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キッチンタイマーをみつけること!

手元が暗くなった。
後ろから、ふと人の気配がした。そおっと振り返った。

そこには、お腹に手を当てて、眉をしわっと垂れた夫が立っていた。

ごめん、ごはんの時間、忘れていたわ。

そう思い出したら、わたしのお腹も、くうっと鳴いた。

集中すると周りが見えない。危なっかしい。すぐ、忘れる。

小学生のころから表現を変えて、わたしの連絡票や成績表に書かれた言葉たちだ。あまりにも、なじみきった感覚だからもう、意識していなかった。

そうだ、わたしはすぐ忘れてしまうのだった。

そういえば、昨日はゆでたまごを作っている鍋を火にかけたまま、忘れていたなと思い出した。

コンロの前でゆでられるたまごを見張っている時、メールでカウンセリングの予約がはいった。その返信を書いている間に、ゆでたまごはどこかに飛んで行った。

スマホのブラウザに残るページの履歴を追いかけて、調べものが始まった。少し、細かな図が出てきたので、じっくりみようとパソコンの前に座った。そして、ノートを開いてメモを取ったり、他のメールに返信したり。いつもの作業に没頭する。

……あ。どこかで換気扇の音が聞こえる。うちのに似てるな、???!!!!!!!しまった。たまご。

大急ぎでキッチンにもどったら、ゆでたまごの水は鍋の底まで、あと1センチ。セーフ、間に合った。

キッチンで慌てているのを夫にみつかり、たまごが干からびそうな鍋の地獄サウナに入っていたことがバレた。

「家が燃えるのでやめてください。火を使うときはスマホは禁止。電話もとらないように」

こんこんと注意を受ける。わたし、よくよく反省。

そして、火を使い始めたら夫をキッチンに呼ぶ(ただし夫がリモートワーク中で自宅にいるときに限る)という新ルールが決まった。


作業がひと段落するまでキッチンにはいかない。としっかり、自分に言い聞かせたばかりの今日。

10時ころに軽く朝ごはんぽいもの食べた。あのときはキッチンに立った。そのあと、そのあと。うーん。思い出せない。

もしかしたら、昼ごはんも忘れていたかもしれない。そして、夜まで作業続けていたみたい。どおりで、身体がばきばきする。肩も腕もかちかち、お尻が少し痛いような……

お腹が鳴くはずだ。わたし、9時間もずっと机の前にいたみたい。

机のところで作業を続けていた時間を数え上げたら、さらにお腹がすいた。机の前を離れて、ごはんを作ろうと冷蔵庫のなかを思い浮かべた。

すると、突然、トイレに行きたくなった。どうやら、トイレに行くのも忘れていたようだ。やれやれ。

ひとつのことを、言い聞かせたら。別のひとつを忘れてしまう。モグラたたきのような頭。

文明の利器であるスマホにアプリを入れて、スケジュール組みながら動くのは便利だけれど。昨日みたいに、途中でメールを開いてしまったらおしまい。

いっそアナログに。学生の頃からしてきたように。
首からタイマーをふたつ、小さなノートひとつぶら下げて。ピッピッピ!と音を鳴らしながら暮らすのがいいのかもしれない。

おかしいな、会社員の頃はそれほど困ってなかったのだけどな……と思ったら、後輩たちが世話係をしてくれていたと思い出した。

周りが随分と助けてくれていたおかげで、忘れんぼも過集中の症状も、それほど気にせずいられたのだなと、改めて感謝した。また、みんなと会いたいな。みんなは元気かな。

そんな夜。今夜は早めに、もう眠る。

あしたはタイマーを仕掛けて、過ごす日になる。タイマーの電池がまだ残っているの良いのだけれど。それも、またあした。

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タイトル上の写真はハタモトさんの作品。noteみにいったら、あらおいしそう。

もちろん、あります!
買い物してる間に、何を買いに来たか忘れることもしょっちゅう。

ハタモトさんのnoteは、おいしそうな写真の隙間にお役立ちnote。インターバル散歩の時、ご紹介くださったこのアプリ試してみます。ありがとうございました。

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