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美術・文学・科学の交差点に立った日|対話型鑑賞@岡山県立美術館

少し前のことになりますが、ふたたび対話型鑑賞会に参加しました。会場は岡山県立美術館。

鑑賞支援をするのは、一般社団法人 みるを楽しむ!アートナビ岡山


今回、対象となった作品は岡山出身のアーティスト、平子雄一氏の作品群でした。先日参加したハレノワでの対話型鑑賞会で対象となった作品のうち、2点が氏の作品でした。その時の記事はこちら👇

平子雄一氏の作品では頭部が木で、そこから角が突き出ている人間のようなモチーフが目を引きます。木から突き出ているのだから本来は枝と呼ぶべきなのかもしれませんが、口をついて出る表現は角でしかないのが不思議です。

その日は、アーティストご本人も同席していただきながらの鑑賞会。参加者が遠慮して活発な意見が出てこないかと思いきや、それは全くの杞憂に終わりました。次々と自由な発言があり、180度違う視点からの意見も飛び交い感服しきり。平子雄一氏も感心しながら参加者の発言に耳を傾けてくださっていました。ひとしきり参加者の意見を聞いたあとは平子雄一氏の講義。その中で参加者に質問が投げかけられ、また対話が生まれるという場面も。


作品の前に立ったとき、私の頭の中に真っ先に浮かんだのは新井素子著「グリーンレクイエム」という小説でした。人間の姿をして暮らしているけれど、ほんとうは緑色の髪に葉緑体を持ち光合成ができる異星人の兄妹。彼女たちと接した地球の植物が意思を持つようになり……という物語。作品としての形は違えども、人と植物の関係性を描いているという共通点で平子雄一氏の作品と結ばれている気がしたのです。


次に思い浮かんだのは少し前にテレビで見た、植物のストレス応答に関する研究のこと。虫に葉っぱをかじられた植物内で、グルタミン酸受容体を介するカルシウムイオンの流れが生じてシグナル伝達が起きることが解明されているそう。受けたストレスや損傷の度合いに応じて、カルシウムイオンが伝搬する距離や範囲が異なることを画像でとらえることに成功したというお話でした。


対話型鑑賞は1980年代にニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, MoMA)で開発されたVisual Thinking Curriculum(VTC)という教育プログラム。グループで作品を鑑賞しながら、ナビゲイターが参加者の発言を促して「見る・考える・話す・聴く」のサイクルを何度も何度も循環させます。

目についたもの、感じたことを言葉にしてグループ内で共有すると、自分には見えていなかった描写に気づいたり、予想外のアイデアに触れたりできるので刺激になりました。

アメリカに住んでいた時にもたびたび美術館に足を運びました。小学生のグループが来館して、ひとつの作品を前にして床に座り込み絵の中に何が見えるか、何を思ったかを自由に発言する光景を何度も目にしたことがあります。あれは対話型鑑賞を実践していたんだなと、いまになって合点がいきました。

ほかの来館者たちは、そのグループを気にすることなくマイペースで鑑賞をしていたのも印象に残っています。日本の美術館は静粛にするのがマナーで、私もそれが当然だと思っていたので目新しく感じたものでした。

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タマオ📚言葉を紡ぐ薬剤師
いただいたチップで美味しい茶葉を買います🫖淹れたお茶を傍に置きつつ新たな文章を書いて、みなさまの生活をほんのり暖かくできたら嬉しいです✨