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フェニキス人の貿易船
きつねのような尻尾をもつフェニキス人が、貿易をしに来る。
三千二百年たったら、わたしたちに教えてくれるという。
重い緑の宝石をもって来て、10億の生命と取り替えてあげようという。
もし間に合うのならば。
美はいつも正しく、あなたを苦しめる。
わたしたちの中に埋め込まれた何億もの小さな装置が勝手な物語を作りだし続けるから、わたしたちはいつまでも殺し合いを続けなければならない。
橋の上で蛙が見ている。流れる水が七色に変わるのを。
蛙の王女様が、わたしにたずねる。
あなたはどうしてそんなに急いでいるの?
もう時間はないのに。
そんな当たり前のこと、と言おうとしたけれど、なにを急いでいたのだったか、もうどうしても思い出せない。
かつてここに大きな都市があった。
そこで笑っていた美女も、こき使われていた奴隷も、みなもう死んでしまった。
この人たちの記憶はどこにたどりついたのだろう。