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「会う」あたたかさ

ドアを開けると、まっすぐに。寒い空気が飛び込んできた。朝はそれほど寒くなる気がしてなかったのだけれど、今日は雪が降るらしい。

いつも、朝には窓を開ける。夜の空気でぱんぱんな身体から息を吐いて、今日の空気を吸いこむ。そのとき、額縁のように東の空を囲むビルの隙間から、朝の空を眺める。

今朝の空は、オレンジとピンクのマーブル模様。これから晴れて気持ちの良い日になるかなと思っていた。それから、メールチェックしたり、デスク周りの書類をファイリングしたり、下ばかり向いて、部屋の中だけに目線が止まっていた。

ようよう昼前、アラームの音で外を見ようかという気分もどる。午後からのカウンセリングに向けて家を出る頃合い。

机の横に置いてある気象計をチェックして、今日、着込む服の数を決める。思っていたより気圧の低下激しく、夜は天気が崩れると予想。念のためにネットで天気予報をチェック。

雪だるまが、天気予報の午後からの時間に出没していることを確認!

お客様にはあったかなお茶を出そうと、ポットに熱湯を入れる。紙コップの方が口にあたたかだから、いつもの湯呑と入れ替えた。いつものマフラーよりも分厚いものにとりかえて、首元をぐるぐる巻きにする。

ドアを開けて飛び込んできた冷たい空気に、負けるもんかと、マフラーをぎゅうっと握りしめて出発。

「寒いですね。外はいかがでしたか?」

私も外を歩いてきたくせに、外を知らなかったみたいな顔をしてお客さんとおはなしをはじめる。

天気の話から、まず入る会話に、どこか安心する。

あなたが、ここに来てくれた。ここまでの「道のり」について、私は聴く用意がありますよ。時間差で、わたしもあなたと同じ道を歩いていますから、きっと、おはなしを聞いて一緒に考える用意ができてますよ。
……そんな感じの安心。

天気の話からはじめて、1時間。最後には、紙コップを使っていれた、熱いお茶をゆっくりと飲んで。ふうっと、大きく息を吐いてから、控えめに笑顔になったあなた。

「外は寒いですけれど、ちょっと、元気に帰れそうです」

そう教えてくれたことが、嬉しかった。

嬉しくなって、身体もぽかぽか。うっかり、マフラーを巻かずに外に出る……でも、やっぱり寒い。慌てて、首元をぐるぐる巻きにする。

外の空気は寒いけれど、誰かに会える時間は、なんだか身体も気分もあたたか。

誰かと会うことを控える日常があるだけに、誰かと会う約束があたたかになる。

「会う」ことが日常に戻るとき、どれほど、心喜ぶだろう。今から、それを楽しみに待つ。

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