10月2日誕生花
竜胆ーりんどう
胸に湧きそめし、小さな恋の卵かな
竜の肝のように苦い、漢方薬として中国で広まったことから、竜胆という漢名がついたそう。
日本のりんどうは原産で、枕草子にも登場するほど、長く愛されている秋の花です。
花言葉は色々ありますが、「誠実」「正義」など、凛とした花のイメージそのもの。
竜胆といえば、どうしても伊藤左千夫著、野菊の墓を思い出してしまう。
語り手である僕は、2歳年上のいとこ、民子と一緒に、綿摘み仕事を与えられ、遠くの山畑までお弁当を持って出かける。
はじめに口火を切ったのは僕。幼馴染みの民子を一人の女性として意識し始めて、道に咲いていた野菊を摘み「民さんは野菊のような人だ」と言う。僕は野菊が好きだと。
お昼に、清水を汲みに行った政夫は側に咲いていた竜胆を摘んできた。民子は「りんどうが好きになった」と、その花の美しさを見とめる。そして、「政夫さんはりんどうのような人」だと。それに対し僕は「喜んでりんどうになります。」と答える。
このとき僕は、二人の仲を「卵的な恋」と表現するのですが、まるで小さな卵が連なったように、つぼみをつける竜胆が、悲しいほどに可憐に思えてしまうのでした。
薄めの本なので、さらりと読めて、何度か読み返しても、筋書きがわかっているのに、同じところでどうしても泣いてしまうのですよ。
夏目漱石は「何百編よんでもよろしい」と、絶賛したとの事。同感です。淡い恋心に情景描写が美しく映えて、何度読んでもいい。
画像は過去の生徒作品です。
竜胆も色や形が様々ありますが、ソリダゴや女郎花などの黄色い小花を合わせ、そこに実物やワレモコウなど入れると、野趣に富んだ花飾りになります。
同じ季節に、同じような環境で生息しているものを合わせると、数種類の色を混ぜてもケンカせず、納まりが良いのです。
野菊と一緒なら、なおのこと美しいでせう。