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強い言葉を投げつけてしまったとき、その心境は・・・ 【いつか季節が廻ったら #2】


「あなたの機嫌を取るために研究していた」
そんな言葉を年下彼から投げつけられて、私が大泣きするちょっと前、航空券がセールになっていた。

地方住まいの私たちは、航空会社のセール期間に航空券を購入できたら、新幹線で行くよりも安く東京往復できる。
セールは今日の夜中まで。

ちょうど学会の会期の時期の航空券が売り出し中だった。
学会は数か月先。少し前に発表の申し込みをしたところだ。
彼の修士論文とは大きくは関係しない。それでも大事な研究室のテーマのひとつ。

「そのころ余力がありそうな予定なら、まとめて発表してみたら。」
二つ返事で
「します。」
そう言って申し込んだのだった。

「できません」「今は無理です」
さいきん、この発言が増えてきた。

数か月先、果たして年下彼は予定通り発表するのだろうか?様子をみていたころだった。

今日、年下彼は登校していなかった。登校していたら直接言うが、それができないのでメールをした。
「春にある学会、この間申し込んだけれど、予定通り発表するのであれば、研究費節約のためにも、航空券を購入してもらえるかな。」

棘を出してメールしたつもりもなかった。
言ったもん勝ちの風潮が強い昨今の大学の状況から、学生に強く言うことはためらわれた。
曲解されてパワハラだと、学校に学生が訴え出れば、教員側に勝ち目はない。そんな近年。学生に接する時は細心の注意を払うことになってしまう。

ほどなくして返信があった。
「行くに決まっています。今はやる気がないようにみえるかもしれないですが、行かないという話ではありません。」

強めの返信があった。

「そっか、それならいいや。」
23時、そう思った私はあえては返信しなかった。

次の日、いつもより遅めに出勤。鍵を開けて部屋に入った瞬間、年下彼がやってきた。
なんとなく腫れぼったい目をしていた。寝てなさそうだった。
あれ?、今日大学に泊まってたの? そう思う間もなく

「昨日は、メール、すみませんでした。」
謝ってきた。

「?」
「うん。わかったよ。ちょっとびっくりはしたけど、別に怒ってないし発表するなら、それでいいよ。」

「ああ、よかった。」
ものすごく安堵した表情になった。

そうか、私は彼からみれば「指導者」なのだ。


「帰ります」
「え、もう!? まだ朝の 10時だけど?」
部屋に戻り荷物をまとめて家に帰っていった。今からぐっすり寝る気だろう。一睡もしなかったのか。

そんなに思い詰めていたのかと思った。

全く気にしなかった、と言えばウソになる。しかし、そんなにも気にしていなかった。腹がたつこともあるだろうし、そんなことで目くじらたてたりしない。
失敗したと思ったら次から気を付けたらいい話だからだ。

相手がどう思うか、それは相手次第のところもある。
私がずっと若かったころ、きっと生意気だったと思う。
相手が怒って嫌味を言ってくることもあった気がする。
「嫌な奴だな」
そういう感情を思い出す。
個別の事例は、もう思い出せないけれど。

私は、年齢の数分は年下相手に寛容でいたい。寛容に接してくれた年上の人達のように。

失敗しても、ごめんなさいになってもいいんだよ。
相手がどう思うかだから。

私は、そんなことでは怒らない。


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