クリスマスにまつわる映画といえば、ポール・オースターの短編『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』をもとに作られた映画『スモーク』をおもいだす。
『スモーク』(1995年/ウェイン・ワン監督/日米独合作)
煙草屋店主オーギーは、10年以上にわたり毎日同じ場所、同じ時刻に写真を撮影している。彼の馴染みの客で突然の事故により出産まもない妻を失って以来ペンを持てずにいる作家のポール、彼が車に跳ねられそうになった所を助けた黒人少年ラシードの3人を軸に、ブルックリンのとある煙草屋に集まる男達女達の日常を、過去と現在を、嘘と本当を巧みに交差させながら進んでゆく。
この映画を初めて見たのが20歳くらいだったか、きらきらとしたクリスマスストーリーでは決してないのだが、人間にはそれぞれ物語がある、それは真実でもあり、ひょっとしたら嘘なのかもしれない、という’’きれいごとだけではない’’人生の味わいに惹かれた。
ちょっとした悪いことと、ちょっとしたいいことが混じり合う。
原作になった短編は、絵本にもなっていて、それがまたすごくよいのだ。
こうやってオーギーは免許証に書かれている住所の場所へ向かう。アパートにはロバートの目の見えない祖母がひとりで暮らしていた。
そんなふたりのやりとりが続いて、真実と嘘のいくつかが終盤へと向かう。
世間がしあわせそうに過ごすクリスマス、あるアパートの一室でのできごと。人間の根底にある、あたたかさとさみしさがそこにあって、それは誰の心にもすこしは覚えがある、むかしの記憶なのかもしれない。
ラストで流れるトム・ウェイツの曲もまたよいです。