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母との距離

LINEのつかいかたを、母が覚えた。

母と妹とわたしとで、グループを作った。原家族での連絡が増えた。

写真を撮って送ることを、母が覚えた。

毎日、家族グループ内に、母から写真が届くようになった。

ある日は、家の猫。ある日は、玄関に咲いた花。それをみては、妹と楽しんでいる。時々、今日の夕食やおもしろかった風景など、撮っては送るようになった。

数日前は、パソコンの画面が母から送られてきた。画面更新をしたいけれど、どこを押したらいいかわからない、とのこと。さっそく、妹が返事をしていた。解決した様子。返事あったなら、それでいい。わたしは、ひとつ「よかったね」スタンプを送った。それで、すんでいた。

そして、今日。とつぜん、母から電話がかかってきた。

「LINEを送っているのに、無視するおねえちゃんは冷たい」と。せっかく家族グループでLINEをしているのだから、もっと、そこにも投稿しろということらしい。

スタンプで返信してるし、読んでもいるから。無視はしていないんだけれどな。


母が思う「娘の距離」と、わたしの思う「娘の距離」が違う。

母子の距離は、なかなかにとりづらいものだと聞く。とくに、親離れ子離れをうまくできなかった、母とわたしはなおさらだ。

実家に住んでいた時とおなじように、わたしの行動も考えも全てを把握しておきたい母。ようやく、母から離れようとしているわたし。どうしても、そこに痛みが出てくる。何気ない母の言葉が、わたしをぐりぐりとえぐってくるように感じられる。

母が距離を詰めてくるにも、理由がある。そろそろと実家の周りでも、かかわり深かった人たちが鬼籍に入りはじめた。ぽろぽろと知人や友人が減っていく。そのさびしさが大きいのかもしれない。そして、母の心に影を落とし始めて、もっと娘たちと連絡を取りたいのかもしれない。

少し前まで、わたしもいらいらと母に返事をしていたけれど。今は、母の寂しさをしかたないなと受け止めている。そして、ドライに。母と向き合う。それくらいで、ちょうどいい関係。

母と、フラットに向き合えるときは、近づきつつある。けれど、その道のりはまだ遠い。

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