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外に、洗濯物を干したくて

「フルタイム 共働き 家事」と検索した先に出てくる、あらゆるライフハックを取り入れきた。第一子の育休から復職するタイミングでかけこみ導入したパナソニックの衣類乾燥機は、キュルキュル!と悲痛な声を挙げながらも今日も働かされている。


先月の夏休みの滑り込みで、3泊4日で海に近い家を借りた。あいにく東京の自宅から高速道路で2時間ほどの場所だったが、日常じゃない世界に行きたかったのだ。期間限定の新しい生活は、わたしに大きな気付きをもたらしてくれた。

その家には、衣類乾燥機がなかった。すなわち常に天気を気にする生活となる。実に6年ぶりだ。


外干し生活のはじまりは極めて最悪だった。
まず、到着した初日の夜に、昼に使った家族分の水着をバルコニーに干した。夏の夜の潮風を感じながらの手仕事は久しぶりに心地がいい感覚だった。こうしてひとつひとつていねいに洗濯物を扱うのも悪くないなと思った。

そうして眠りについた翌朝。遮光されない部屋で誰よりも早く目覚めたわたしは、洗濯物の乾き具合を見に外に出た。遠くに聞こえる波の音が心地よい。目をこすりながらもひとつひとつ水着を触り、ほんのりとした湿り気を手で感じていたそのとき。


わたしの水着に、カエルが張り付いていた。
よく見るとむすこのラッシュガードにもいる。茶色くて小さい。

都内ではまず見ることのない光景に悲鳴をあげた、くなったが、まだまだ薄暗い早朝であり、家族を起こしてしまうのも憚られる。最大限の理性で感情を抑え込み、絶句するしかなかった。


これが、、、田舎暮らしの現実だ。写真映えする美しい家、潮風が心地よい静かな街。しかし、その裏には自然の豊かさとともに、多くの生き物が共存している現実があった。


早く誰か起きて。この感情を共有させて。そんな日に限って、家族はなかなか起きてこなかった。(慣れない寝具でも爆睡できる人が羨ましい。)

早くも都内の自宅に帰りたくなるも、お腹は減る。ありものの食材で朝食の準備をこしらえていると、たちまち冷静になってきた。


そもそもは湿気の多い日の夜に、洗濯物を外に干したわたしが悪いのだ。カエルに罪は一切ない。ただ、そこに居ただけなのに。


こがましいのはわたしだった。カエルもただ自然の中で生きているだけで、私たちが彼らの世界に入ったに過ぎない。自然の中では、私たちはただの一部であり、その豊かさを共有する存在であることを忘れてはならない。



カエルはさすがに勘弁だが、それでもなぜか日常でも外に洗濯物を干したくなった。この旅行からの帰宅後、布団干しを買った。(我が家にベランダはない)
しかし、天気のよさと在宅勤務の日が奇跡的に重なる瞬間にしか実現しないため、実はまだ一度も外干し出来ていない。もはや外干しは僥倖そのものだ。はやく外干しをしたい。そうしているうちに肌寒い季節になってしまった。外干しへの願いを、来年の夏までそっととっておこうと思う。


おしまい


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