見出し画像

うつくしき「重重帝網」の世界ー無数の宝珠が連なり光り輝くー

こんにちは。たまえです。
社会人大学生として、仏教・空海・マンダラ・神仏習合を学んでいます。
東京の会社のリサーチャーです。
👇受験に至った経緯はこちら


空海を学び始めて、最初に衝撃を受けたのが
重重帝網じゅうじゅうたいもう」という世界観です。

何に衝撃を受けたかというと、
その世界があまりにも ”美しすぎた” のです…!




今回は、こちらの本を元にまとめていきます👇
高野山大学の入試の準備としても読んだ1冊です。

入学してからの11カ月、辞書のように何度も開き、たくさん線を引きました。

仏教の本はどうしても専門的になりすぎる節があるのですが、
こちらはエッセンスを凝縮した上で
現代の言葉で語ってくれるのでおすすめです😎


|うつくしすぎる…✨宝珠が連なり光輝く世界


さて、今回のメインテーマである
重重帝網は、『華厳経』で説かれた思想
で、
空海も『即身成仏義』の中核部分にこのたとえを取り入れています。

〇重重帝網
 インドの武神の一人の帝釈天たいしゃくてんの宮殿の豪華な天井に、無数の宝珠がきらびやかに飾り付けられており、それぞれの宝珠は網で相互に結び付けられ、天井いっぱいに光を発し、輝きわたっている。これを帝網という。

そのように天井いっぱいに飾りたてられた珠は、その一つの珠にその他の無数の珠の光が包み込まれ、また包み込まれた無数の光が、他の無数の珠の光を互いに包み込み、無限の光が交錯し合っている
この状態を重重帝網という。

全体が個を包み、また逆に個が全体を包み込む譬えとしてよく用いられる。

松長有慶『空海』p.57 個と全体:重重帝網

最初に読んだとき、
「私が求めていた世界の認識はこれだー!」となり、

「そうだよねー!こういう感じだよねー!」と感動したのを覚えています。
自分の中にあった感覚と、
それが美しく表現された世界観が
ぴったり重なった喜び。

きらきらして、果てしなくて、光があふれる世界。

今でも、この様子を頭の中で想像するだけで
「世界って本当に美しいなぁ・・・✨」という気持ちになれるので、私のお気に入りです。

|「個」と「全体」

さて、松長有慶先生の本に戻ります。

近代科学技術文明は、個の集合体が全体を構成すると考える。

一方、東洋の文明には、個の中に全体が凝縮されると考える思想がある。
例えば古代インドのウパニシャド哲学をはじめとするヒンドゥ文化、中国では道教、仏教では『華厳経』の哲学、空海の思想、チベット仏教の世界観などの中に、それが見出される。

松長有慶『空海』p.57 個と全体:要素還元の欠陥

物事を構成要素に分解し、
それをまたそれぞれの構成要素の性質に還元することによって、
あらゆる事象が説明できるという要素還元論。

この要素還元論を足場に進歩してきた近代科学ですが、20世紀後半になると
この考え方では解決できない課題が提起されるようになり、

これらの諸問題を考える足がかりとして、
インドや中国の古代文明に注目が集まっているといいます。

個々の人間や生物も、その中に大宇宙を包み込み、
それぞれが独自の活動をなしている。

人間・生物の身体は、
それぞれの臓器や骨肉の単なる集合体ではない。

地球環境の場合も同様に、個々の事物や生物の個体が単独に存在するのではなく、宇宙全体にかかわり合いをもち、相互に密教に絡み合って成り立っていることに、最近ようやく気づき始められた。

松長有慶『空海』p.58 個と全体:重重帝網


個が全体を包み、全体が個を包む世界・・・
私にとって重重帝網を知ったときの感覚は、
「帰ってこれた」という安堵にも近い感覚でした。

あー、これでよかったのかと。

数年前の私は、
一生懸命、自己分析して他者との違いを探したり、
周りのみんなの分かりやすくて輝かしいプロフィールに憧れてみたり。

さらには、大人なんだから、
なんでも自己責任で完結させて、
自分の力で立っていなければ!と。
今思えば、結構がんばって生きていたようです☺
(お疲れ自分)

この世界は
自分も他人もすべてのものが
お互いに影響しながら成り立っている

という世界の認識の仕方は、

歩く歩道の上を逆向きに歩くように
いつの間にか間違った頑張り方をしていた私の
軌道修正に一役買ってくれました。
前を向いて歩いたら、すーっと楽に進みます🤭

|重重帝網に出会い、大切なものを思い出せた

ここまで紹介してきた重重帝網の世界。
みなさんはどんなインスピレーションがわきましたか?✨

私は重重帝網に出会って、
何か大切なものを思い出せた感じがしています。


こんな風に
自分の中にもともと持っている価値観さえ、
無意識でいるとすっかり埋もれてしまうんですよね。

大学で、あらためて日本のことを
宗教学的、歴史学的、哲学的、民俗学的に学び直してみると、

自分の持っている価値観や
日本にいると当たり前の考え方が、
決して世界共通のものではない
ことに気づかされます。

これは頭ではもちろんわかっているのですが、
「あーこれもかー!」という小さな気づきがたくさんある感じ。

おまけ 自分の再発見におすすめ📗和辻哲郎『風土』


せっかくなので、
そういう気づきの連続だった本も一冊ご紹介します!
こちらは日本思想史という授業の中で先生がおすすめしてくれました。

和辻哲郎の『風土』
名前は知っていても読んだことはない
という方も多いのではないでしょうか📕✨

異なる地域で暮らす人間を比較考察する場合には、
たとえば一神教と多神教の違い
という構図が最近の定番だと思いますが、

こちらの本では
風土や気候、
つまり自然との関係から
その土地の人間性を考察しています。

(自然との関係の文脈上に神の考え方も出てきます)

・夏の草刈りという概念がない地域
・恵みをもたらさない海?
・ヨーロッパでは家の中でも靴を履くのはなぜか?
 日本の「うち」と「そと」の考え方
などなど

目からうろこの考察が痛快で楽しく読めました。
あまりに面白かったので、
2周目に入ってまた読んでいます📗

|さいごに 空海の『即身成仏義』に出てくる重重帝網

それでは最後に、
重重帝網が出てくる
空海の『即身成仏義』から、
有名な一説をご紹介して終わりにします📒

六大無碍ろくだいむげにして常に瑜伽ゆがなり。
四種曼荼ししゅまんだおのおの離れず。
三密加持さんみつかじすれば速疾そくしつあらわる。
重重帝網じゅうじゅうたいもうなるを即身と名づく。

松長有慶『空海』p.52 即身成仏

この短い文章に、
空海独自の思想が凝縮されています。
私の大好きな曼荼羅も出てきます😌

機会があれば、こちらについても書きたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました!


いいなと思ったら応援しよう!

たまえ|世界はマンダラパラダイス|日本の学び
よろしければ学びをシェアする活動のサポートお願いします!