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チューリップの美学
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色彩は大地からの祝福。
この世に色がなかったら、真っ暗闇の黄泉の国。
花は地球から贈られた幸福の使者です。
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今月のレッスン花材は「チューリップ」。
3000万年もの長きに渡って進化を遂げ、蜜蜂以上に人間を魅了させた花。
私は人間には憧れないけれど、花の生き様には惚れ惚れしてしまう。
チューリップが正にそうで、自然界の中で生き残るためのwinwin、
その戦略が秀逸なのです。
それはまるで、現代アートを見るようです。
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ポップアートの父、アンディー・ウォーホルの言葉はまるでチューリップを称賛するようでした。
「一番魅惑的なアートは、商売に長けていることだと思う…
上手くいっている商売は一番最高のアート」
(著書”ぼくの哲学”より)
チューリップほど長期に渡って成功し続けたアーティストはいないだろう。
一つの球根から伸びる茎に一輪の花をつける。
それは、唯一の神の姿を彷彿とさせ、その究極の美がヨーロッパの市場を
賑わすことになります。
その名も”チューリップバブル” 。
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私が初めて、クレヨンを手にし描いたのはチューリップだったそう。
子供心にも、描きたいと思わせる魅力があったのでしょう。
他の花とは違うそのフォルムが目を引いたのかもしれません。
チューリップの太古の祖先は約3000万年前の中央アジアの高原地帯。
チューリップがミツバチに提供するのは花の蜜だけではありません。
花の中の温度は周囲よりも5℃ほど高くなるそうです。
チューリップの花弁は寒くなると閉じる習性があります。
この暖かい花のポケットの中でミツバチは一晩を過ごします。
花粉も食事として提供され、ゆっくりと休憩をとります。
そして翌朝、チューリップの花粉にまみれてミツバチは元気に飛び立つ。
自分とチューリップの子孫繁栄の為に。
植物の知恵にあやかりたい。
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カラフルで質の良いチューリップは、このように枯れてなお、
老いる美学を突きつける様です。
あなたはどんな歳の取り方をするのか?と。
それは、どんな色を残せるのかという強いオリジナリティ。
美しい枯れ方をも教えられた気がします。
来月のレッスンはミモザ!
来月の文学と一花一葉講座のお知らせ。