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ガールズバンドクライ 第8話感想


何度観ても泣ける神回

他の人の感想考察を読んで、後から追記として加筆修正しました。(2024年5月30日)

第7話放送前後で体調を崩してしまっていたんですが、ようやく体調も元に戻り、第8話を視聴しました。(以降、ネタバレ含みます)
8話は泣けるよみたいな話は、噂で聞いていたんですが、本当に涙腺崩壊してしまいました。

桃香については結局、心が折れてしまって、逃げたということが分かり、考察については少々深読みしすぎたかなと思ったんですが、そんな事が忘却の彼方に吹き飛ぶくらい、感情と感情がぶつかり合う仁菜と桃香の想い――。
脚本も中の人の演技も素晴らしく、終盤は視界が歪んでハッキリ観ることができませんでした。


第8話の感想

感情×感情

冒頭では桃香たち、旧ダイダスの高校生時代が描かれており、ここで判明したのが、他のメンバーは高校中退に躊躇してたのに、「難しいからこそ退路を断たなきゃいけないんだよ」と、中退を焚きつけたのは桃香自身でした。
5話で明かされた、婆さんになってもオリジナルのメンバーで続けようという約束を破り、脱退という道を選んだ桃香が、旧ダイダスのメンバーに対して負い目を感じるのは分かるが、それだけじゃない気がしたのは、このことだったのかと。
そりゃあ、退路を断つんだって、桃香がみんなを中退に巻き込んで上京までさせたのに、その桃香自身が逃げるように脱退では合わせる顔がないし、自己嫌悪に陥いるのも仕方ないのかもしれません。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話


「仁菜にあたしと同じ選択をさせたくない」
(中略)
「あの時の仁菜は、あたしが好きだったあたしなんだ。あの頃のあたしなんだよ」

ガールズバンドクライ 第8話 桃香のセリフ

桃香がずっと仁菜の選択に反対していた理由と、田舎に帰らず、もう一度バンドをやろうと思った理由です。
この事からも、桃香はずっと仁菜と昔の自分を重ねていた訳で、年上の経験者の親心と言えば聞こえはいいですが、結局この人は、終始ずっと逃げてたんだなと…。
「だから仁菜のまま歌い続けてほしかったんだ」と言って、昔の自分に逃避してたんですよね。

ところが仁菜は、目標を見つけてどんどん前に進もうとします。まるで昔の桃香のように。
桃香が時折、仁菜に対してイラつく場面が見受けられたのは、何も知らない無邪気な昔の自分を思い出すから。嫌悪する自分自身とダブるからだったんでしょう。
綺麗な思い出の中に閉じ込めようとした桃香に対し…

「私はあなたの思い出じゃない。あなたの思い出に閉じ込めないでください」

ガールズバンドクライ 第8話 平手打ち後の仁菜のセリフ

そりゃ仁菜がキレるのも当然です。
桃香の言っていることは、傷つくのが怖いから昔の思い出に逃げてと、要は傷をなめ合って現実逃避してるのと同じことです。

「あなたの歌で生きようと思った人間もいるんです。あなたが守らなきゃいけないのは、思い出の中のあなたじゃない。自分の歌を誰かに届けたいという気持ちです」
(中略)
「桃香さん、私で逃げるな」

ガールズバンドクライ 第8話 涙ながらに訴える仁菜の叫び

仁菜は間違いなく桃香の歌に救われました。
人生を左右するような歌に出会えることが、どれくらいあるでしょうか?
一曲の歌で人生が変わった人間が、果たしてどれだけいるでしょうか?
桃香の曲は売れなかったかもしれない。たくさんの人に歌を届けることはできなかったのかもしれない。
でもたった一人でも、人生を変えてしまうほど深く大きく刺さったことは、誇っていいことなんじゃないでしょうか?
だからこそ、自分をダシに逃げるなんてカッコ悪いとこ見たくないんですよ。


©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

ところが…。
ここでダイダスのメンバーが駆け付け、あろうことか桃香は逃げ出します。しかも「電車で帰ってこい」と仁菜を置いて自分だけ車で逃げる姿には、さすがにツッコミ入れたかったです。(さっきの涙返してくれ)

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

軽トラで逃げる桃香の前に、体を張って止める仁菜。
ここの感想を見たんですが、仁菜が異世界に行くところだったという感想と、「僕は死にましぇーん」と101回目のプロポーズの名シーンに例えてる人がいて、年齢層によって前者と後者に別れる、ジェネレーションギャップを感じました。(筆者は後ry)

ダイダスのメンバーが追い付いて、軽トラに駆け寄ろうとする訳ですが、桃香はクラクションで拒絶します。
どうしても顔を合わせたくないらしい。
ここでもびびって覚悟を決められない桃香に、もうライブのTシャツの文字、『脱退』ではなく『びびり』でいいやんと本気で思いました。


ナナ「私たち後悔してないから」
アイ「これで上まで絶対行くから」
リン「間違ってなかったって言ってみせるから」

ガールズバンドクライ 第8話 ダイダスのナナ、リン、アイのセリフ

ダイダスのナナ、リン、アイの3人の言葉を聞いても、唇を噛んで、どうしても一歩を踏み出せない桃香。

仁菜「私たちが正しかったって言いますから」

ガールズバンドクライ 第8話 仁菜のセリフ
©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

仁菜のこの言葉にハッとする桃香を見て、桃香は本当は3人にこう言いたかったんじゃないかと思いました。
当時の桃香は、プロに絶賛されて上京したが売れない。事務所からはアイドルバンドへの路線変更を打ち出された。
そんな現実を目の当たりにして、自信を無くし、少しずつ磨り減っていって、ついには心がポッキリと折れてしまった。
自分が巻き込んで3人の人生を変えてしまったのに、自分だけが逃げる選択を選んだ。覚悟を決めることができなかった。
桃香はそんな自分自身を許せなかったのかもしれません。

「あいつらは続ける選択をしたんだ。それは決して否定されるものじゃない」

ガールズバンドクライ 第8話 桃香のセリフ

このセリフ、否定されるべきは自分だと言いたげにも聞こえます。
桃香は事あるごとに、今のダイダスは売れた、今のダイダスは正しいんだと言ってきました。
ダイダスの3人の選択は間違いじゃない。でも自分の選択については、否定されるべきものだと、ずっと自分を責め続けてきたのではないでしょうか。
そして本当は仁菜のように、全てを背負う覚悟で3人に言いたかったのかもしれません。「自分たちが正しい」と――。
そしてそれは、桃香がそれだけダイダスの3人のことを大切に思っている証であり、桃香の中でずっとくすぶっていた後悔なのかもしれません。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

桃香が抜けて一時的にファンが離れたり、心無い言葉を浴びせられたり、ヒナも含めて現ダイダスも生き残るために苦労を乗り越えて、今の地位を獲得したのは、このカットで想像できます。
この事は、当然桃香も知っているでしょうし、だからこそ余計に自分を責めずにはいられなかったのかも。

「桃缶、私たち忘れないから」

ガールズバンドクライ 第8話 ナナのセリフ

この一言で、ダイダスの3人が桃香を恨んでないし、友達であることはこれからも変わらない、でもこれからは違う道を行くんだという、いろんな思いが伝わってきて良かったです。


対比×対比

仁菜と桃香、仁菜と昔の桃香、桃香とダイダス、仁菜とヒナなど、対比になっている構図が多すぎて、どこがどうと全部を説明することはできませんが、複雑な構図を見事な構成でまとめ上げた花田氏の手腕にしびれました。
その中でも、今後に向けて気になるところは、ヒナの所だと思います。

「今のダイヤモンドダストのメンバーだって、これが最初からやりたかった訳じゃない。生き残るために、売れるために、これを選んだんだ」

ガールズバンドクライ 第8話 桃香のセリフ
©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

「私たちが正しかったって言いますから。間違ってなかったって言ってやるから」

ガールズバンドクライ 第8話 仁菜のセリフ
©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

分かりやすいように、2つのセリフが流れていた場面を並べてみました。
今回、いじめの主犯格と思われる人物が描かれていたため、ヒナがいじめの首謀者ではないことが確定した訳ですが、いじめから自分を守るために、生き残るためにした選択が、仁菜を見捨てるという選択だったのか?

そして仁菜のセリフは、いじめに関しても自分は間違っていないと、ヒナに向けられた構図にも見えます。
ヒナはどんな気持ちでこの言葉を聞いていたのか、今後明らかになるであろう、仁菜とヒナの関係も楽しみですね。


告白

最後の軽トラの中での告白シーン。
めっちゃ良いシーンなのに、百合ネタにされるんだろうなぁと複雑な思いでした。
ここの解釈は人それぞれあるでしょう。

「やっぱり私桃香さんが好きです」
「決まってるじゃないですか…告白です」

ガールズバンドクライ 第8話 仁菜の告白

もちろん、このセリフに恋愛要素は含まれていません。
桃香はダイダスを脱退して、自分だけが逃げるという選択をして以降、自己嫌悪に陥り、ずっと自分自身を否定し続けてきたんだと思います。
それに対し仁菜は、桃香のすべてを肯定する発言をした。
自己嫌悪している桃香に「私は好きだ」と、自分を否定し続けてきた桃香に、「それでも私は一緒にいる。隣で歌い続ける」と、ある種、罪の意識にさいなまれてきた桃香に許しを与えたと言ってもいいかもしれません。
それがこの後の、桃香の嗚咽しながらの泣き顔につながるんじゃないかと思うのです。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話
©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話
©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

実は桃香の性格的に、あんながっつり泣き顔が描かれるとは予想しておらず、顔の下半分のカットだけだろうと思ってたんですが、良い意味で予想を裏切られました。
どうやらOPのタイトルロゴの原画を回収してたみたいです。
ですが、これはこれで、桃香の心を素っ裸にしたという意味で、貴重なカットだったんではないでしょうか。

それにしてもここの表現、ダイダスのナナが最後に言った「私たち忘れないから」は、まるで元恋人から別れを告げられたかのようです。
それに対比して仁菜の「好きです。告白です」は、まるで現恋人からの愛の告白です。
旧ダイダスのメンバーとの決別と、仁菜たちトゲトゲとの新しいスタートを、こういった恋愛的な言葉で喩えて表現してくるのには鳥肌が立ちました。


その他のあれこれ

今後に望む展開

これでようやく桃香も前を向いたし、トゲトゲ全員で目標に向かって突き進む……訳ないですよね。

ガルクラが、そんな順調に話が進むとは思えませんし、そうなると次はルパ智なんですが、すでに7話で智の口から、2人の過去に何があったのかは語られてます。
ただルパが、あの笑顔の仮面を脱ぎ捨てる話はあるんじゃないかと思ってます。というかあってほしい。

正直、5人の中で、ルパだけが唯一本心を明かしてないように見えます。「ちゃんと意見ぶつけられそうだ」と言って誘った割には、常に一歩引いて傍観している印象です。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

ルパのあの仮面のような笑みは、ハーフであるが故の人種差別を受けてきたからで、ルパなりに自分を守るための、鎧とか強化外殻みたいなものなんだろうと想像はできます。
ただ、いくら鎧を纏っても心は傷つく訳で、「私にもロックは必要ということです」のセリフが痛々しかったです。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

それとルパの笑顔の仮面は、仁菜の回想に出てきた校長の笑顔と似ているというか、通ずるものがあると感じます。
それって仁菜にとっては嫌悪の対象で、それが原因でルパともめる展開をひそかに期待してるというか、鎧を脱ぎ捨て、仮面をはがし、感情むき出しのルパも見てみたいものです。


すばるのタワマン

実は初見で観た時、前半パートで1番気になったのが、すばるの都内住み発言です。
すばるが住んでいるタワマンは、武蔵小杉がモデルと思っていました。トゲトゲの5人は全員、川崎市内住みという設定なんだろうと思ってたんですよね。
それに武蔵小杉なら、渋谷まで電車1本なので、アクターズスクールに通うにも便利がいいですし。

私と同じく武蔵小杉と考えていた人は、きっと多いはず。
でも、すばる本人からまさかの都内と明かされ、6話、武道館の帰りに品川駅と思われるホームで話してたのも、すばるの帰宅経路の都合上だったのなら納得です。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第6話


第8話のアイキャッチ

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

第8話のアイキャッチは多摩川スカイブリッジ。
軽トラでZepp Hanedaに向かうシーンで、渡った橋がそうです。

ガルクラはオリジナルアニメなので展開が読めないのと、こうしてモデルとなった聖地を探す楽しみもあり、放送時期が強力な作品の多い今期でなければ、覇権を獲っていたかもしれません。
それでも徐々に人気を獲得してますし、最終話までにどこまで人気を伸ばせるか楽しみです。


追記

記事をアップした後で、8話の感想や考察を読んでいて面白い考察がありました。
桃香が前を向けたのは、ダイダスと仁菜、両者あってこそ。どちらか一方では再び前を向くことはできなかっただろうというものです。

ダイダスの3人は、自分たちの選択が間違ってなかったと証明することで、桃香が重荷に感じないようにした訳です。
一方、仁菜は自分たち(桃香の歌)が正しいと証明することで、桃香の重荷を軽くしようというもの。
この考察には、なるほどと納得が行ったし、すごく共感できました。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ 第8話

帰りの車中、桃香は「くそ!くそ!」と苛立ってました。
この場面の桃香の感情を考察しひも解くと、怒りの矛先はもちろん自分自身でしょう。おそらく自分の弱さに対して苛立っているんだと思います。
ただ、これではちょっと抽象的すぎて分かり難いです。

もっと具体的に、桃香は何をしたかったのか?

感想記事を書いている時も、この場面の桃香の感情がいまいち見えてこなかったんですが、ダイダスと仁菜の両者によって救われる構図という考察を読んで、自分の中で一つの答えが出たので、慌てて記事に追加して書いています。


桃香は何をしたかったのか?
それは、ダイダスの3人にただ一言、謝りたかったんじゃないでしょうか?
結局、ダイダスの3人と面と向かって話す勇気は持てなかったし、ダイダスと仁菜の言葉に押されて、ようやく発した言葉も、「あんなクソみたいな演奏しておいて」とか「アイドルバンドならもっと可愛くやってみせろ」とか「お前らの客全部持ってくぞ」とか、精一杯強がって啖呵切ってましたが、本当はそんなことを言いたかった訳ではないはず。

おそらくダイダスを抜ける時も、最後は何も言わず辞めたんでしょう。だからずっと、3人には謝らないといけないという思いがあったんだと思います。
ただ一言、「あの時はごめん」と謝りたかったのに、それもできず啖呵を切ることしかできなかった。

もちろんダイダスの3人は、そんなこと承知で、ナナの「私たち忘れないから」と許してるんですよね。
その上で、これからは別々の道を行くという決別の意味も持たせている。
対して仁菜は、「桃香さんが好きです」「告白です」と、全てを肯定する。
本当は3人に謝りたかったのに、それすらできず、自分自身に苛立つ桃香に対し、それでも私は好きだと許し、ダイダスとの決別に対比して、仁菜はずっと一緒にいるよと、罪も重荷も全部受け入れて、一緒に背負ってやると言っている訳です。
ここでようやく桃香は、後悔とか罪悪感とか、自己嫌悪、自己否定といった、ずっと抱えてきた重荷から解放されたんだと思います。

(2024年5月30日追記)


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