【第101回箱根駅伝】今年の勝負は3、4区! で決まる!? 青学優勝候補筆頭論の根拠か?
箱根展望記事として、2区と5区の記事を書きました。
そこでの結論は「2区や5区は高レベルの選手が揃っていて単なる足切り試験となっている。エースや山の神がいないと勝負に参加もできないが、いてもそれで勝てる訳じゃない」といった残酷なものでした。つまり、2区や5区では差がつかない、という事です。では、どこで差がつくのか?
・・・というのが今回の記事です。
(振り返り)2区と5区の各校の戦力まとめ
まず、前述2つの記事で検討した上位予想各校の2区・5区の戦力状況です。
2区・5区両方に強い選手がいる大学
青学:黒田選手/若林選手
駒澤:篠原選手/山川選手
創価:ムチーニ選手/吉田響選手
早稲田:山口選手/工藤選手
城西:キムタイ選手/斎藤選手
山学:キピエゴ選手/弓削選手
國學院の5区が不明ですが、上位に来そうな大学はおおよそ2区5区に強力な選手がいる事が分かります。エース区間の勝敗がチームの士気に与える影響は大きそうですが、現実にタイム差として見るなら、それほど大きな差があく訳ではないと思います。
第100回は3区・4区で勝負が決まった!
前回大会、第100回は青学の圧勝だったのですが、勝負は3区・4区で決まったと言えます。
まず3区。区間賞の太田選手と区間2位の佐藤圭汰選手のタイムが圧倒的で、区間3位以下を1分以上、4位以下は2分以上離してしまいました。つまり、駒澤以外の大学を、この1区間で大きく離してしまい、勝負を決めてしまったと言います。
駒澤相手にはこの区間終わりで4秒差と、まだ分からなかったのですが、4区で山川選手にアクシデントがあり、ここで1分半ほど差が空いてしまいました。駒澤相手にはこの差が大きかったと言えるでしょう。山川選手のアクシデントがなければ前回はどうなっていたかは分からないと思います。
今回も、2区と5区は重要ですが、ここには各校、強力な選手が起用されそうで、大きな差はつかなそう。なので、今回も3区・4区の重要性が高くなると思われます。
青学は今回も強力な選手が来る!
そして、優勝候補である青学は、今回もこの2区間に強力な選手が来る事が予想されています。
それは、太田選手と鶴川選手です。
太田選手は前回の3区区間賞で、日本人選手として初めて60分を切りました。これは圧倒的に凄い記録で、2区で区間上位に来る選手でなければ、近い記録で走るのは無理でしょう。また太田選手は箱根駅伝では常に周りを驚かせる走りをみせてきました。今回も、3区か4区だと思いますが、どちらの区間でも凄い走りをすることでしょう。
鶴川選手の今年の活躍もすざましいです。関カレ優勝(強い留学生選手をおさえて!)、日本選手権4位入賞、5000m日本人屋外学生記録樹立とトラックシーズンで大活躍でした。駅伝シーズンでもその勢いは止まらず、出雲・全日本ともに区間賞。MARCH対抗戦でもトップを取り、常に外さない凄い走りを見せてきました。
この両選手が2区を走る選手以外に負ける事は考えづらく、「青学が優勝候補筆頭」と予想される根拠となっていると思います。
この記事にあるように青学・原監督は自信満々なんですが、その根拠は3区・4区が予想されるこの両選手の存在でしょう。「2分以上の差をつけて山決戦」と言っていますので、この2人で1分づつ離せるとの算段なのだと思われます。
ただ、果たしてそんなに簡単に行くでしょうか?
國學院大学の3区・4区予想選手
國學院大学は前回、3区:青木選手が区間4位(61:56)、4区:辻原選手が区間4位(61:59)と共に好走しています。青学との差はありましたが、両選手とも今シーズン大きく成長しています。
青木選手は箱根後の学生ハーフで優勝、1万mでも27分台に迫るタイム(28:02)を出しました。駅伝シーズンは絶好調ではなかったですが、その後セブンスヒルズで世界の強い選手相手に健闘と復調してきています。青学の2人は強力ですが、それよりも格上の選手相手に健闘した自信があれば、大きく差は開けられないのではないかと思います。
辻原選手もトラックシーズンに主力の1人と言えるまで成長、駅伝シーズンではエース区間に抜擢され、期待に応える走りをしています。前回はそこまで実績がない中、エース格の選手の故障で4区に抜擢されての上記の好走、4区は地元でプラスアルファーの力が出せるそうです。今シーズンの成長を考えると、今回はさらに良い走りが期待できそうです。
國學院はエースクラスの枚数では青学を上回っていて、復路は青学より確実に強いと予想されます。なので、この両選手が原監督の想定以上に食い下がり、大きな差が開けられなかった場合、山で差を空けられたとしても、出雲や全日本のように國學院が「繋ぎ区間」でどんどん差を詰める展開があるかもしれません。「ピクニックラン」なんて言えない状況になるように思います。
駒澤は佐藤圭汰選手次第
駒澤は前哨戦に居なかった佐藤圭汰選手が復帰する見込みだそうです。日テレの事前番組に映った状況では普通に練習していて、往路を走れる状況にはなりそうとの事です。この佐藤選手の調子次第で駒澤の状況は大きく変わると思われます。
前回、佐藤圭汰選手は青学・太田選手に追い抜かされてしまいました。と言っても、その事が驚きを持って受け止められた訳で、つまり、「普通なら負けない」と思われるくらい強い選手です。また負けたと言っても4秒差で襷を渡していて、区間記録も60分そこそこと物凄いタイムで走っていました。つまり、太田選手と互角近くでは走っていた訳です。佐藤選手はその後、海外のチームで武者修行し、5000m室内日本記録を樹立と成長を見せていて、本調子ならば太田選手と互角程度では走れるはずです。
また、駒澤では伊藤選手も駅伝シーズンで大きく成長しています。特に全日本3区でごぼう抜きした走りは、殻を大きく破る走りだったと思います。太田選手・鶴川選手とどれくらい対抗できるかは分からないですが、競わせてみたいと思う走りではありました。
駒澤はルーキーの桑田選手もエース区間で起用されていて、首脳陣の期待が大きい選手のようです。ただし、前哨戦では出雲・全日本ともに鶴川選手に力の違いを見せつけられる結果に終わっています。もし起用された場合は、どれくらい青学に食い下がれるかが駒澤優勝の鍵となりそうに思います。
駒澤は5区の山川選手が爆発的な走りを見せていて、山では少し詰められそうです。青学・原監督の「5区までに2分離す」との想定を覆す可能性が最も高そうなのは駒澤でしょう。(というか佐藤圭汰選手が万全なら同じくらいで来そうで、仮に負けていても僅差で山での逆転は十分にありそうです。)原さんの発言は、少し駒澤や國學院を軽くみた発言のように思われます。
3強以外の3区・4区はどうか?
3強以外の3区・4区も見ていきましょう。
早稲田大学
早稲田大学は、主将の伊藤選手、長屋選手あたりが両区間を担当しそうに思われます。
伊藤選手は強い選手で、駅伝でも好走してきました。ただし、前回の箱根は欠場し、今シーズンの駅伝でも少し物足りない結果となっています。ただ選手層の厚くない早稲田としては、走ってもらわないと困る選手です。本来の力からすれば、3区でも4区でも区間上位では走れるはずです。(ただ青学の両選手とは少し差があるとは思います。)
長屋選手は駅伝では常に安定して上位で走るロード力の高い選手です。エースクラスの揃った全日本7区は区間5位でまとめています。さすがに太田選手とは1分半ほどの差はありましたが、3強以外の大学相手にはアドバンテージとなる選手だと思います。
早稲田は2区にも5区にも強い選手がいます。3、4区も安定して強い選手を置けそうなので、往路では安定して上位にいると思われます。(また、早稲田は復路の戦力も充実していて、3強以外では一番安定していると思います。事前評価は何故か低いのですが、その理由が私には分かりません。)
中央大学
中央大学は、実は3区4区については非常に楽しみではあります。というのは、学生トップクラスである1万m27分台の選手が3人も居るからです。また、予選会チームトップの白川選手はロードで安定感がありますし、チーム2位だったルーキー岡田選手は今シーズンどのレースでも全く外していません。これらの選手の中で誰かが2区を走り、残りの選手の中から2人が3区、4区になると思われます。
つまり、2区を任せられる選手が5人ほどいて、そのうちの2人が走るので、3区・4区の中では実力は上位のはずです。青学の両選手相手でもどこまでやれるか、非常に楽しみだったりします。(実際、吉居・本間選手はMARCH対抗戦で黒田選手に先着し鶴川選手と互角に争いました。)
中央は、2区と5区がどこまでやれるか不透明で、3強と並んで推すのは憚られる部分はありますが、エース格の枚数と言う観点からすれば3強と互角以上に戦える大学です。また、これらエース格の多くが3年以下で、来年以降にさらに強くなりそうな大学です。今年は間違いなくシードを確保して、来期以降の足がかりにして欲しい所です。
それ以外の大学
それ以外の大学にとって、3区・4区の人選は非常に悩ましいのではないかと思われます。
例えば城西大学は、平林選手がトラックシーズンではエースクラスまで成長したのですが、駅伝シーズンではイマイチ調子が上がっていません。トラックシーズンのような走りを見せてくれれば上位で走れると思いますが、あと1人は少し力が落ちる事になると思います。
例えば創価大学は、全日本で野沢選手が素晴らしい走りを見せました。ただ、創価は駅伝で好走した選手が続かないという課題があります。昨シーズンも出雲で区間賞を取った山森選手が箱根3区19位、全日本アンカーでシード権確保の好走した吉田凌選手が9区15位と苦戦しました。エース以外の安定感のなさが課題だったりします。この2校は2区と5区に強力な選手がいますので、3区4区次第でより上位を狙えますが、失敗すると2区5区の貯金を使ってしまう事になってしまいます。
東洋は前回3区6位の小林選手が健在なのは心強いですが、4区の選定は悩ましいです。2区と5区は前回好走の梅崎選手・緒方選手が健在なので、シード獲得には4区が鍵を握りそうです。(こう比べると東洋は戦力的にはかなり良いですね。)
逆に、山に切り札のいない大学は、この2区間で少しでもアドバンテージを取りたい所です。法政・帝京はロードに実績ある選手が起用できそうで、ここで貯金を作りたい所だと思います。法政は箱根で実績ある武田選手(6区1位)、小泉選手(4区12位)、宮岡選手(1区14位)と急成長した大島選手の中から2区を走る選手が決まり、それ以外の選手が1、3、4区を走る事になりそうです。帝京は柴戸選手(前回3区9位)の復調次第ですが、それ以外にも2年前の予選会チームトップの福田選手や全日本好走した楠岡選手や小林選手がいて、稼ぎ所になると思います。日体大もここに入れたい所で、今年の中心たる3年生トリオの1人と前回2区の山口選手、前回8区2位の分須選手辺りが起用されそうです。日体は2区がどこまで食い下がれるか次第ですが、3区4区は貯金したい区間だと思います。
大東・立教・中学・日大は1人は計算できそうです。大東は上尾ハーフでU20日本記録を樹立した棟方選手が、立教は関東インカレハーフ入賞の稲塚選手が、中学は学生ハーフ2位の近田選手が、日大は前回3区4位の安藤選手がいます。もう1人がどこまでやれるかが重要になりそうです。(立教・中学は山にある程度で走った経験者がいるのでここ次第です。)東国も佐藤選手は駅伝で安定しているのでここに入ると思います。東国はエティーリ選手が激走して、3、4区でシードラインから逃げれるだけ逃げればシード権獲得の可能性が出てきます。
逆に2区・5区がしっかりしている山梨は、3区4区が課題です。予選会で好走したルーキー阿部選手やトラックで好タイムを出した平八重選手や村上選手辺りが起用されるでしょうが、シードラインに離されずにいければ山で逆転は十分にあり得ます。
2区、5区の戦力と見比べながら、3区4区の戦いを見ると、シード争いも楽しめるのではないかと思います。