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【実録】深夜の多摩川急激増水!BBQ場水没の危機。

先日の台風で被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

台風10号が猛威をふるいましたね。
連日ニュースで、各種交通機関の運休や各地での被害が報じられていました。

そして、多摩川河川敷にあるバーベキュー場(以下タマリバー)で働く私たちも、思いっきり台風10号に翻弄された週でした。

ケガ人が出なかっただけ喜ぶべきことではあるのですが、あの台風が来たときタマリバーはどんな状況だったのか、来年以降の記録としても残しておきたいと思います。

8/29(木) PM14:00 船を見る遊びを楽しむ

私とワタル(夫)は、のんきに帆船を見に行っていました。

雨なんてもろともせず、船マニア怒涛の行列

この日は子どもの通院があり、保育園をお休みしました。通院がお昼前に終わったので、オンシーズン中の束の間の休暇を取っていたのです。

お目当てはこちら。

"世界で一番美しい帆船"と呼ばれるイタリア海軍の練習船「アメリゴ・ベスプッチ号」です。

これは、私の趣味のひとつである「船を見る遊び」です。

「今日は東京に行くよ!そして船はイタリアだよ!持っている服の中で一番おしゃれな格好をするように!」と家族に号令を出し、お台場まで車を走らせました。

会場にはイタリアの文化、芸術、歴史を共有するパビリオン展示等もあり、イタリアから出張に来たのかなという方も多く、何とも洗練された雰囲気が漂っていました。

船内見学の順番待ちの間、少し雨が降っていたので傘をさしました。
目の前におしゃれな傘をさしている人がいて、「やっぱりイタリアのデザインは素敵だな」と思ってよく見たら、関ジャニ∞のパラソルでした。

ゆっくり帆船を外から眺め、船内見学で中からも眺め、船を見るという遊びを満喫して夕方に帰宅。

そのころから、台風の影響か、だんだん雨が強くなってきました。
夫のワタルはずーっとスマホのウェザーニュースとにらめっこ。

「いつもスマホばかり見ている」というのは夫婦喧嘩の種になりがちな話ですが、台風の進路を確認する必要があり、今日ばかりは仕方ありません。

そして、子どもを寝かしつけ、そのまま自分も寝落ち。

8/30(金) AM1:30   ワタル&よっしー出動

ワタルからの「多摩川やばいかも、行ってくる」というささやき女将で目が覚めました。
ささやき女将を覚えているそこのあなた、同じ時代を生きた同志ですね。

「やばいのか…そうか、いってらっしえぇ…」と声をかけつつ、私はそのまま意識が飛びます。

後から聞いたのですが、ワタルはメンバーのよっしーをピックアップし、タマリバーへと向かったようです。

なお、弊社メンバーは夜行性なのか、昼は全般的にテンションが低いです。一方で夕方になるにつれてはつらつとしはじめ、深夜のメッセージは基本即レスという異常事態。

「早朝に起きてプールでひと泳ぎしてから丸の内のホテルのラウンジでニューヨークタイムズ片手に朝食をとる一流のビジネスパーソンを少しでもいいから見習ってほしい」といつもメンバーの二人に小言をいいますが、今回ばかりはこれが功を奏しました。

ワタルが夜中の1:31にLINEをすると、間髪入れずよっしーから返信が。

こういうやりとりを朝9:00からやり、健康的な生活を送ってほしい

8/30(金) AM2:30 本当に大切なもの(現金と発電機とコンロ)を守る

車を走らせ、ふたりがタマリバーに到着したのは午前2時すぎ。

この状況を見たよっしーは、「あ、これはやばいかも」と言いました。

世界中で無人島探索やら沢登りやら、命がけのアウトドアアクティビティをさんざん経験してきたよっしーは、基本的にいつも冷静です。

いつも私やワタルが慌てても「だいじょうぶっすよ」とのらりくらりしているあのよっしーが「まずい、避難させましょう」と言うくらいには、多摩川はひどい状況になっていました。

具体的にどんな感じだったかというと、弊社がタマリバーと一緒に管理している広場や小田急線高架下のバーベキュースペースは、川と一体化していました。

つまりは、完全に水没していました

いつもは広場だった場所が、川になっていた
いつもはバーベキュースペースだった場所が、川になっていた

このとき、通常1m程度の多摩川の水位が4.5mまで上昇し、タマリバーが冠水するまであと1~1.5m、というところまで水面が迫っていました。

もちろん台風等災害時の避難計画は作成してありましたが、登戸エリアで同程度かそれ以上の大雨が来たことは過去になかったので、まさかここまで増水しているとは予想だにしませんでした。

22:00頃から急激に増水してAM2:00には4.54m(当文章を書いている9/5の水位は1m以下)

このままのペースで増水すると、タマリバーの冠水も時間の問題です。
ワタルとよっしーは、避難させる設備・備品の優先順位を一瞬で決める必要に迫られました。

緊急時にこそ、自分が本当に大切なものに気づくと言いますよね。

ふたりは火事場の馬鹿力とでもいえるようなスピードで、金庫(ニコニコ現金が一番大事)と発電機(金の次に大事なのは電気)とBBQコンロ(これがないとBBQできない)を抱え、近くに借りているアパートや車に避難させました。

その後ふたりは安全な土手の上まで移動し、はらはらしながら様子を見守っていたそうです。

8/29(木) AM4:00~AM11:30 多摩川で夜を明かす

雨は夜通し降っていましたが、現地に到着したタイミングをピークに水位は下がり続け、タマリバーはなんとか冠水を逃れました。

ひとっ子一人おらず、雨の音しかしない明け方の4時頃。
二人は河川敷に入っていく一台の軽自動車を見て仰天します。

心配になり「こんな日にどうしたんですか」とその車の方にたずねると、河川敷に設置されている公衆トイレの清掃業者さんでした

こんな時にまで…頭が下がります。

その後ふたりは「雨量が落ち着いたら帰ろう」と話したものの、信頼しているウェザーニュースの天気予報がコロコロ変わるので帰るに帰れず、結局昼前まで現地の車内で待機していました。

8/29(木) PM13:00 ワタルの帰宅と私の迷い

お昼過ぎ、リアル濡れネズミとなったワタルがへとへとで帰ってきました。

「復旧作業が必要だから、残念だけど9/3まで休場にすることにしたよ」と言い残し、よろよろと風呂場に消えていきました。

一方、台風で保育園が休みになった子どもと私は事務所に行き、私は、大いに迷っていました。

何に迷っていたかというと、台風被害でキャンセルとなった売上金額や備品の損害の被害金額を計算するか否かについてです。

電卓をたたかないと現実がわからないけれど、絶対ショックを受けるので知りたくない。

ついに私は勇気を出して電卓をたたき、合計金額を見て、そっと目を閉じました。

自然に勝てるわけなんてない、勝とうと思うこと自体が間違っている。ケガや事故がなかっただけで100点満点だ。復旧作業を頑張って、またお客様を迎え入れればいいじゃないか。
そう自分に言い聞かせますが、やりきれない思いに心が沈んでいると、

「おかあさーん」と呼ばれました。

後ろを振り返ると、子どもが机のうえで寝袋に入っていました。

ねえ、なんで?

その後、タマリバーは数日の閉場を経て復旧が完了、9/4からまたお客様を受け入れる体制が整いました。

皆様のお越しを心より、心より、お待ちしております!