煙の中で
ふわっとした記憶を、いまだに信じている。
例えば、「煙は悪いナニカを浄化する」って。
本?ネット?とにかく、どこかで聞いたことがあるんだ。
だとしたら、さ。
出社してすぐに、問答無用で私のデスクの前で焚かれるお香の煙の中で。
「なぜ私はここにいるんだろう」って、血流に墨汁が広がるような気持ちになるのは、どうして?
何も浄化されていないじゃないか。
古いタオルのような、やけにザラザラした気持ちだ。
私の髪には、今日もお香の匂いがついた。
「良い香りですね」と言ったけれど、本当は好みじゃない。だって、成金の応接室みたいなにおいがするから。
それなのに、私は今日もヘラヘラしている。
好きな煙は、母に想いを寄せる時の煙だ。
安かろうが貰いものだろうが、その煙は私を幼い子供に変えてしまう。
一時期、母の元へ行きたくてたまらない時期があった。一生分のお酒を飲んだのも、その頃で。遠い昔の話なんかじゃない、ほんの5年前のこと。
普通の人は
「一刻も早く、酔うために飲む」のではなく、「楽しむために飲む」のだと知った。
信じられなかった。
谷底に落ちる寸前で、私はたくさんの手に引き上げられた。今も相変わらず、崖っぷちかもしれない。
それでも、今日もヘラヘラと笑っている。
ブラック企業時代に、浅瀬のつもりがプクプクと溺れてしまったんだ。とてもここには書けないような状態だった。
よく平然と働けたなと思う。もしかしたら、誰かにバレていたかもしれない。
これはさり気ないカミングアウト。伝わらなくても全然構わない。
とにかく、私はまだ生きている。
そして、この記事は消すかもしれない。
もし良かったらサポートをお願いします。ヒールの底が内側だけすり減っているので、まずは均等な靴を手に入れます。そして踏み出す一歩となる(気がする)