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マッチングアプリ日記ep.5 恋はやっぱり便利じゃダメ?

マッチングアプリで付き合った人と別れた。三ヶ月弱!正直に言って、付き合ったとも言い難い。

以前マッチングアプリ日記という形で付き合った経緯を書いた相手だった。結論から言うと、私の方が恋愛的に好きになれないまま、ずるずると付き合う期間だけ長くなることに違和感を持ってしまい、別れを切り出した。

優しくていい人だったし、友達としてはよかったのだが、デートにいくときの心境がまるでボランティアだった。(あー今日は水族館か。まあ行くかあ…でも早めに切り上げたい。夕飯はなんとかパスしよ。)毎回こんな調子である。それでももしかしたら、だんだんと好きになれるかも、と恋愛マスターの友達は言うし、そんなこともあるかもなと楽観的に考えて付き合い始めた。友達には「キープしとけばいいのに!」「結婚には良さそうな人じゃん!」「めっちゃ好きじゃなくても付き合えるもんだよ」などと口々に言われた。でもいま私は結婚願望もたいしてないから、惰性で付き合う理由がないし、キープはただの面倒ごとになってしまうのだ。さすがに彼女たちには言わなかったけど。

別れても何も感じない。私はもう恋愛できないんじゃないか、と首を傾げてしまうほどに無である。
相手は自分を好きになってくれていただけに申し訳ない。でもこればっかりはもう仕方ないのだ。彼にとっても、他の女の子と付き合う方が良いだろう。とても勝手なことを承知の上で、本当にそう思う。

染まろうとする人だったな、といま思い返す。
甘党な私がランチにケーキを頼むと、腹が減っていると言っていたのに、同じものを頼む人だった。私がKing Gnuが好きだと言うと、その後のドライブでは終始King Gnuがかかっていた。常田さんがかっこよくて、と言ったら、常田さんみたいな髪型にする、といい出すし、モノトーンの服をよく着る、と言ったらモノトーンの服ばかり着てきた。こういう人がタイプな人もいるだろう。でも私にはつまんなかった。もともと私は、自分と全然違っていて、好きなものを偏愛して深めている人を面白いと思う。たまたま私と同じ趣味でも、私と同じ熱量やそれ以上のこだわりがある人に惹かれる。スペックとか収入とか安定しているかどうかよりもずっと、そういう感覚が私にとっては恋の条件なのかもしれない。

思えばマッチングアプリって、似た趣味や共通点をAIが分析し、フィルタリングをかけてマッチングさせるシステムだ。全然違う人にうっかり恋するようなハプニングは起こりづらいのかもしれない。出会いに関して大変手軽なことは間違いないけれど、手軽さの弊害が確かにあって、それは私にとっては大きなものだったのかもしれない。

そんなときに、舘ひろしの言葉に出会った。笑
舘ひろし先生は、マッチングアプリについてこう言っていた。

「実はデータが合わない方が恋としてさ すごく燃えるかもしれないじゃない。マッチングアプリで性格が合えばじゃあ素敵な恋ができるかっていったら、それは別問題だから。それは出会いに関しては便利になっているだけで、恋に関しての便利ではない。
恋はやっぱり便利じゃダメよ」


この言葉が、今の私には謎にしっくり来た。笑

ツールとして便利になっても、それで求めていたものが手に入るかというと別問題らしい。当たり前だけど、どんなツールを使ったって私は私である。そのことがよくわかった。

たとえば旅先にいくとなったとき、昔よりずっとかんたんに、行きたいスポットを見つけることができるようになった。話題のグルメやセレクトショップや土産をブックマークしておくことができる。値段も混雑状況もクチコミもチェックして、比較検討してチョイスができる。

でも、たとえば旅先でふらりと歩いていて見つけたショーウィンドウのアクセサリーに立ち止まってしまったり、たまたま見つけた市場にあった一点ものの焼き物に思わぬ出費をしてしまったり、小さな店から漏れ出たコーヒーの香りがその時求めるものの全てのように感じられたりすることが、そのひとつひとつが私にとっては恋の体験であった。

恋愛したいとか、結婚したいとかいう目的をデフォルトで持っていない私にとっては、そもそも恋とはあらかじめブックマークしたりセッティングするものではないのかもしれない。

まあ、n数が足りないのであくまで仮説だけど。わかんない。だからもう拘る必要もないや。

マッチングアプリがダメとはまったく思わない。何しろ出会いに関しては本当に便利なことはよくわかったので、また使うこともあるかもしれない。でも、それも含めてもう拘る必要もない。便利が万能ではない。そして、不便は無能ではない。だから便利も不便も拘りなく、ただ気が赴くままに旅していこう、と思う。いつも素敵なものに出会えるわけじゃなかった。これからもそうだろう。それは本や映画で思い描いていた景色ではないかもしれない。でも永遠に閉じ込めたいと思うほどの景色も稀に得てきた。周囲の納得や大多数の意向に沿う選択ではないかもしれないが、それもまた一興だ。この生であとどれだけそんなものに出会えるだろうか。恋する人生!いま私はそれを尊く思う。

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