ガールズバンドクライ 第10話感想
ワンダーフォーゲル
ガールズバンドクライ 第10話について、感想を述べていこうと思います。
なお記事の最後に、今回の記事のYouTube動画を追加しました。(2024年6月14日追加)
今回は予告にもあった通り、仁菜が実家に一時帰省する話。
当然帰省すれば、父親との衝突は避けられないでしょう。
父親へのわだかまりの原因については、7話で姉から説明がありましたが、果たして父娘のこじれた関係は解消されるのでしょうか?
(以降、ネタバレあり)
感想
またもガルクラに泣かされました。
家族の愛情に気付かされて、仁菜の奥底に眠る忘れていた気持ちが、そして不器用な親子の、家族だからこその和解の仕方が、泣かずにはいられませんでした。
今週も伏線や対比になっている箇所が多くて、全部は把握しきれてないし、上手くまとめ上げることができるか不安ですが、仁菜と父宗男を中心に解説していこうと思います。
1.頑固で不器用で似た者同士
実家に戻ると家族会議が始まり、重苦しい空気になります。
この場面を見ると、仁菜と父は背中合わせになっていて、依然として二人がすれ違ったまま、分かり合えないままだというのが強調されています。
また父の方が電気も付けず薄暗い状態なのは、父の心情を表しているのでしょう。
いじめの際、娘のためを思って取った選択が、かえって娘を傷つけてしまった事に対する自責の念。だからと言って、どう接していいのか分からないんだと思います。
この後の仁菜との言い合いも、ずっとすれ違った状態のままでした。
仁菜は高校を中退した際、父親からの言葉に怒って、「だから大学入ればいいんでしょ」と啖呵を切って上京してきました。予備校に通うなら東京の予備校の方がレベルが高いというのもあるでしょうが、本音は実家には居場所がないと思ったから。
ところが勉強を疎かにし、予備校も勝手に辞めてバンドでプロになると言い出した。実家とも縁を切るため預金通帳も送り返してきたら、親なら当然心配になります。
アパートの保証人とか未成年がどうとか、父の言っていることは正論だし、親なら当然の言い分でしょうが、仁菜が欲している答えではない。
傍から見てれば、この期に及んで正論かましてくる父親も、攻撃的で聞く耳持とうとしない仁菜も、どっちもどっちだなぁと...。
二人とも頑固で素直になれない似た者同士なので、話し合いにならないというか、平行線のままになるよなあって印象でした。
翌日、父に連れられて出かける訳ですが、電車内の座っている位置を見ても、二人の間の距離感もそうだし、向き合って座ってないところも、お互い向き合おうとしてないというか平行線のままなんですね。
路面電車に乗り換えてからは、仁菜は過去の自分と向き合っていますが、父も過去の自分と向き合っているんでしょうか。
父が仁菜を連れて行こうとした目的地は学校でした。
仁菜からすれば最寄り駅で降りれば、まあ目的地の察しはつくし、あんな場所に行きたくないと思うのも仕方ありません。
学校側が提出してきたのは、1枚の謝罪文もどき。
もどきと言ったのは、書いてある文章を読めば分かりますが、上っ面だけの謝罪文です。特に最後の『検討します』って言葉は、検討するだけで本当は何もしないだろうというのは、想像に難くないです。
そりゃあ、そうなりますよねえ…。
学校側の対応にムカつくと同時に、この場面、今後誰かが『響け!ユーフォニアム』の滝先生の「何ですかこれ?」とのコラ動画を作るんだろうなと、ちょっと不謹慎なこと考えてました。m(_ _)m
父のこの言葉に唇を噛む仁菜。
家族だから守ってくれると信じていたのに味方をしてくれなかった。仁菜が一番傷付いたのは父の言葉だったのに、その父から『被害者』なんて絶対に言われたくないはずです。
この後のことは描写されていないので想像にはなりますが、仁菜はやっぱり分かり合えないと失望し、一人で帰ってしまったんでしょう。
この後の辛子蓮根カレーの場面で、姉が言っていましたが、
父なりに方々に助言を求めて考えた結果が、今回の学校訪問だったのではないでしょうか?
仁菜との関係修復のために、何をすれば良いのか悩んだんでしょう。自分が選択を誤った過去の清算というか、間違えたあの場面(学校との面談)からもう一度やり直すことで、仁菜との関係をやり直そうと考えたのかもしれません。
もちろん的外れであり、父の空回りに終わる訳です。そして仁菜は、この人は全然自分の気持ちを解ってくれないと、ここで父との和解を諦めたんだと思います。
2.お姉ちゃんは偉大
井芹父がああいう人だし、長女という立場もあって、この人はこの人で苦労したんだろうなとは思いますが、美人で気が利いて優しい姉ですよね。
その姉と二人での場面では、仁菜がいじめから『空の箱』に出会って救われたこと、現在の自分に至るまでの想いを語ってくれました。
「我慢しろ。それが頭のいい人間だって言われて、無駄なんだ、我慢するしかないんだって思っていた」
やはり仁菜にとって一番辛かったのは、父親が味方をしてくれず、大人の不条理を押し付けてきたことだったんですね。
「それが奈落の底に落ちているのか、大空へ向かって飛んだ瞬間なのかは分からないけど、私はあの歌で飛べたの。だから帰る地面はないし、もう戻りたくもない」
この前の部分「間違ってないんだったら我慢なんかするな、先のことなんか考えるな」と合わせて考えるなら、高校中退を選んだこととその後の人生とも受け取れるが、高校中退も含めた自身の選択が正しいのかどうかとも受け取れます。
帰る地面も、前者なら両親とか家族といった意味になるし、後者なら以前の自分という意味になるかと思います。
ただ後者の以前の自分にしても、家族にとっては長い時間を一緒に過ごしてきた思い出がある訳で、もう戻りたくもないと言ってのける仁菜の言葉に、姉としては複雑ですよね。
「私は・・・あの時の私は自分を殺そうとしてた」
これにはかなりの衝撃を覚えました。
自殺を考えていたということなのか、それとも自分の心を殺そうとしてたのか。どちらにせよ、当時の仁菜はそこまで追い詰められていたということです。
「でも今の私が一番好き。胸張って言える、これが本当の私だって・・・」
おそらく当時の仁菜の状況を、一番近くで見てきたのが姉だと思うので、こんな事を言われちゃったら、もう何も言えないですよね。
辛子蓮根カレーは熊本名物だと勘違いしちゃいました。
それこそ辛子蓮根カレーでググって、飲食店や実物画像を探したんですが無くて、SNSを見たら熊本県民からも、さすがにカレーに辛子蓮根はないとの声が多い。
どうやら井芹家独自のメニューらしいが、なぜ辛子蓮根かというと公式のYouTubeチャンネルに、一問一答【井芹仁菜】という動画があり、辛子蓮根を丸かじりするほど好きだったと答えている。
仁菜だけじゃなく、視聴者まで泣かせにくる姉のアッパーに私も号泣でした。
年齢的には桃香やルパとそう変わらないと思うんですが、良い女すぎるでしょ。
仁菜はいじめの件で、本来味方であるはずの家族が、父親が味方をしてくれなかったことに絶望し、自分は愛されていないと思い、拒絶を示したのかもしれません。
第1話で「どこにも居場所が無くて」と言ったのも、いじめられて孤立したからではなく、家族の中で愛されていない、居場所がないと思い込んでしまったのではないか。
ですが姉の言葉に、自分が愛されていると気付いた、というよりは愛されていたことを、そして仁菜自身も家族のことが大好きだったことを思い出したんだと思います。
仁菜は『空の箱』に背中を押されたと言っていますが、この曲は歌詞を見れば分かる通り、応援ソングとかではありません。
自分たちのやりたい音楽が売れず、事務所の方針に葛藤した桃香の空虚な胸の内が綴られた曲です。
仁菜はこの曲に「共感した」というのが、背中を押されたということなんでしょうが、もしかしたら制作の段階から、仁菜と桃香の二人に当てはまるよう仕組まれてるのかもしれません。
ともあれ、仁菜の中にも『空の箱』を抱いていた訳です。
父のことが原因で家族の愛情を見失い、心の中は空虚な思いだったはずです。でも本当は家族が愛情を注いでいたと気付かされ、また自分も家族のことが大好きだったことを思い出した仁菜の心の中は、『空の箱』は愛情で満たされ、空っぽではなくなったんだと思います。
それにしても、涙を辛子蓮根カレーの辛さのせいにするなんて、一問一答の辛子蓮根の設定も、このシーンのために用意したんじゃないかと思えるほど。
3.旅立ち
翌日早朝、仁菜はこっそり出ていくつもりだったようです。
東京に戻ってからの1話との対比以外にも、井芹家のカットも対比になっています。
実家に戻った時は夜で暗く、出ていくときは朝で明るくと、まるで仁菜の心情を映したかのように、明暗がしっかりと描かれています。
子供の成長を記した柱を見れば、姉の言う通り愛されてることが解る良いカットですね。
仁菜の表情も憑き物が取れたかのように穏やかです。
他にも、智役の凪都さんのポストにもある通り、頭をぶつけた枝が切ってあり、ここでも親の愛情が見て取れます。
仁菜は最初、黙って家を出ていくつもりでした。
そこに『空の箱-桃花ver.-』が聴こえてきます。聴いていたのは父宗男でした。
多分、姉が父に伝えたんでしょう。仁菜が語った言葉を、仁菜がどんな気持ちだったのかを…。
仁菜の気持ちを聞かされて、どうするべきだったのか、どうしたら良いのか一晩中考えたけど、結局分からず、仁菜が背中を押されたという『空の箱』を何度も聴いたんじゃないかと想像してます。
というのも枝の件ですが、高校に行った日は切られていませんでしたが、翌朝には切られていたことから、おそらく夜中に切ったんじゃないかと思うのです。
ふすま越しに少しだけ話す二人ですが、ここでようやくお互いが歩み寄った感じでしたね。
そのまま何も言わず、家を出ていこうとする仁菜。
ここでトゲを出してた理由は、桃香とすばるの会話のシーンが理由なんだと思います。
結局、仁菜が欲しかった答えは、謝罪でも認めてもらう事でもなく、親の愛情だったんじゃないでしょうか。
父から我慢しろ。それが頭のいい人間だって言われて、親の愛情に不信感を抱いてしまった、見失ってしまったが、姉のファインプレーで思い出しました。
家族の愛情に気付いた仁菜にとっては、このまま熊本に残るという選択に、後ろ髪を引かれる思いだったのかもしれません。
「行ってきます、行ってきます、行ってきます」と3回繰り返したのも、自分に言い聞かせているように感じました。
父が呼び止めた時の素っ気ない返答も、仁菜自身が揺れていて、気を許すと決意が鈍ると思ったんじゃないでしょうか。
それと、ここだけ仁菜が熊本弁で話しています。
父と標準語で話す仁菜は、心を閉ざし、父を拒絶する象徴であり、それが熊本弁になることで、二人の時間がこじれる前に遡ったかのようでした。
家族の愛情を見失っていたとはいえ、我がままばかり言っていたと謝った仁菜に対して、父宗男が返した言葉は「行ってらっしゃい」の一言。
素直に謝れない不器用さもあるんだろうけど、仁菜が本当に必要としていたものを考えると、「行ってらっしゃい」の言葉以外ないようにも思えます。
過去の過ちは消せないし、やり直すこともできないけど、この「行ってらっしゃい」には、身体に気を付けてとか、何かあればいつでも帰ってきなさいとか、いろんな想いが込められていて、王道だけど家族の愛情と繋がりを感じ取れる言葉だと思います。
姉が仁菜を呼び止めて、アパートの鍵を投げます。
今回、実家に帰ってからも、二人が正面から向き合うカットは1度も描かれていませんでしたが、ここで、初めて父と娘が正面から向き合います。
ここでようやく、二人の間のわだかまりが解けた瞬間だと感じました。
アパートの鍵のことをバラされてバツの悪そうな顔をする父も、一旦走り出したが戻ってきて抱き着く仁菜も、どちらも素直になれない不器用さが出ていて、二人はやっぱり似た者同士の親子だなと思います。
良い表情です。
最初、黙って出て行こうとした時は、憑き物が取れたみたいな穏やかな表情ではあるけど、どこか寂し気な表情に見えました。
「行ってきます」と「行ってらっしゃい」
家族だからこそ余計なものが無くても、この一言でいろんなことが通じると言うか、様々な思いがこもった言葉ではないでしょうか。
仁菜の「行ってきます」のトーンもきっと昔は、家を出かけるときは、こんな感じのトーンで言ってたんでしょう。
走ってる仁菜の顔は、ハッキリとは見えませんが、多分泣いているんでしょう。
4.帰る場所
東京駅に着き、川崎までの電車内での、1話との対比の場面がこれです。
川崎駅を降りると、仁菜は「帰ってきた」と言います。
仁菜にとって、川崎が新たな自分の居場所になった証拠でしょう。第1話で桃香と出会った川崎駅前中央東口の場所で、今度は4人が仁菜の帰りを待っていたのも良い演出でした。
家族って家で家族の帰りを待ってるじゃないですか。
仁菜の新しいホームである川崎で、新しい家族である4人が、仁菜の帰りを待ってるという構図が、「行ってらっしゃい」と送り出した実家の家族と対比になっていて、仁菜の「ただいま」に対して、メンバー4人の「おかえり」で閉めるのも納得の閉め方でした。
余談
1.スカウト
冒頭では下北沢CLUB Queというライブハウスでライブをしてました。まさかガルクラがぼざろの舞台に進出するとはってなったんですが、プロを目指すとなった以上、都内のライブハウスで精力的に活動しているんだと思います。
芸能事務所からのスカウトキタ――(゚∀゚)――!!って思ったら、三浦さん、まさかのどこかの厄介ダイダスファンと同じ穴のムジナでしたw
三浦さんは、EDでペットを預かってる描写がされているので、最終的には三浦さんの芸能事務所と契約し、三浦さんはマネージャーになるんでしょう。
2.父の煙草
第10話、仁菜がふすま越しに「煙草、少しは減らしてね」と言ったのが効いたのか、EDでは煙草に火を付けようとして思い留まるカットがあります。
てか吸いすぎだよ親父、禁煙しろ!
3.自由席
これは正直、かなりどうでもいい話です。
ルパから渡された新幹線のチケット(実際には母親が用意した)には、自由席券と記載されています。仁菜がいつ帰るか分からない以上、自由席券になるのはいいんですが、学校の謝罪文の日付には、20XX年8月1X日と書かれています。
ガルクラの物語がいつなのかは、ぼかしてあるので何とも言えないんですが、仮に今年2024年だとすると、お盆などの繁忙期(8/9~8/18)は、のぞみは全席指定席になります。
もちろん立席なら利用はできますが、何時間も立ちっぱなしはキツイですよね。
学校の謝罪文の日付が面談した当日ではなく、前日に作成した日付のものなら、仁菜が実家に帰ったのが8/19、学校に連れてかれたのが8/20と言えなくもないですが、あまり考えても仕方ないです。
4.空白とカタルシス
おそらくフェスで歌う曲になるんでしょうが、歌詞を見ると今回の帰省で得られた経験が反映されてるように思います。
ちなみにカタルシスとは、心の中に溜まってしまったネガティブな感情を開放(解放)することで、心に存在する重苦しい嫌な気分が浄化されることを意味します。
まさに今回の話の内容そのものですね。
下記にスマホの文面を全文記しておきます。
5.今週のアイキャッチ
今週のアイキャッチは熊本駅1番ホーム。
仁菜が新幹線から肥後本線に乗り換えるため、立っていたホームですね。
6.予告
予告では、フェスのテントっぽいのが描かれていたので、いよいよダイダスとの直接対決、そして仁菜ヒナの対決かと待ち遠しいですが、フェスの会場がどこなのか、フェスの会場場所がアイキャッチになるのか、予想をしながら11話を待ちたいと思います。