日本でしたいことは、「仕事と残業」(カンボジア編)
乾季終盤にあたる5月のカンボジアは、とにかく暑い。今年はプノンペンど真ん中のバンケンコン1地区でも、日中3時間ほどの計画停電があり、エアコンが止まると一気に汗が噴き出す。異常な暑さによる電力利用の急増と水不足により、水力発電に影響が出ているのだ。東南アジア最貧国のひとつであるカンボジアは、未だ電力の約6割を周辺国からの輸入に頼っている。
プノンペン市中心部から車で北へ30分ほどのルッセイケオにある某日本語学校は、汗を拭きながら、日本語学習に取り組む実習生たちで活気に溢れている。全寮制で、授業は月曜日から金曜日まで。朝7時30分からのラジオ体操と朝礼にはじまり、教室・廊下の清掃を終えてから、毎日40分間の授業6コマをこなす。授業が終わって寮へ戻ってからも、宿題・復習と格闘する。生活費を節約するために三食すべて自炊。一人畳一枚分くらいのスペースにベッドは無く、薄い毛布を布団代りに敷いて寝る。荷物はリュックサックひとつ程度とこじんまりだ。面接に合格して、日本の受入れ企業が決まった実習生は、概ね6ヵ月間このような訓練期間を経て出国する。
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カンボジア南東部コンポンチャム州にある農村出身のサレンさん(23)もその一人だ。「暑くないですか?」と聞くと、「はい。暑いですね!」と真っ白な歯をみせながら、にっこり笑顔で答えてくれた。サレンさんは、4人兄弟の次男坊で、中学校を出たあと、父親と一緒に内装工事の仕事などをして家計を支えてきた。月収は約100ドル(約1万1千円)。タイへ出稼ぎに出ている兄からの仕送りも頼りながら家族8人で暮らしていた。しかし生活資金としての借金が5,000ドル(約55万円)あり、毎月返済をしても一向に減らないという。困窮する生活を何とかしたいと思っても、周りには高収入が見込める仕事や働き口がない。技能実習生として日本行きを考えはじめたのは、今から2年前。同じ村の友人が、日本での実習を終えて帰国。貯めたお金で借金を返済し、家族と雑貨屋を始めたのだ。そして日本の給料の高さを聞かされたという。その後、プノンペン市内の送出機関に登録。静岡県の建設会社の面接に合格し、日本行きが内定した。訓練期間を終える2ヶ月後には、いよいよ外国人技能実習生として日本へ入国する。
「日本へ行ったら何がしたいですか?」と聞くと、「仕事と残業です。」と期待していたのとは少し違う答えが返ってきた。今はとにかく一日も早く日本へ行ってお金を稼ぎたいようだ。ただ、日本で得るものはお金だけではない。苦労して稼いだお金で家族を支え、持ち帰った技術や文化を母国に根付かせて欲しい。そして、サレンさんが実習を終えて帰国する3年後には、停電のない豊かな国に発展していることを願いたい。
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(※このnoteは、ビル新聞2019年5月13日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.3を加筆転載したものです。)
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