ランニングに限らずスポーツで最も重要な能力
ランニングにとって最も重要な能力って、なんだと思いますか?
足の筋力でしょうか。身体(特に肩周り)の柔軟性でしょうか。心肺能力でしょうか。熱を排出する能力でしょうか。
これらの能力はもちろん重要ですが、もっと大事な能力があるように思っています。
それ何? というお話です。
ランニングで最も重要な能力
それは、「自分の身体がどうなっているかを感じ取る能力」です。
身体の内側を感じる能力というか、専門用語だと「体性感覚」とか「深部感覚」といったものになります。
今現在、自分の身体の中で、どこに力が入っているか、どの関節がまがっていて、手足がどの位置にあるか、などを感じ取る事が、何よりも重要な能力なんです。
我々は走りながら自分の走ってる姿を見る事はできない
当たり前の話ですが、私たちは自分の走っている姿を自分で見る事はできません。なので、ランニングフォームを「目で見て」確認して修正する事ができません。ダンスのようにその場で行う運動なら、鏡に自分の姿を写して確認する事は可能ですが、動き続けるランニングではそれは難しいです。
(トレッドミルでは可能かもしれないですが、横向いて走るとフォームは乱れがちですし。)
なので、深部感覚で自分の身体をモニターして、修正していく必要があるのです。
ランニングに限らず他のスポーツでも重要
そして、この能力は、ランニング以外のスポーツでも重要な能力らしいんです。
武井壮さんが良くやるんですが、目を瞑って手を真横に伸ばす体勢をやってもらうと、多くの人は真横にならず、上か下かにずれてしまうそうです。これを修正する事で、正確に身体を動かせるようになるそうです。
つまり、自分が真横だと思って腕をもっていったところが正確でないと、思ったところに手をもっていけない事になります。そのため、バットとかラケットとかを思う所に正確に持っていけなくなります。バットやラケットを空振りしてしまう原因の一つになっていると思われます。これを修正するトレーニングをする事で、色々なスポーツの能力が向上するそうです。
ここでミソになるのが、身体の内側の感覚で、その感覚が鈍くて正確でないために、真横だと思って伸ばした位置が違っている訳です。
つまり、「目を瞑って手を真横に伸ばした位置を修正する」事は、身体の内側の感覚を育て修正する事になる訳です。
まとめると、「身体の内側の感覚」って、あらゆるスポーツで重要な能力になります。これが鈍かったり狂っていたりすると、いくら筋力があったり身体の柔軟性があったり心肺能力が高くても、スポーツで高いパフォーマンスをするのは難しいと思われます。
良く、運動が苦手な人が「私は運動神経がないから」なんて言います。運動神経なんてものはない(実は専門用語では運動神経とは筋肉に指令を出して動かすための神経で、全ての人に等しく備わっている基本的なもので、それがないとか鈍いとかは重大な病気になります)んですが、仮に当てはめるなら、この体性感覚、深部感覚こそが、それに最も近いのではないかな、と思います。
身体の内側の感覚は軽視されがち
スポーツにおいて、これだけ大事な「身体の内側の感覚」ですが、指導の場ではかなり軽視されがちに思います。
実際に学校の体育とか部活動の指導、あと、習い事のスポーツとかで、教えてもらえる事は皆無ではないかな、と思います。
前に「肩の力を抜く」という話を書きましたが、その時の私は肩の力が入っている事が感じ取れなかった訳です。しかし、力が入っている事を感じ取るためのアドバイスなどは全くもらえなかったです。(というか「力が入っている事を感じる事」が重要という発想すらなかったんです。)
武井壮さんの上述のネタが、彼のパワーコンテンツの一つとなっている事は、こういう事がスポーツの指導において重視されていない事の表れのように思います。
(重視されていて常識レベルまで浸透していたらネタにならないですし。)
身体の内側の感覚は育てる事ができる
実はスポーツの現場において、例外的にこの感覚を重視して指導しているところがあります。それは、ヨガとかピラティスなどのスロースポーツの現場です。
ヨガやピラティスなどでは、身体をゆっくり動かしポーズと取りながら、身体の内側に意識を向け身体がどうなっているかを感じるように指導されます。
こういうスポーツをする事で、身体の内側の感覚を意識するようになる人は多いのではないかと思います。
(あと、鴻上尚史さんの身体についての一連の本(これとかこれとか)で知った人も多いかもしれないですね。私はその一人なんですが。)
そういう場で指導される事は、実は、身体の内側に「意識を向ける」事だけなんです。身体の内側に意識を向けて、身体がどうなっているか、どこに力が入っていて、どの関節が曲がっていて、という事を感じ取ろうとする。それだけだったりします。
でも、意識を向けながらゆっくり身体を動かす、というのを続けていくと、本当に少しづつですが、感じ取れるようになってくるんです。本当に少しづつの進歩で、筋トレやストレッチに比べるとゆっくりの進歩でしかないので、なかなか感じ取れなくて嫌になってしまうかもしれませんが、続けていけば、感じ取れるようになってくるんです。
(ゆっくり動かすのは、速く動かすと、息が切れたり筋肉痛がしたりとか、刺激の大きい感覚に打ち消されて、非常に弱い微妙な感覚である深部感覚が感じなくなっちゃうからだと思われます。なので、息を落ち着かせ、身体のどこにも辛い状況のない楽な状態で意識を向けていく事が大事です。あと、ゆっくり身体を動かす利点は、止まっていて変化がない状態より動かして変化がある方が感じ取りやすい、というのがあるのだと思います。)
という事で、スポーツにとって重要な「身体の内側の感覚」って、育てていく事ができるものです。運動神経悪いなんて言ってる人は、体性感覚、深部感覚で良ければ、後天的にも育っていく事ができるので、是非とも意識を向けてもらえれば、と思います。
(もっと効果的な、深部感覚のトレーニング方法があるなら、是非とも教えてもらいたいです。私が一番、知りたいので。)
紹介した本
引用した過去記事