【第101回箱根駅伝】今年の2区も凄いぞ! 史上空前の高レベル決戦の行方を見逃すな!
箱根駅伝は近年、恐ろしい勢いでレベルが上がっています。特に2区のレベル向上は凄い事になってきていて、前回(第100回)の2区は史上最高レベルの大激戦が予想されました。
実際の結果としては、青学の黒田選手が区間賞、しかもタイムが脅威の66:07! 歴代3位の好タイム、ヴィンセント選手の区間記録からわずか18秒差に迫りました。
それ以外にも6人が66分台で走るという空前の高レベル。その下も区間14位まで67分台という、全体のレベルが爆上がりした結果となりました。
その前回66分台で走ったメンバーのうち5人が今回も残り、恐らく2区を走ると予想されているのです。今回のレベルも高止まりしたまま、それどころか、前回をさらに上回る空前絶後の頂上決戦が見られる可能性はかなり高いと言えそうです。
では、具体的に有力選手をチェックしていきましょう。
前回2区を走った選手達
青学:黒田朝日選手
まず、前回区間賞だった黒田選手。今年も絶好調で、関東インカレの舞台で1万m27分台を達成(記録会ではなく勝負レースで達成するのは価値が違います)、駅伝シーズンでも好調で、出雲も3区区間3位でトップに立つレースをし、全日本4区は区間2位を大きく突き放す区間新を達成します。どんな展開でも力を発揮する能力が高く、今回も間違いなく高レベルの走りをすると思います。区間記録も普通に狙えるでしょう。
國學:平林選手
前回の区間3位:66:26で走った平林選手は、その後、大阪マラソンで優勝! しかもタイムは2:06:18と、初マラソン日本最高かつマラソン学生記録を樹立と大きく飛躍しました。
駅伝シーズンでも國學2冠の原動力として活躍中で、出雲は6区で区間賞、駒澤:篠原選手とのエース対決を制し優勝のゴールテープを切りました。全日本は7区で区間2位でしたが、これまでで一番良いタイムで走っています(前年より1分速いです)。箱根では國學の弱点である5区投入も噂されていますが、2区を走れば当然、区間記録がターゲットになるでしょう。区間新を達成する可能性は十分にあると思います。
早稲田:山口智規選手
前回区間4位:66:31の早稲田:山口選手もその後、クロカン日本選手権で実業団の有力選手を抑えて優勝、トラック1万mでも27分台に突入し、成長を見せています。
駅伝シーズンは、出雲駅伝では変調(1区区間12位)でしたが全日本では復調し、エースクラスが揃い高レベルになった2区を区間5位でまとめています。その後に1万m27分台達成と調子を上げていて、今回の箱根も昨年並みかそれ以上の走りを期待して良さそうです。
創価:ムチーニ選手
ムチーニ選手も66分台(66:43)で走っています。駅伝では常に堅実に走る選手で駅伝で失敗はほぼしない印象です。
ただし、今年の駅伝シーズンは怪我があり少し出遅れています。出雲駅伝を直前の怪我で欠場、全日本駅伝はエース区間を回避して負担の少ない5区を走り区間2位でした。2区66分台の選手としては物足りない結果ですが、先述した通り堅実に走れる選手なので、箱根ではある程度で走るだろうと予想されます。
東洋:梅崎選手
前回区間6位・66:45だった梅崎選手。元々ロードで強い選手で、2年時の全日本7区で51分台で走り東洋のシード獲得に大きく貢献しました。しかし、昨シーズンの駅伝では不調で、全日本8区を区間12位と沈んでしまいます。そんな流れの中、箱根では立て直して好走しました。
今シーズンは、トラックシーズンは好調でしたが、駅伝シーズンでは全日本3区区間7位と物足りない結果です。ただ、去年の流れよりは良い流れなので、今回はもう少し期待しても良いかもしれません。
それ以外の有力選手
それ以外の前回2区出走選手で今年も出走が予想されている選手は次の通りです。
山梨:キビエゴ選手(67:22)
日大:キップケメイ選手(67:31)
中学:吉田礼志選手(67:59)
帝京:山中選手(68:10)
順大:浅井選手(69:03)
(城西:斎藤選手/67:15)
これらの選手達も大幅な上積みが期待できそうです。
日大のキップケメイ選手は今年さらに成長し、今年の箱根予選会では2年連続でトップ。しかも灼熱の環境で立川の難コースを60分台で走りました。あの環境とコースをあのタイムで走れる日本人選手は実業団にもいないと思います。
山学のキピエゴ選手も上記予選会でキップケメイ選手と最後まで争っての2位、61分台でしたがキップケメイ選手とわずか3秒差でした。なのでキップケメイ選手と同等くらいで走れそうです。
帝京の山中選手は今年、大きく成長しています。関東インカレで黒田選手に食い下がり4位入賞(日本人選手では黒田選手に次いで2位)、駅伝シーズンも出雲1区4位、全日本2区4位と結果を残しています。特に全日本2区は超ハイレベルだったので、ここで4位に入ったのは相当価値が高いです。
中学・吉田選手は元々、ハーフマラソンで学生歴代2位の記録を持つ選手。今年の箱根予選会では難しい単独走をものともせず日本人1位で他の日本人選手とは格の違いを見せました。4年生で総決算の走りを見せてくれるでしょう。
浅井選手は灼熱の箱根予選会で日本人2位に入りました。ピンチだったチームを本戦に導くエースの走りだったと思います。本戦でもチームを勢いに乗せる戦いをしてくれるでしょうか。
また、城西・斎藤選手も成長をみせていて、走るとすれば今年は66分台に載せてくると思われます。ただし斉藤選手は5区・山登りの出走が予想されています。(個人的にも5区で見たい選手です。)
やっぱり5区を走るようですね。その場合、下記の通りキムタイ選手が有力です。
2区初出走が予想される有力選手
東国:エティーリ選手
エティーリ選手は5000mと1万mで学生記録を持つ選手。その記録は日本記録より上で、これまでの留学生選手とはレベルが違う物凄い選手です。箱根予選会では2年連続で苦戦(1年目は転倒がありましたが)していますが、恐らく暑さが苦手なのではと思います。その証拠に丸亀ハーフで日本記録を上回るハーフ学生記録を樹立しました。これで、5000m・1万m・ハーフマラソンで日本記録を上回る学生記録を持つ事になりました。さすがに他の選手とは格が違うと言えそうです。
東京国際大学にはビンセント選手という凄い留学生選手がいました。箱根駅伝の2区・3区・4区の3つの区間記録を持っている、とんでもない怪物でした。そのビンセント選手を遥かに上回る記録を持っている選手。普通に走れば区間記録の更新はできるレベルの選手と言えます。
駒澤:篠原選手
篠原選手はハーフマラソンと5000m屋外の学生記録を持つ選手。前回の箱根では1区区間賞でした。
駅伝シーズンでは、出雲駅伝では平林選手との一騎打ちに負けて優勝を譲る結果となりましたが、全日本大学駅伝では単独走で競り合ってた平林選手を上回って区間賞を取りました。「箱根で誰が一番強いか決めよう」とコメントし、気合も十分です。
あと、篠原選手は非常にクレバーな走りをする選手でもあります。状況に合わせた走りをでき、勝負強さもあります。2区の経験やコース適正(登りが得意か)は劣る面がありそうですが、純粋な走力の観点からは黒田選手や平林選手と互角に戦える選手と思われます。
城西:キムタイ選手
城西は去年まで走っていた斉藤選手が5区を走る事が濃厚です。代わりの候補としては、留学生のキムタイ選手になると思います。
キムタイ選手は前回の箱根では3区区間3位でした。元々トラックでは学生トップレベルの実力があったのですが、駅伝では消極的な走りが目立つ選手でした。しかし学年が上がるにつれ、駅伝の走りをどんどん身につけてきて、今ではエース区間で区間賞を当たり前のように取る選手に成長しました。出雲駅伝では黒田選手・山川選手を上回って区間賞を獲得しています。
元々、競り合いには強い選手で、ごぼう抜きもできるタイプに成長しています。恐らく周りに目標があった方が走れるタイプで、そういう意味でも2区は向いているように思います。コース的には2区向きではないかもしれませんが、そこは走力でカバーできるだけの力は持っているでしょう。
専大:マイナ選手
マイナ選手は箱根予選会で個人3位、キップケメイ選手/キピエゴ選手には終盤離されましたが悪条件の中、61分台の好タイムで走り切っています。さすがにこの両選手とは実力差はありそうですが、2区を走る選手の中では普通に実力上位の力はあると思われます。専修大としてはシード権が目標なので、マイナ選手はひとまずは区間中位でまとめてくれれば十分でしょう。その力は十分にあると思われます。
立教:馬場選手
馬場選手は今シーズン、高レベルで安定して走れています。箱根予選会では日本人3位に入り、その2週間後の全日本大学駅伝ではエース区間7区で区間4位、チームをシード権に導きました。この内容が素晴らしかった。11位・シードラインから41秒差で襷を受けると前との差をどんどん詰めて追いつき、4校での争いを引っ張って篩い落として7位まで順位を上げ、しかも9位との差を30秒以上開き、シード権争いに大きなアドバンテージを作りました。正しくエースの走りだったと思います。箱根駅伝でも他校のエースとの争いに勝ってシード権に導く走りが期待されています。
その他の有力選手
ここまで挙げていた以外の大学で、注目は中央大学。エース格の選手は複数居ますが、「この選手」と明確に挙げられる大エースがいません。最も実績があるのは吉居選手で、トラックでは実業団のトップ選手と争って結果を残しています。前回箱根では7区区間賞、MARCH対抗戦では27:44で2位と、本来ならエース区間で戦って欲しい選手です。しかし箱根予選会を免除され満を持して走った全日本7区で他校のエース達との争いに敗れチームをシード圏外に落としてしまいました。史上最高レベルと目される2区の激戦を任すには少し頼りないかもしれません。
もっとも、中央には他にも2区を任せられる強い選手が複数います。白川選手は関東インカレのハーフで3位、箱根予選会でも日本人5位と結果を残しています。本間選手はMARCH対抗戦で自分でレースを動かして3位・27:46で走りました。レースを見た感想はタイム以上の強さを感じました。またルーキーの岡田選手は今シーズン高いレベルの結果の残し続けていて、1つも外していない安定感があります。特に全日本2区の高レベルの争いで6位に入った走りは圧巻でルーキー離れをしています。これらの選手で一番調子の良い選手に任せ、吉居選手らが他の区間で挽回した方が良いかもしれません。
法政の2区も注目です。法政は98回は鎌田選手、99回は内田選手、100回は松永選手が区間10位前後で走っています。今年のエースは複数いて誰が走るかが不明ですが、その選手が区間10位前後で走れるかが連続シードを守れるかの鍵となりそうです。候補としては、武田選手、小泉選手、宮岡選手、大島選手の4人になると思います。
大東大は西川選手になるでしょうか。前回は1区13位、全日本は2区10位でした。今年の全日本2区のレベルを考えると合格点の走りでしたが、基本的には「耐える2区」だと思います。大東にはハーフマラソンでU20記録を更新した伸び盛りの棟方選手もいます。彼の成長に託す手もありそうです。
日体大は、今シーズン好調の3年生トリオ、山﨑・平島・田島3選手の誰かが走る事でしょう。コース適正的には山﨑選手が登り得意で向いていそうですが、山﨑選手は5区投入の噂もあります。
神奈川は宮本選手になると思います。他校のエース達は非常に強いので、その中で宮本選手がどこまでくらいつけるか。神大の前評判は高くありませんが、宮本選手が差をつけられずに走る事ができれば、前評判を覆す事ができるかもしれません。
区間賞争いは?
さて、区間賞争いの予想です。
本命は前回区間賞の黒田選手だと思います。対抗は平林選手。この2名は高い確率で区間賞争いをすると思います。
そこに、圧倒的走力を持つエティーリ選手が力を出し切れるかが注目です。普通に走れば区間記録更新はできる力はあります。さらに予選会で圧倒的走りと見せたキップケメイ選手、キピエゴ選手も実力を発揮すれば当然区間賞候補です。基本的にはこの5名が中心になると思います。
ただ、篠原選手、山口選手、キムタイ選手も遜色ない実力を持っていると思います。ムチーニ選手や梅崎選手も大きな差は開かない筈です。
2区では差がつかない?
ここまで挙げてきたように、2区は恐らく、第100回をさらに上回る高レベルになる事が予想されます。区間記録の更新も、当日の気候条件次第ではありますが、十分に可能性があります。しかし、たとえ区間新で走った選手が居たとしても、他の選手もその近い記録で複数走ってくる可能性は高く、2区では差がつかない可能性があります。
というか、今までにも書いた通り、2区でエースがこの高レベルに対応する走りをする事が、上位争いやシード争いに参加する資格試験(もっと嫌な言い方をすれば足切り試験)のような役割を果たすように思われます。そして、本当の勝負は別の区間で決まる事になると思います。
前の項目の「区間賞争い」で挙げた選手が10人になります。つまり、シード権争いにとっても、これらの選手との差がどれくらいで抑えられるかが鍵となりそうです。
前回の箱根では、帝京・山中選手の68:10がシード争いのボーダーラインだったようです。今年はそのラインがさらに上がりそうで、それをクリアできないとシード争いからも振り落とされる事になるように思われます。