
【第101回箱根駅伝】勝つと思うな思わば負けよ
箱根駅伝が間近に迫ってきました。私も箱根駅伝の展望記事をコツコツと書いていますが、各種メディアでも出場校に取材した記事などが色々と出てきていて、読むのは楽しいです。
その中で、次の記事がちょっと物議をかもしています。
このピクニックラン宣言というのは、原さんが自信のある時にやりがちな発言なんですが、他校のファンの中には煽られたと感じて憤りを感じる人もいるようです。
ただ、私は個人的には、別のことを思っちゃうんですよね。
というのは、原さんがこういう発言をする時って、大抵、青学は危ないんですよ。
逆に危機感を持っている時の方がびっくりするような実力を発揮する、ここ数年の青学って、そういう傾向があるように思います。
例えば第100回。駒澤が戦力充実、出雲・全日本も制して2年連続3冠に向けて盤石と考えられていた中、事前の想定を遥かに超えた走りを青学がして圧勝。
第99回。前年の箱根で2位を10分以上離して圧勝し、その優勝メンバーが8人残っていたため、駒澤が2冠を取っていても「箱根になると青学でしょう」と予想され、原監督自身も自信を見せていましたが、駒澤に完敗。
98回。前年の箱根で4位に沈み、前哨戦でも勝てず、大丈夫かという空気が流れる中、結果的に圧勝。
97回、前年の箱根に勝ち、ライバルだった東海大の主力がごっそり卒業、本命視される中で往路で想定外が続き完敗。
こんなふうに、最近の青学は隔年傾向があります。
しかも、前年圧勝のメンバーが残って「勝てるでしょ」という雰囲気の時に負け、今年は勝てないかもしれない、という危機感が強い時に抜群の調整力を発揮して勝つ、というのがパターンなんです。
それで、もう一つ、この動画を見てもらいたいんですよね。
今年のクイーンズ駅伝は、事前には積水の一強だと予想されていました。6人が全て日本代表クラスで、まさに「普通にやったら勝てる」という雰囲気だったのです。しかし結果は、想像以上の走りをした日本郵政の闘争力に競り負けてしまいました。しかも、エース格の廣中さん、鈴木さんは怪我で今シーズンは全然走っていなくて、この駅伝が復帰レースでした。2人とも元々強いランナーでしたが、怪我明けの復帰戦でいきなり、日本のトップである新谷・佐藤両選手と互角に戦えるとは想像されていませんでした。しかし、蓋を開けると互角以上に戦いました。他の区間も想像以上に走り、積水の独走を許さず、アンカー勝負に持ち込んで、最後も自力で勝る相手に先にしかけて勝つという、正に天晴れといった勝負でした。
その結果を受けての「反省動画」が上記ですが、積水のコーチである横田コーチは敗因を「普通にやったら勝てるという雰囲気が流れてしまっていた事」と総括しています。
青学の上記の記事は、この積水の敗因と重なる部分が大きいように思います。
というか、ここ数年の青学の隔年傾向に、この要因があるように思われるのです。
また、今回はライバルである國學院や駒澤も「普通にやったら勝てる」と言えるほど弱くはありません。國學院の復路は史上最強でしょう。往路を走るメンバーと全く遜色ないメンバーが復路の7〜9区に並ぶ事になります。この3区間で1区間あたり1分くらい詰められてもおかしくはないです。(その証拠に、青学の復路想定メンバーである白石・田中選手が、國學の復路想定メンバーである野中・山本選手に全日本で約40秒程度ずつ詰められています。)山がある分、青学の戦力が上との計算でしょうが、山を(平林選手以外で)70分台で乗り切る事ができたなら、たちまち戦力均衡はひっくり返ります。
また、駒澤も佐藤圭汰選手が「今シーズン走ってなかった実力ある選手の復帰戦」という日本郵政の廣中・鈴木選手に重なります。しかも、駒澤は出雲・全日本と佐藤圭汰選手抜きて青学に勝っています。駒澤には山の弱点もありません。佐藤圭汰選手が実力通りに走ったなら、こちらも戦力均衡はひっくり返る事となります。
つまり、「普通に走れば独走」というのは、あまりに相手を見ていない発言のように思えます。ライバルの強さを肌で感じた全日本直後は「箱根は最後まで絡れる面白い勝負となる」と緊張感のある事を言っていましたが、そこから時間が経ち、自分たちが充実した練習を詰めていた事で、緊張感が緩んでいるのかもしれません。
それが結果としてどういう傾向に出るか?
(また、クイーンズ駅伝だけでなく、大学女子駅伝も本命が足元を掬われてるんですよね。今シーズンはそういうシーズンのような感じがします。)