは。

新年早々、私が最初に観たときに主役の二人を演じていた、真瀬はるかさん、金本泰潤さんが揃って劇団四季を退団されたことを知った。

あぁもうあの方たちが演じるフローとグレイには会えないんだなぁと淋しく思う一方で、自らの信じる道を選択されていったお二人がフローとグレイに重なるような気がした。

・・・だからなのか。大好きになった舞台の「もう2度と会えない」フローとグレイを心に留め、自分の気持ちを前に進めるために、初回観劇の記憶を書き留めておかねば、と無性に思った。
(noteはもう4年くらいほっぽっておいたままだったけど。)

そんな訳で、どうか今しばらくお付き合いくださいませ、私がみた劇団四季『ゴースト&レディ』の話。

※記憶違い、勘違い、私の想像や妄想など混ざっていると思われます。観劇前後に触れた、他の方の感想や解釈にも影響受けているところがあるはずです。
お気に召さずば、どうかご容赦をm(_ _)m

「自分の心を偽って生きていくことはできない。」


まずは、舞台が(文字通り)舞台だというところが痺れるじゃないですか。芝居好きのための芝居かっ!?、みたいな。
「新作の初日にゴーストが現れるとその芝居は大当たりする」という設定自体、「この舞台が大当たりしますように!」という願掛けになっているようで何だか笑える。いや、本当にそう願って創ったに違いない。(妄想)

独り登場するシアターゴースト、グレイ。
最初の導入が肝心。いきなりお客との掛け合いが嬉しい。チャーミングなゴーストに導かれ、あっという間に物語の世界に誘われていく。

余談ですが、相方はミュージカル『アラジン』のジーニ―を思い出したそうで。『アラジン』をまた観に行きたいのはジーニ―に会いに行きたいからだとも言っていた。「このゴーストにもまた会いに来たい」と言っていたけれど。

そしていきなり、フローさんのアクセル掛かった歌が始まる。ミュージカルっぽい!笑。
(半年以上前に『アナと雪の女王』観て以来のミュージカル・・・)
ついていけないか?!と一瞬ひるむも、展開早く、話がどんどん転がっていく。歌の力も相まって、細かい所を疑問に思う間も挟ませない。歌パワー凄!

場面変わって、フローの家へ向かう馬車の中。
二人のガタガタ揺れ周期が合っていて、しかもコントか!と思うくらい結構大きく弾んでいてかなり可笑しかった。
何というか全編通して絶妙なユーモア加減。

そしてゴーストたちのコワくてユーモラスな激しいダンス。異次元に来ちゃったかな・・・感。
さらにするっといなくなっちゃう神出鬼没なグレイ。あ、飛んでっちゃったーっ・・・

それからど―した?と、どんどん展開していくので、睡眠不足でコックリしないか心配していた相方も私も、途中全然眠くならなかった。



さてフローの家での父母姉とのやり取り、当然大反対を受ける。
大真面目で本気でいかる家族と、静かに強い決心を保ち続けようとするフロー、完全に芝居見物のグレイ。
悲劇と喜劇は表裏一体。
(このシーンは特にお姉さんが強烈過ぎて、私は大好き。魂を麻痺されててもこわーい!笑)

許婚からの求婚を断ったフロー。それでも、どこか心は揺れ惑っているようで。
強い情熱と使命感に駆られたかと思うと、ふと不安定で不穏になる。
そこが妙にリアルで、自分の隣にもいそうな(何なら自分かもしれない)、等身大の共感できるナイチンゲール。
どこか陰を感じる表情と佇まいが魅力的で、陰があるからこそ光もより際立って、物語が進むにつれ徐々に彼女の魅力に引き込まれていった。

一言で表現するなら「ゆらぎ」。
物語の舞台はイギリスを起点としているにもかかわらず、実に日本的な作品だなぁと思った要因の一つかもしれない。

そして、フローとグレイの間で運命の約束が交わされる。「絶望したら殺す/殺される」、この約束が2人を結びつけていくことになる。一種の腐れ縁。


さていよいよ戦地へ。
フローの不安な気持ちを鼓舞するように、CMにも使われ耳に馴染みかけの曲「走る雲を追いかけて」が力強く歌われ(そうそう、この昂揚感!)、私たちも一緒に船出する。
地図を辿ってゆく演出が面白い。と同時に、現在進行形の戦争のことが頭をよぎる。

戦地の病院では初っぱなから「女の助けはいらん!」と拒まれるが、フローの機転で何とか乗り越え、負傷した兵士たちの看護にあたるようになる。

立ちはだかる壁が目の前に現れると、(さすがにダメか?どうする?・・・)一瞬よろりとしては、しぶとく何度も心を奮い起たせ、使命を胸に邁進していくフロー。
反面、決して超人ではなく、いつ本当に絶望するかもしれない、という危うさもうっすら感じさせる。
しかし傷病兵や他の看護婦たちの前では明るく、頼もしく、包容力のある看護団長であり、それもまた本物の彼女の姿なのだと思う。

私が大好きなのが、看護婦たちが病室を綺麗にし、傷病兵たちのお世話をしていく場面。
音楽とともにささやかなクリスマスのお祝いをするシーンが挟まれ、とても愉しい。

賑やかにやりすぎて(笑)一度は諌められるも、フローは笑顔でこう歌う。
「世界一効く薬は生きる力、それは希望。」

この歌詞を聞いて、私は何度も心の中でうなずいていた。
そうだ、どんなに苦しいときにだって希望がある。
日々の中の些細な喜びや、未来への望み。それが今をきちんと生ききるための力になる・・・
物語と歌と役者さんたちのパワーを借りて、その本質が染み通ってきた気がして、つい目元にじわっときてしまった。


一方、基本的に傍観者スタンスでお気楽なグレイ。
真面目で頑張り屋の彼女の、自分にはない部分に、理解できないと思いながらもどこか格好良さを感じつつ、本心は見せずに茶化しながら軽口を叩いている。人間味溢れるゴースト。(ゴーストなのに笑)

この2人の関係性。一緒に観た相方の意見だと、フローは繊細さと芯の強さが宮崎アニメのヒロインっぽいよね、と言っていた。『カリオストロの城』のクラリスっぽい?それなら、グレイはルパンかな?

ともかく、初めは暇潰しか冷やかし程度でついて来たグレイ。
取り憑いていたはずが、フローの一所懸命さにほだされ、いつしか守護霊状態に。


ランプというモチーフ


物語の中で重要な小道具、ランプ。
希望の光、心の灯り、信念・・・
そんな言葉が思い浮かぶが、受け取り方は見る人それぞれ、自由なのが舞台の良いところ。

個人的には「ランプ」と聞いて一番に思い浮かんだのは、BUMP OF CHICKEN初期の名曲(my大学時代を象徴する思い出深き曲)。
からの、どんな人の心の中にもある、命の光、個性の輝き。「なんかアツイもの」。

そういう「なんかアツイもの」の相互作用で結びついていくナイチンゲールさんと幽霊さん。

芝居のラスト、人生を全うしたフローの魂が身体を抜け出てグレイと再会し向き合う場面で、ふと「ソウルメイト」という言葉がやってきて、腑に落ちた。
あ―これは、この世に生まれた魂同士がガチに向き合ってる姿なんだな、と。

舞台を観ていて、作品紹介でラブストーリーだとうたわれていた(?)ことを私は最後まで忘れていた。
というか、キャッチコピーの「この愛は、絶望を知らない」の愛って、恋愛じゃないんだな。

だからこそ、自分の相方を誘って一緒に観に行けて良かったと心から思った。
自分が生真面目な頑張り屋で、相方は間逆なタイプなので、2人の関係性に共鳴しやすかったのもあると思う。(苦笑)




その他書いておきたい要素・・・

色々ありすぎる、、備忘録として軽く触れておくと、

★人の歌声パワーやっぱり凄い。
ソロもコーラスも、納得のほぼ完璧。
特にグレイの声は相方絶賛。
終盤のアンサンブルコーラスは泣けた。

★「女性」の様々な生き方にフォーカスしてる。
フロー、敵役デオン、結婚して去っていくエイミー、そして女だてらのヴィクトリア女王・・・
どんな道を選んでも良い。

★1幕ラストの宇宙感が好き過ぎ。時代設定超えてる。
(ステージアラウンドで観たウエストサイドストーリーを思い出した)

★ラストの無数のランプはある意味ズルイ。
私が受けたイメージは灯籠流しや、台湾の天燈。
人々の中にある生きる命の灯り。そして亡くなった多くの人たちの魂と、その浄化を願う想い。今も無くならない戦争、病で亡くなった人たちも含めて。

苦しみの暗闇を照らす灯火になると決めたの
立ち止まることは無い
命の炎 消える日までは


・・・こうして振り返ってみればみるほど、描こうとしているテーマのストレートさ、熱さに、さらに愛着が湧いてくる作品。

これを初演で観劇できて本当に良かったと思う。
出演者や製作陣の気合いと熱量。観客の期待感と一体感。
何よりも、舞台上で真に役を生き切ってくださったフロー・真瀬さんとグレイ・金本さんに心から感謝と拍手を。

絶望した、と言えるあいだはまだ絶望じゃない。
たとえ炎の光がゆらいでも、生きてる限りなんとか生きていく。
そんな、静かな勇気をもらった舞台でした。

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