『作りたい女と食べたい女』に触れて人間関係の尊さを再認識した話
私はテレビドラマをよくみている方だと思う。
その中で昨年末くらいからNHKで再放送されていた『作りたい女と食べたい女』を見て感銘を受けたので、その内容を紹介したい。
つい先日1/29〜2/29まで新作が放送されていたのにも関わらず別記事を優先してしまい、少し鮮度が落ちているのは反省・・・
『作りたい女と食べたい女(以下つくたべ)』の登場人物
現段階でコミックは5巻まで展開中。主な登場人物は4人。
主人公は料理を大量に作るのが好きな女性・野本さん。
その人が住んでいるマンションの隣の隣の部屋に住んでいる、食べるのが大好きな女性・春日さん。
主にこの2人の関係性を描く作品だ。
さらに
・野本さんと春日さんの間に越してくる女性・南雲さん
・野本さんとSNSで繋がっている女性・矢子さん
途中からこの2人も、先述した2人と大きく関わっていき、変化の促しや気づきを与えてくれる存在になっている。
女性が4人、しかもどちらかといえば2人の関係性が丁寧に描かれていることから想像がつくかもしれないが、簡単にまとめてしまうと「レズビアン」の話だ。
私もこのワードだけ出ていたらおそらくコンテンツに触れていないだろう。
しかしこの作品はレズビアンがメインではなく、女性ならではの視点でさまざまな課題と向き合い乗り越える勇気をくれる作品になっている。
むしろレズビアン要素はおまけに近い。ドラマでは終盤に描かれたぐらい。
漫画はもっと深く入り込んでいるけれど、扉絵の次に警告文が出ているので苦手な場合は飛ばせば問題ない(読まなくても何ら影響はない)
『つくたべ』の魅力3選
1.作中に出てくる料理が美味しそう
人間模様と共に描き続けられているのが料理だ。
レシピまで詳細出してくれるものもある中で、この作品に登場するものの明確な材料はわかりづらい。きっともっと話題になったらレシピ本が登場するのか、はたまた料理は人間模様をつなぐためのひとつのツールにしか過ぎず料理がメインになり過ぎないようにするという策略なのだろうか。
ただ作画がどれも食欲をそそる。
初期はインスタ映えを意識しているような量・商品が多かったけれども、最近は日常に寄り添ったものが多いように感じる。
どんなにマイナスなことがあったとしても野本さんは料理を作っているし、それに対して春日さんは美味しいものを食べると良い気持ちになる
ことをきちんと伝え合っている。尊い関係性だ。
2.独身女性のモヤモヤを言語化してくれる
野本さんと母親のやり取りが度々出てくる。
春日さんと会う時に「ただの友達か」「遊んでないで良い人を見つけなよ」「◎◎さんのところに赤ちゃんが産まれた」・・独身女性ならこの3点セットを1回は投げかけられたことはあるのではないだろうか。
この質問に対しての野本さんの交わし方や本音が染み渡る。
母の気持ちも分からないでもないが、よそはよそ、うちはうち!!!
焦ったって何も起こらないし・・放っておいてくれ😂
また、春日さんがバレンタインに野本さんにチョコを買うシーンがある。
その際接客時に「男性人気が高い」旨を教えてくれる。
リアルな接客の場ではこんなことを言う人は販売員としていかがなものかと言うツッコミはさておき・・バレンタインは女性から男性に何かあげるもの
というガチガチの固定観念は具合が悪くなる。
自分で食べるのもアリだし、女性から女性にあげても、男性から女性にあげても、男性から男性にあげてもなんでも良いだろう・・と思う。
犯罪さえしなければ、売上が増えることなら万々歳ではないだろうか。
そのモヤモヤした感情を春日さんは野本さんときちんと共有していて、その関係性が良いなと思った。
3.感情移入はできなくとも共感はできる
私は登場人物4人の女性に誰1人として感情移入はできない。
今のところ、女性に本気で恋心を覚えたことはないし、それぞれの登場人物の過去のトラウマも経験したことがないので気持ちは分かりそうで分からない。
けれども上記で記載した出来事も含めて「わかる〜」と唸ってしまうことが多数散りばめられている。
例えば、料理を作るのが好きな野本さんは職場にもお弁当を持参している様子を見た男性社員が「良いお母さんになりそう」「彼女には弁当を作ってもらいたい」と茶化すシーンがある。
女性が料理を作るのは当たり前・独身女性は料理ができてナンボ(?)という平成初期の考えを披露されたら私は不機嫌になるだろう。
その状態を綺麗に茶化すのではなく、イライラしている様子を出しつつ、一方で気分転換に料理に打ち込んでいる姿が妙にリアルだ。
また、野本さんが春日さんへの恋心を自覚した時に過去の回想シーンに映るのだが、これが本当に刺さる刺さる。
学生時代一緒に遊んでいた人が徐々に異性との恋愛を始め、どんどん変わっていく様子は苦しくなる。誰も悪くないのだが。
女性だらけの悪意ない関係性の素晴らしさを噛み締めることができる
作品の1番のウリはこの一言で表すことが出来るだろう。
女性が複数人出てくる作品は、男性だらけの作品と比べるとどうしてもマウント(自分のこと、自分の家族や恋人のこと)が中心になってしまい憎しみや復讐の要素が少し強くなり、痛快な気持ちにはなるけれどドス黒い感情が少し芽生えてしまう。
この作品はたまに出てくる男性陣にモヤモヤさせられることはあるものの、モヤモヤを女性同士で言語化してくれることでうまく消化させてくれる。
しかもそのやりとりに嫌味やマウントは存在しない。
女性同士の関係性で爽やかな例をあまり見たことがなかったので新鮮だ。
私は男性に恋心を覚えたことはあるが、それも今思うと本当だったのだろうか?と野本さんたちの日常を見て疑いたくなった。
相手のことをあまり考えていなかったし、思いやりも全く足りていなかったなと反省。
愛とは相手に自分を開示して、相手のために行動することを厭わないものなのだと理解することができた。
綺麗な部分ばかりではなく、同性カップルの厳しさも教えてくれる。
世間から好奇の目に曝されるという描写は今のところないけれども、女性同士で住む際の物件探しのハードルの高さ(例:複数人入居可表記であっても同性カップルは括りに入っていることが少ない)は知らなかった。
異性とのカップルだったら難なく突破できそうなことが障害になるなんて思わなかった。
異性だって別れたりすることがあるはずなのに、何故同性同士がダメなのかは理解に苦しむ。
正直私が同じ立場だったら・・・諦めてしまうだろう。
異性の方が楽な部分もあるので、きっと同性への思いには蓋をすると考えられる。
※現状同性でも異性でも恋心を持っていないのでただの妄想😂😂
実際にあるのかは分からないが、同性同士でも構わないという物件のオーナーの家に住みたいなと思った。
土俵が全く違うけれども阿佐ヶ谷姉妹さんの関係性も魅力的だ。
近隣に大切な人がいて、何かあったら助け合う、目くじらを立てることではないだろう。
数年前に比べると、だいぶ同性愛に対する意識(?)は良い方向に変わってきてはいるけれども制度や根深い部分はまだまだ改善の余地がある。
なかなか一般市民ができることはないけれども、もう少し性別にとらわれず生きていける社会になることを微力ながら願うばかりである。