代わりに空が、桜色でした。
私の生まれた場所でもある、近所の病院の敷地内には、数年前まで、桜の大樹がありました。毎年こぼれんばかりに桜を咲かしていたその樹は、もう跡形もなくなり、大きなコンビニエンスストアにとって代わられています。
曇った空に、くすんだ街並みに、コンクリート。全てが同化した、モノクロの写真のような街。記憶にある故郷は、特筆するところのない場所でした。しかしそんな街のなかで、一つだけ異質なものがありました。
それが、病院のコンコードの片隅にあった、一本の桜の大樹でした。
毎年、四月も終わ